抄録
Fanconi貧血にmyelodysplastic syndrome (MDS) を合併した5歳女児に対し, HLAの一致した13歳の兄をdonorとして骨髄移植を施行した.前処置はlow-dose CY+TBIでGVHD予防にはCsA+short term MTX+prednisoloneを用いた.移植後13日目に生着を確認したが, GVHDと難治性膵炎を合併し移植後98日目に多臓器不全で死亡した.CsA抵抗性のGVHDに対して, タクロリムス (FK506) は一定の効果がみられたが, 本症例の重症GVHDを完全にコントロールすることはできなかった.一方, 難治性膵炎の原因同定は困難で薬剤性も考慮されたが, 剖検所見で膵管周囲の線維化およびリンパ球, 好中球浸潤を認めたことよりGVHD様の変化が膵に起こった可能性も否定できなかった.Fanconi貧血の骨髄移植では予期せぬ合併症やGVHDの重症化の可能性があり, 前処置方法やGVHD予防および治療法の選択に細心の注意を払う必要があると思われた.