日本小児血液学会雑誌
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先天性血栓性血小板減少性紫斑病 (Upshaw-Schulman症候群) の長期経過観察症例
辻 陽一郎磯田 健志梶原 道子長澤 正之野々山 恵章水谷 修紀
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2004 年 18 巻 2 号 p. 84-89

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抄録
10年以上の経過観察後, 14歳時に先天性血栓性血小板減少性紫斑病 (upshaw-schulman syndrome) と診断された1例を経験した.患児は生下時より発作性に溶血, 血小板減少を繰り返したが, 発作は思春期より, 頻度が増し, 冬季に多くみられた.また慢性的な頭痛, 腹痛などの愁訴も思春期以降に目立った.患者血漿中のVon Willebrand factor-cleaving protease (VWF-CP) 活性は感度以下であったが, VWF-CPに対するinhibitorは検出されず, 遺伝子診断の結果はcompound heterozygoteであった.以上より, 本例を先天性血栓性血小板減少性紫斑病と診断した.診断後, FFPの輸注を開始したところ, 発作およびさまざまな愁訴は消失した.本例のような慢性再発性の例はこれまで報告が少なく, 長期予後は不明であるが, 近年の診断技術の進歩により, 今後こうした症例は増えると予想される.われわれの経験した症例を呈示し, 本疾患に関する最近の知見を概説した.
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