抄録
特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は, 血小板に対する自己抗体により血小板減少をきたす自己免疫性疾患と考えられている.その原因の詳細は今なお不明であるが, 最近の報告では, 成人のITP患者の半数以上にHelicobacter pylori (HP) 感染を認め, さらに除菌治療に成功した約半数のHP感染者で血小板数が増加することから, 成人ITPの20~40%にHPが病因として関与することが示唆されている.そこで今回われわれは, 小児慢性ITP症例を対象にHPの感染状況を検討した.対象は40例で, 血清抗HP IgG抗体, 尿中抗HP IgG抗体, 尿素呼気試験等を測定したが, HP感染が証明されたのはわずか2例 (5.0%) と低率であり, その2例とも調査段階で除菌療法未施行例であったため, ITPの病態との関連は今後の検討課題として残された.なお, 小児のHP感染の診断および治療にあたっては, 成人と比較して, 血清抗HP IgG抗体検査や尿素呼気試験の感度が低いことや, clarithromycin耐性HPが多いこと等を十分考慮する必要がある.