抄録
1歳8カ月のDown症候群男児に発症した急性巨核芽球性白血病に対して, cytarabine (Ara-C), daunorubicin hydrochloride (DNR), etopdside (VP-16) による化学療法を計8クール行い, 血液学的寛解を得た.総投与量はAra-C 5,600mg/m2, DNR 480mg/m2, VP-16 3,600mg/m2であった.治療終了から15カ月後までejection fraction (EF) に異常はみられなかったが, 急性扁桃炎に罹患した後から心機能が低下した.利尿薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬, カテコラミンなどが投与されたが, 患児はDNRによると思われる心筋障害で死亡した.致命的な心筋障害の出現を避けるためには, DNRの累積投与量を350mg/m2以下にとどめるべきであろうと考えられた.