抄録
口腔白板症30例の喫煙習慣調査を行うとともに, それらの生検あるいは切除標本を用いて免疫組織化学的にG1サイクリン (サイクリンDおよびE) の発現を検索し, 喫煙と上皮性異形成およびG1サイクリン発現との関係を検討した。その結果, 喫煙と上皮性異形成発現との関連が示唆されるとともに, 上皮性異形成が高度になると, 軽度, 中等度異形成および異形成のみられない症例に比較して, G1サイクリンの発現が有意に高くなっていた。また, 喫煙指数 (Brinkman Index) が高い程, G1サイクリンの発現が高かった。以上の結果から, 喫煙は上皮性異形成を促し, G1サイクリンの発現を増強することによって, 細胞増殖能を亢進させ, 白板症の癌化に関与することが示唆された。