2001 年 13 巻 2 号 p. 103-112
本研究では, 母親の就業が子どもに与える影響に関する諸理論と先行研究を概観した上で, 母親の就業が子どもの独立心にどのような影響を持つのかを実証的に明らかにする。本研究では, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴の効果も検証し, また社会階層や母子関係を統制した上で母親の就業の効果を検証する。分析対象は, 東京都郊外地区から多段無作為抽出法でとられた長子の中学生とその母親451組である。分析の結果, 母親の就業状態によって子どもの独立心に違いはみられなかった。しかし, 母親の職業経歴によって子どもの独立心に有意な差異が生じていた。結果は, 就業継続する母親の子どもの独立心が他の群に比べ有意に高いことが示された。ここから, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴を捉えることの重要性, および母親の就業継続が必ずしも子どもに対して否定的な影響を及ぼさない-むしろポジティブな影響さえ及ぼしうる-ことが明らかになった。