家族社会学研究
Online ISSN : 1883-9290
Print ISSN : 0916-328X
ISSN-L : 0916-328X
夫婦形成タイミングに対する定位家族構造の効果とそのコーホート間変動
NSFHデータにみる米国家族変動の一側面
加藤 彰彦
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 10 巻 10-2 号 p. 111-127

詳細
抄録

定位家族構造と夫婦形成タイミングとの関連は、これまで次の2つの仮説によって説明されてきた。社会化仮説は、幼児期において父親不在の家族で生活した者は、伝統的な性役割や規範の内面化が不十分なために結婚のタイミングを遅らせると主張する。ストレス仮説は、ひとり親家族への移行や再婚家族への移行が、子どもや青年を定位家族から離脱させて、未熟な成人役割へと駆りたてると主張する。本研究は、全米家族世帯調査データとコックス回帰モデルを用いて、これらの仮説を検討した。分析結果は、全体として2つの仮説を支持した。しかしながら、定位家族構造変数と出生コーホートとの間に交互作用があるために、これらの仮説の妥当性はコーホートによって異なる。社会化仮説は、ベビープーム期のコーホートの結婚タイミングとベビーバスト期のコーホートの同棲タイミングを説明する。一方、ストレス仮説は、ベビーブーム期のコーホートの結婚タイミングと、ベビーブームおよびベビーバスト期のコーホートの同棲タイミングを説明する。こうした交互作用の実質的な源泉は、コーホート規模と離婚率というマクロ変数と、定位家族構造変数との交互作用にあることが示された。

著者関連情報
© 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top