2026 年 21 巻 2 号 p. 66-73
要旨:目的は,A病院において自家麻酔下でジャックナイフ体位にて施行された,肥満患者の脊髄くも膜下麻酔中に心停止が発生した事例における,手術室看護師の対応を明らかにすることである。方法は,当該事例に関与した看護師6名に半構造化面接を実施し,質的記述研究(定性的内容分析)を行った。結果は【執刀医および看護師間の情報共有と対策】【患者の訴えや症状への対策】【安全とリソースの確保および救命処置】【ICU搬入準備とROSC後の原因把握】の4カテゴリーに分類された。術前には,脱水や薬剤性反応への備え,局所麻酔中毒の徴候への注意がなされ,看護師は執刀医と頻繁に情報共有を行っていた。体位作成時には,疼痛や腹部圧迫への対応,興奮状態による体動への制止,転落防止が図られたが,薬剤投与の遅れやベッド搬入の遅延など,リソース配置の課題も明らかとなった。心停止後は,迅速な救命処置と役割分担がなされ,心拍再開後には麻酔域や意識レベルの確認,ICUへの申し送り準備,心停止原因の共有が行われた。肥満患者や特殊体位,自家麻酔におけるリスク管理の重要性が示され,術前の手術室見学の基準策定,薬剤配置の見直し,院内エマージェンシー対応体制の強化,救命処置のシミュレーション訓練の必要性が課題として浮き彫りとなった。これらの課題に対応することで,自家麻酔下における区域麻酔時の安全対策の強化に寄与していくことが重要である。