抄録
口腔粘膜病変が発症しやすい環境の背景を検討することを目的とし, 中国吉林省北部の3地域 (農村, 工業都市, 都市近郊農村) における住民の口腔粘膜病変の疫学的調査を行った。調査はWHOによる口腔粘膜診査方法に準じて行った。結果は, 3地域とも喫煙習慣は紙巻きタバコであったが, 白板症の発現率は少なかった。食習慣は3地域とも異なり, 工業都市で肉を食する習慣が多かった。口腔環境として処置歯を有する者は工業都市において多かった。口腔粘膜病変の発現頻度は都市近郊農村が最も高く, それぞれの口腔粘膜病変の発現頻度は3地域で異なっていた。年齢, 性別と口腔粘膜病変の発現との関連性は3地域とも明確ではなかった。以上の結果より, 社会環境, 生活環境が口腔粘膜病変を発症する重要な要因であり, 口腔環境も発症に関与することが示唆され, 地域社会単位で行う口腔粘膜病変の疫学調査は, その発症病因を検索するうえで有用であると考えられた。