抄録
細胞傷害性T細胞 (CTL) はウイルス感染防御機構において中心的役割を担っている.CTLは, ウイルス感染細胞上に発現されるウイルス由来ペプチドと自己主要組織適合抗原 (MHC) との複合体を認識し, ウイルスを排除する.したがって, MHCの発現抑制は, ウイルスにとって免疫監視機構からエスケープするための有効な手段となりうる.事実, ヘルペスウイルス属を中心としてさまざまなウイルス感染細胞で, 細胞表面MHCの発現抑制が生じることが知られている.他方, 最近ウイルス感染とケモカインシステムとの関連が注目されている.ヘルペスウイルス属の中には, ケモカインならびにケモカインレセプターと相同性を有する蛋白を発現して, 細胞機能に変化を惹起させるものがある.本稿では, MHC発現抑制とケモカインシステムに焦点を当て, ヘルペスウイルス感染症における生物学的ならびに臨床的意義を考察する.