家族社会学研究
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企業社会の変化と家族
木本 喜美子
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2000 年 12 巻 1 号 p. 27-40

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抄録

本稿は、戦後日本の家族と企業社会との関係を「家族賃金」という概念から分析することにある。日本において性別分業を組み込んだ〈近代家族〉モデルは、終身雇用、年功賃金、企業福祉を柱とする日本的経営のもとで、強固な基盤が据えられた。とくに「生活給」賃金思想に支えられた大企業の労働者家族は、物質的生活基盤とひきかえに、夫を競争的な「企業内人生」へと駆り立てていった。「減量経営」を経た1970年代以降こうした動向は明確化し、家族と企業社会とは強い絆で結ばれるところとなった。だが同時に1970年代以降のスクラップ・アンド・ビルドの進展のもとで地域間移動をともなう配置転換、出向等が多発するなかで、家族の側から「家族帯同」を拒否する傾向が強く現れ、1980年代以降単身赴任が社会現象として注目されるにいたった。物質優先主義が、「家族成員相互の情緒的関係」を欠いた〈近代家族〉の中心軸になっており、この傾向は1990年代にも基本的にひきつがれている。

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