抄録
思春期の白血病についてわが国の実態調査の解析結果と海外の成績を比較検討し, とくに急性リンパ性白血病 (ALL) の病態と治療戦略について考察した.思春期ではALLの割合が減少するが, 思春期後半に急性骨髄性白血病とほぼ同じ割合になる.また, 成人型慢性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の割合の増加が認められる.思春期ALLの特徴は, 生物学的特徴によく表れている.小児期に比べて予後良好な高2倍体 (染色体数>50) の例やTEL-AMLI陽性例が減少し, 予後不良なフィラデルフィア染色体陽性例や低2倍体が増加する.また, FAB分類ではL2が, 免疫学的分類ではTcell ALLの割合が増加する.欧米では, 治療の強化で治療成績が向上したことでTcell ALLは予後不良因子から予後良好因子に転じており, 治療がもっとも重要な予後因子であることを示唆している.年齢はなお重要な予後因子である.今後, わが国でも小児科医と内科医が共同して思春期白血病の治療研究に取り組むことで思春期白血病の病態を明らかにし, 治療成績の向上を図る必要がある.