2020 年 32 巻 2 号 p. 213-226
台湾では,出生率の急速な低下により,21世紀に入ってから,少子化問題への世論の関心はますます高まっている.台湾政府も,多くの研究者も,その背景要因の解明と対策に取り組んできたが,少子化の深刻な状況は依然として変わっていない.本稿では,教育制度・政策の側面から,台湾における少子化の進行状況とその背景要因を分析し,教育と少子化が相互に与える影響を明らかにすることによって,少子化対策と課題を検討することを目的とする.分析の結果,台湾の少子化の主な特徴は,女性の高学歴化という要因にあり,それは高等教育の拡大政策と分岐型学校体系に大きく起因していたと言える.台湾の現状をふまえると,政府の少子化対策は,一時的な現金給付策よりも,家庭と仕事の両立ができる職場環境の整備と充実など,長期的に女性の社会進出を支援することに重点的に取り組む必要がある.