日本口腔顔面痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-9333
Print ISSN : 1883-308X
ISSN-L : 1883-308X
症例報告
顎跛行および開口障害を伴った巨細胞性動脈炎の一例
池田 浩子今井 昇井川 雅子岩井 謙道端 彩高森 康次
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 10 巻 1 号 p. 55-63

詳細
抄録

症例の概要:72歳男性.咀嚼時の両側咬筋の疲労感・開口障害による咀嚼困難を主訴に口腔外科を受診した.顎跛行,開口障害,複視,めまい,体重減少,間歇的な頭皮の痛みなどの症状が認められたため,精査目的に専門施設(神経内科)を紹介した.頸動脈エコー,側頭動脈生検の結果,巨細胞性動脈炎と診断された.ステロイド治療が施行され,速やかに症状の改善が認められた.
考察:巨細胞性動脈炎は頭痛以外にも多彩な症状を呈する.顎顔面領域にも顎跛行や開口障害など様々な症状が発現するため歯科を受診する可能性も高いと考えられる.巨細胞性動脈炎が呈する症状のうち,顎跛行,複視,側頭動脈の拡大・圧痛・拍動消失は陽性尤度比の高い症状とされており,そのような症状が認められた場合は速やかに専門施設へ紹介することが重要である.そのためには歯科医師も巨細胞性動脈炎の病態を正確に理解しておく必要性があると考えた.
結論:顎跛行および開口障害を主訴に口腔外科を受診し複視,めまい,体重減少,間歇的な頭皮の痛みおよびリウマチ性多発筋痛症の合併も考慮された巨細胞性動脈炎の症例を経験した.

著者関連情報
© 2017 日本口腔顔面痛学会
前の記事 次の記事
feedback
Top