家族社会学研究
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雇用流動化のもとでの家族と企業社会の関係
企業の人事戦略を中心に
木本 喜美子
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2006 年 17 巻 2 号 p. 17-28

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抄録

本稿の目的は, 雇用流動化が家族-企業間関係にいかなる変容をもたらしているのかを検討することにある。バブル経済の崩壊後の雇用流動化が日本的慣行を揺るがしているとすれば, この日本的雇用慣行を媒介としてとり結ばれた家族と企業社会の安定的で密な関係に変化を生じさせていることになる。だが統計データを解読すると, 雇用流動化の担い手は若年層, 女性層, 男性高齢層である。男性中年期・壮年期層に影響をもたらすとみなされてきた「成果主義」の導入も, 喧伝されたほどの変化をもたらしておらず, この層の雇用の安定性は保たれている。また個別企業の人事戦略をみても主として女性の正社員数が絞りこまれ, 若年層と女性の非正規化, そして非正規内部の多層化が推進されてきている。以上から見るならば, 2005年時点でも家族-企業間関係は大きく揺らいではおらず, 中核層と周辺層の隔離と後者の分断化が進行しているといわなければならない。

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