2017 年 13 巻 1 号 p. 24-32
要旨:World Health Organization(以下WHO)が,患者安全を高めるトレーニングのツールとして紹介し(WHO,2009a)訓練を行うことで,より患者安全に貢献できるといわれている認知的・社会的スキルである非医療技術:ノンテクニカルスキル(以下NTS)の重要性が,日本の医療安全において認識されてきた。医療安全研修としてNTSを着目する医療組織が数多く存在するようになり,NTSは安全文化の醸成手段の一つとして重要な役割を担っている。この重要性が認識されている中,イギリスで開発された各NTS評価システムを日本で実践するには,文化の違い以外に評価者の訓練の問題など幾つかの困難さが潜んでいると指摘されている。しかし,各文化や医療組織に適応した実践可能な手段もあるのではないかと考えた。手術室看護師に相当されると考えられるScrub Practitioners’ List of Intraoperative Non-Technical Skills(以下SPLINTS)やAnaesthetic Non-Technical Skills for Anaesthetic Practitioners(以下ANTS-AP)の評価システムでは,自己評価としての活用も推奨していることが明確に示されている。本論は,手術チーム医療の一員として多職種と共に安全に協働するため,各手術室看護師が自律的に保有しているNTSを認識し補うべきスキルを向上できることで,安全文化を促進する手段への提案について考案する。