体育学研究
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日本人幼少年の身体部分係数
横井 孝志渋川 侃二阿江 通良
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1986 年 31 巻 1 号 p. 53-66

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抄録

本研究の目的は,幼少年の身体部分係数(BSP)における年齢,性,体型の影響を明らかにし, 日本人幼少年のBSPを実用化することであった。3歳から15歳までの男女255名のBSPを,身体を各部分の密度が均一な14個の剛体系とみなした数学モデルによる方法を用いて算出した。写真計測用フレームの中に立たせた被験者を,前方,側方から2台の35mmスチールカメラを用いて同時に撮影した。得られたフィルムを分析し,身体各部の質量,重心位置,慣性半径を算出した。結果は次のとおりであった。1.加齢に伴い,質量比(身体質量に対する比)では,頭部が減少,大腿,下腿が増加し,比重心位置(各部分長に対する中枢端側からの比)では,頭部が増加,上腕,大腿,下腿が減少した。また,胴部,大腿,下腿の長軸に関する比慣性半径(各部分長に対する比)は加齢に伴い減少した。9歳以上の各年齢において,女子の大腿質量比は男子に比べて大きく,逆に,大腿の比重心位置は男子でより大きかった。更にカウプ指数にもとづいて年齢別,男女別に分類した肥満,標準,痩身の3種の体型間では,各年齢の男女とも胴部,上腕,大腿の長軸に関する比慣性半径に違いがみられた。2.幼少年のBSPにみられた年齢,性,体型による相違にもとづき,被験者を18群に分類し,各群におけるBSPの平均値と標準偏差を求めた。3. 5歳から15歳の男女29名に重心測定板上でとらせた5種の姿勢の身体重心位置を, 2において分類されたBSPを用いて推定した結果,推定値の標準誤差は身長の3%以内であった.またこれらの誤差は,大部分の姿勢において,成人のBSPを用いて推定した場合より小さかった。

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© 1986 一般社団法人 日本体育学会
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