抄録
口腔扁平苔癬(以下oral lichen planus: OLP)は,Tリンパ球由来の慢性炎症性病変と考えられている。OLP病変部における基底膜の破壊や組織の再構築をする際に,マトリックスメタロプロテアーゼ(以下MMPs),ウロキナーゼタイププラスミノーゲンアクチベーター(以下uPA),uPAレセプター(以下uPAR)が中心的役割を果している可能性がある。われわれは,OLPにおけるuPA,uPARとMMPs(MMP-2,MMP-3,MMP-9)発現細胞の局在を免疫組織学的に比較検討を行った。uPAの発現は有棘細胞層から基底細胞層にかけて,uPARはマクロファージ,有棘細胞層から基底細胞層にかけての細胞膜上の一部に発現が認められた。MMP-2,MMP-3の発現部位はuPAとほぼ一致していた。MMP-9の発現は主に炎症変化の強い基底層の変性が認められる部位にみられた。これらの結果より,OLPにおける上皮組織の病態形成にはuPA,uPAR,MMPsが関与することが示唆された。