2006 年 36 巻 1 号 p. 1-8
本研究では, 抑うつ的な音楽の聴取に際し, 抑うつ傾向の高低と聴取音楽に対する好みの違いが気分変化にどのような影響を与えるのか検討した。まず, 被験者の抑うつ傾向を測定するために, ベック抑うつ性尺度を用いて測定時の気分状態について記入させた。次に抑うつ的音楽を被験者に聴取させ, 音楽聴取後の気分と聴取音楽に対する好みについて記入させた。抑うつ傾向 (高/低) ×好み (好き/嫌い) の2要因分散分析を行った結果, 活動的快の気分で抑うつ高群と低群の間に有意差がみられた。また, 敵意の気分で交互作用がみられ, 抑うつ低群において好みの違いに有意差がみられた。このことから, 抑うつ傾向高群では, 聴取音楽に対する好みに関わらず, 抑うつ的音楽を聴取すると活動的快の気分が低減すること, 一方, 抑うつ傾向低群では, 聴取音楽が好きな場合は敵意の気分が低減し, 嫌いな場合は敵意の気分が増大することが示された。