2022 年 18 巻 1 号 p. 168-176
要旨:本研究の目的は,高度急性期病院に勤務する看護師の異文化間看護能力の特徴を明らかにし,さらに周術期において看護師が外国人患者に感じる困難感を明らかにすることである。A病院の看護師498名を対象に無記名自記式質問紙(異文化間看護能力,外国人患者への周術期看護における困難感)で調査した。分析方法は対象者全体の異文化間看護能力尺度の合計得点および5つの下位尺度の平均点を算出し,下位尺度得点を単純比較した。その後異文化間看護能力尺度の下位尺度の得点を対象者の基本属性ごとに,Wilcoxon順位和検定またはKruskal-Wallis検定で比較した。外国人患者への周術期看護における困難感は,回答を単純集計し,「その他」の自由記載された内容をコード化し,内容の類似性に沿い分類した。その結果,対象者の異文化間看護能力は【自文化の認識】が高く,【異文化間看護の文化一般の知識】および【異文化間看護の文化特定の知識】が低かった。基本属性ごとの比較では,看護師経験年数が平均以上の群の方が【自文化の認識】【異文化間看護の文化一般の知識】【異文化間看護の文化特定の知識】【異文化間看護の技能】の4つの下位尺度で有意に高かった。外国人患者への周術期看護の困難感では[疼痛管理]や[退院指導]が多く回答され,周術期看護において日本人患者と外国人患者とでは困難を感じている内容に大きな差はないが,言語的障壁や文化的障壁に対して困難を感じていることが明らかになった。