軽度精神薄弱児における運動能力遅滞の一般的傾向及びその教育可能性の方向を明らかにすることを目的として, 19名の軽度精神薄弱児(EMR群),およびそれと平均暦年令のほぼ等しい35名の正常児(EN群), EMR 群と平均知能年令のほぼ等しい35名の正常児(YN群)の三群を対象として, WISC, 身長, 体重の測定および文部省スポーツテストの運動能力テストを実施し, その結果を吟味した. 即ち, 運動能力においてはYN群よりEMR群を経てEN群に至る一般的発達勾配を示したが, 一方EMR群は斜め懸垂と連続逆上りにおいて特に劣る傾向が見られた. これよりEMR児は運動能力全般において遅滞が見られる中で, 特にある種の運動経験, 連続動作への集中力, 調整力などの要因において特に劣っていると結論された. それらの諸点に留意してEMR児の体育指導に当ることによって, 多少の教育効果が期待できると推論される.