抄録
先天性無巨核球性血小板減少症 (CAMT) は, 乳児期に発症し身体的な奇形を伴わない血小板減少と巨核球減少を呈するまれな疾患である.CAMTは, 学童期の終わりまでに骨髄不全に進行することが多く, 巨核球系細胞のみならず造血幹細胞における病態が示唆されている.最近の研究で, CAMT患者の多くの部分はトロンボポエチン (TPO) 受容体の機能を損なうようなc-mpl遺伝子異常に起因することが明らかになった.16名のCAMT患者の16種類の突然変異には, 4種類のナンセンス変異, 4種類の欠失, 5種類のミスセンス変異, 3種類のエキソン・イントロン境界の変異が含まれ, また表現型と遺伝型とが概ね相関することが示唆されている.ほとんどの患者の遺伝子変異はその両親由来であり, 常染色体劣性の遺伝形式に合致する.ヒトCAMTとマウスのc-mpl遺伝子欠損モデルは, 表現型において高い相同性が認められる.これらの発見は, TPO受容体が巨核球系細胞および造血幹細胞の増殖と成熟に重要であることを確証する.今後, さらに多くのCAMT患者のTPO受容体遺伝子c-mplを解析することは, CAMTの病態生理を理解するうえで重要であるのみならず, 診断・遺伝カウンセリングや, 合成TPO製剤の臨床応用への治療判断にとって有用であると考えられる.