日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
咀嚼筋の筋・筋膜痛に関連して生じたと考えられる歯肉の掻痒感を訴えた患者の一症例
三木 春奈水口 一前川 賢治窪木 拓男
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2016 年 9 巻 1 号 p. 105-111

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抄録

症例の概要:患者は36歳女性.本院受診の9か月前に上顎左側第二大臼歯歯肉の違和感と左側頭頚部から肩部に及ぶ掻痒感を自覚し,近歯科医院を受診した.上顎左側第二大臼歯の抜髄処置を受けるも歯肉の違和感は改善しなかったため,本院を紹介受診した.X線ならびにCT検査にて上顎左側大臼歯根尖部に透過像を認めたため,根尖性歯周炎の診断のもと,感染根管治療が実施された.しかし,上顎左側第二大臼歯の疼痛と上顎左側臼歯部の歯頚部歯肉に持続的な掻痒感が残存した.掻痒感は,肩凝りと伴に増悪し,2~3日持続した.また,左側咬筋,側頭筋,胸鎖乳突筋に圧痛を認め,咬筋,側頭筋の圧痛部位を持続圧迫することで掻痒感が再現された.
以上より,本症例の掻痒感は,頭頚部の筋・筋膜痛の関連症状である可能性が考えられた.そのため,筋・筋膜痛の軽減を目的に,マッサージ,温罨法などの理学療法を指導した.さらに,就寝時ブラキシズムの自覚があったことから,スタビライゼーションスプリントの装着を指示した.筋・筋膜痛の軽減に伴い,上顎左側臼歯部周囲歯肉の掻痒感も軽減した.
考察:筋・筋膜痛のトリガーポイントからの関連痛として知られる筋・筋膜性歯痛に加え,遠隔部位に生じる掻痒感も,筋・筋膜痛の関連症状として出現する可能性が考えられた.
結論:筋・筋膜痛の関連症状として出現したと考えられる歯肉の掻痒感を訴える患者を経験した.

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© 2016 日本口腔顔面痛学会
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