音楽教育学
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研究論文
宮城県北部における謡の伝承の実態
―個の追求と学び合いによる「自己変容」の過程の分析から―
田村 にしき
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2012 年 42 巻 2 号 p. 1-12

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抄録

 本稿の目的は, 宮城県北部の謡の伝承における学習者の個の追求と学び合いによる「自己変容」の過程を明らかにすることである。そのために「登米謡曲保存会」と「新田ノ目春藤流保存会鉢の木会」の保存会会員及び元会員を対象に, アンケート調査, 聞き取り調査, 参与観察を行い, 結果を分析, 考察した。

 その結果, 個のレベルでは, 第1に「形」の模倣の段階で師匠や先輩のうたい方に自己の気付きを重ねる, 第2に, 「形」から「型」への移行段階で, 謡を主体的にとらえるようになる, 第3に「型」の習熟段階で, 個性への関心が生まれることが明らかになった。集団のレベルでは, 第1に, 文化的な営みへの参入の段階であこがれと目標を持つ, 第2に, 地域文化の担い手意識が生まれる段階で, 他者とのかかわりの中で自分のうたい方をとらえ直す, 第3に, 地域文化の担い手としての意識が高まる段階で, 継承者として自分のうたい方を見直すことが明らかになった。

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© 2012 日本音楽教育学会
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