日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
造血器腫瘍に対する腫瘍特異的免疫療法
現状と展望
高橋 義行珠玖 洋
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 15 巻 1 号 p. 1-7

詳細
抄録
特異的腫瘍免疫の展開は, 腫瘍抗原認識の分子機構解明に基づいている.これまでに多くの腫瘍反応性のCD8陽性細胞傷害性T細胞 (CTL) クローンが認識する腫瘍抗原由来ペプチドが報告されており, いくつかのカテゴリーに分類されている.原癌遺伝子HER2はさまざまな腫瘍で過剰発現していることが知られているが, われわれはHLA-A2402を有する正常人の末梢血リンパ球を, HER2由来のペプチドを用いて感作し得られたCTLクローンがHER2発現ヒト癌細胞をHLA-A2402の拘束性のもとに破壊することを示した.現在, 同定されたペプチドを用いた癌ワクチン療法の第1相臨床試験を行っている.一方, HER2を含めこれまで同定された腫瘍抗原のほとんどが残念ながら造血器腫瘍で発現が強くない.PRAME, proteinase 3, WT1, hTERTといった標的抗原候補が将来造血器腫瘍に対する免疫療法に有用である可能性がある.
著者関連情報
© (社)日本複写権センター
次の記事
feedback
Top