日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
口腔顔面痛患者にみられる怒りや悲しみを治療対象とする面接法
田代 雅文
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2025 年 17 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
口腔顔面痛患者が歯科治療後にペインクリニックに紹介されたとき,何を訴え,どのような様相を呈しているのかについて,2つの事例を検討した.身体症状を訴えて身体科を受診すると,まずは身体から取り扱われるのが一般的である.痛みは感覚体験+不快情動体験であるから,身体症状でもあり情動でもある.情動に注目することで,診断や治療が進むことがある.高齢者歯科治療において,審美目的のインプラント埋入術後に痛みや痺れを生じた場合,抜去するという対応は,患者にとっては嫌なこと(痛み)が減るが,良いこともなくなる(美を失う)という葛藤状況になる.審美目的以外でも神経損傷をきたした場合,係争に発展し,怒りが蓄積していることがある.このような状況で痛みの治療をしても効果が乏しく,更なる医科治療を繰り返すことで二次的傷害が加わる結果となりやすい.このような場合,痛み感覚を治療対象とするのではなく,情動を先に取り扱うことが有用である.怒りや悲しみなどの不快情動を対象とする面接を模擬症例の形で示した.
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© 2025 日本口腔顔面痛学会
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