日本小児血液学会雑誌
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急性前骨髄性白血病における発症と分化誘導の分子メカニズム
ATRAによるPML-RARαキメラ分子標的療法
今泉 益栄
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2002 年 16 巻 2 号 p. 50-61

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抄録

急性前骨髄性白血病 (APL) は前骨髄球の分化阻害を特徴とする急性骨髄性白血病 (AML) の一型で, t (15;17) 染色体転座から生じるretinoic acid receptor-α (RARα) キメラ分子が骨髄系細胞の分化とアポトーシスを阻害する.APLのキメラ遺伝子 (X-RARα) は常にRARα遺伝子が関与し, 他方の相手X-遺伝子は多様である.大多数の症例ではPML-RARα遺伝子が形成され, 少数例でPLZF遺伝子, NPM遺伝子, NuMA遺伝子, Statsb遺伝子がキメラ遺伝子形成に関与する.RARαはRA特異的核内ホルモン受容体であり, 転写因子としてRA応答遺伝子の発現を調節する.X-RARαキメラ分子は, 例外なくRARαのDNA結合およびリガンド結合ドメインを保持しているため, X.RARαはRARα転写作用をdominant negativeに阻害する.PML-RARα transgenic mouse (TM) は白血病を発症するが, PML遺伝子不活化もAPL発症に深く関与している.一方, 薬理学的濃度のATRAによりPML-RARαはN-CoRとhistone deacetylase (HDAC) 複合体を解離しRA応答遺伝子が転写されAPL細胞の分化が誘導される.しかし, 再発APL症例においてATRA異化作用の充進やキメラ遺伝子RARα/Eドメインの変異が原因でATRA耐性を獲得する.このような薬剤耐性を獲得した難治性APLに対してはAs2O3やHDAC阻害剤などを用いた新規治療法の有効性が示され, その臨床応用の確立や薬剤耐性機序の解明が重要な課題である.

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