抄録
胞巣型横紋筋肉腫での特異的な染色体異常としてt (2;13) (q35;q14) やt (1;13) (p36;q14) の転座があることはよく知られている.最近になって, それらの転座によってPAX3-FKHRやPAX7-FKHRキメラ遺伝子産物が生じることが示された.われわれは, RT-PCR法を用いて横紋筋肉腫でのPAX3-FKHRやPAX7-FKHRキメラ遺伝子産物の発現を検討した.PAX3-FKHRは7種類のヒト横紋筋肉腫細胞株のうち2株 (KP-RMS-DHとSCMC-RM2) で認められ, また2例の胞巣型横紋筋肉腫の腫瘍でも検出された.一方, PAX7-FKHRは今回の検討したサンプルでは検出されなかった.RT-PCR法によるPAX3-FKHRの検出感度は非常に高く, HL60とKP-RMS-DHの混合細胞では10-7オーダー (HL60/KP-RMS-DH=1/10-7) でも検出可能であった.このようにRT-PCR法によるキメラ産物の検討は, 胞巣型横紋筋肉腫の迅速診断に有用な手段であり, 骨髄血や幹細胞移植血中の腫瘍細胞の同定にも役立つ方法である.