2022 年 34 巻 1 号 p. 58-65
本論文は,小規模家族経営における事業主の妻がどのような働きかたをしてきたのか,行政調査や学術研究からなるその蓄積を確認し,その姿を歴史的に振り返る.これまで蓄積されてきた女性家族従業者に関する調査研究は,共通して,彼女たちの労働時間の長さや低報酬性を確認し,仕事と家事・育児との調整のしがたさを明らかにしてきた.生活領域と労働・経営の区切りはつきづらく,そこでは労働・経営が優先された.職住分離も影響を与えたと言いがたかった.また,彼女たちの労働をめぐる制度的側面を見れば,家族労働は労働者としての保護を受けず,税制上,無償が原則とされてきた.このような構造的特徴の解明と成り立ちの精査は,現代の社会理解における重要な課題である.