日本手術看護学会誌
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Print ISSN : 1880-4780
研究報告
手術患者におけるポリウレタンフィルムドレッシング材使用時の術後皮膚障害・褥瘡発生要因の検討
上村 貴弘弓削 亜矢香原 健太朗
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2024 年 19 巻 2 号 p. 229-234

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抄録

要旨:[背景・目的]褥瘡予防において,ポリウレタンフィルムドレッシング材(以下:PUF材)の貼付は推奨されている。本研究では,術前にPUF材を貼付した症例の術後皮膚障害が生じた要因を明らかにすることを目的とした。

[方法]2019年4月1日~2020年3月31日にA病院手術室で全身麻酔予定手術を受けた全診療科884例の後向き観察研究とした。統計解析は術後皮膚障害陽性群と陰性群を有意水準5%で群間比較した。ROC解析により,PUF材を使用後も術後皮膚障害に至った要因について,カットオフ値を算出した。

[結果・考察]陽性群94例(10.6%),陰性群790例(89.4%)の884例を解析した。陽性群の年齢は72(63~80)歳,BMIは22.4(18.9~25.2),Albは3.9(3.4~4.2)g/dl,Hbは11.9(10.3~13.9)g/dl,陰性群の年齢は67(56~74)歳,BMIは22.9(20.5~25.4),Albは4.1(3.7~4.3)g/dl,Hbは12.9(11.6~14)g/dlであった。陰性群に比べ,陽性群の年齢(p<.01)は有意に高く,BMI(p<.05),Alb(p<.01),Hb(p<.01)が有意に低かった。ROC解析の結果,年齢は72歳以上,BMIは19.3未満,Albは4.0g/dl未満,Hbは11.9g/dl未満であったことから,このカットオフ値に従ってPUF材と多層構造のシリコーンフォームドレッシング材(以下:SFD材)を選択することにより,術後皮膚障害発生減少につながる可能性があると推察された。

[結論]陽性群は,陰性群に比べ,年齢は有意に高く,BMI,Alb,Hbは有意に低かった。SFD材使用の基準は,年齢は72歳以上,BMIは19.3未満,Albは4.0g/dl未満,Hbは11.9g/dl未満と定めることが適切である。

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