日本口腔顔面痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-9333
Print ISSN : 1883-308X
ISSN-L : 1883-308X
症例報告
口腔内にトリガーゾーンを有し眼痛を訴えた三叉神経痛の一症例
安藤 祐子山﨑 陽子新美 知子冨澤 大佑井村 紘子細田 明利川島 正人嶋田 昌彦
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 5 巻 1 号 p. 37-41

詳細
抄録
症例の概要:39歳,男性.上顎右側小臼歯部の歯磨き時に右眼周囲に電撃痛が出現するようになった.近医歯科で上顎右側第二小臼歯部修復物を除去し根管開放したところ,痛みは軽減した.翌月,同部位の痛みが再発し,消炎鎮痛薬を服用したが効果はなく,痛みの強度,頻度が次第に増加したため当科を訪れた.症状は右眼周囲の数秒間持続する電撃痛で,食事,会話などで誘発された.初診時に三叉神経痛を疑い,その疼痛緩和と鑑別のためカルバマゼピン100mg/日を処方したところ痛みは軽減した.また,MRI所見で左右側三叉神経根部において脈管による圧迫が認められた.その後,カルバマゼピンを300mg/日まで漸増し,痛みはコントロール可能になった.その後,カルバマゼピン200mg/日で痛みはコントロールできていたが,痛みが増強したため300mg/日に増量し,さらに五苓散7.5g/日を追加し痛みは軽減した.現在は同処方で痛みはコントロールされている.
考察:眼痛を訴える場合,その原因には三叉神経痛のほかに眼科疾患や頭痛の可能性も考えられる.本症例ではカルバマゼピンが有効であり,MRI所見より三叉神経痛である可能性が高いと考えられる.
結論:三叉神経痛第1枝領域の症例は稀で,その症状の発現部位は歯科領域外であり,歯科を受診する症例は少ない.しかし,本症例のように口腔内にトリガーゾーンを有する場合もあり,慎重に鑑別を行う必要がある.
著者関連情報
© 2012 日本口腔顔面痛学会
前の記事
feedback
Top