2023 年 68 巻 2 号 p. 55-62
ナニワズDaphne jezoensis Maxim.の花粉形態を走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡で初めて観察した。花粉外壁の模様は「クロトン様パターン」を持つことで特徴づけられていた。クロトン様の花粉外壁模様と同様にポレンキットの存在はナニワズの虫媒受粉という特徴と連関していると思われる。クロトン様の花粉外壁模様における外表層上サブユニットの密度と形は、ジンチョウゲ属 Daphne の種間関係を明らかにする有用な形質である。従来の走査型電子顕微鏡の花粉形態研究と比較したところ、本研究で観察されたナニワズの花粉外壁模様はコショウノキD. kiusiana Miq.とオニシバリD. pseudomezereum A.Gray var. pseudomezereumに類似しており、ジンチョウゲD. odora Thunb.とはやや異なり、チョウセンナニワズD. pseudomezereum var. koreana (Nakai) Hamayaとは明瞭に異なっていた。花粉形態形質はチョウセンナニワズD. koreana Nakaiを広義のオニシバリD. pseudomezereumの一変種にする措置を支持せず、むしろ広義の種D. pseudomezereumの範囲付けに対する疑問を呈することになった。