家族社会学研究
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家事育児の分担に見る夫と妻の権力経験――育児期の共働き家庭の事例を用いて――
孫 詩彧
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2019 年 31 巻 2 号 p. 109-122

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抄録

本稿は未就学の第一子を持つ共働き家庭を対象に,その家事育児の分担と調整がなされるプロセスにおける夫と妻の権力経験を検討した.各家庭の役割分担は,子どもが生まれることで平等に向けて進む傾向が確認される一方,平等にたどり着くことが難しい.そこに潜む権力を捉えるため,本稿はKomter(1989)による「三つの権力(顕在的・潜在的・不可視的)」の枠組で分析した.その結果,顕在的権力が次第に潜在的・不可視的へと移行する傾向を確認し,その移行過程に加担する夫妻以外からの権力の影響が存在していることが明らかになった.本稿において妻が家事育児の主な担い手である状態を維持する権力作用を,不可視的権力に着目して考察したところ,平等な役割分担を実現するには夫妻の協力だけではなく,過去の権力経験や夫妻以外の第三者による影響も含めて議論する必要があると分かった.

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© 2019 日本家族社会学会
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