日本小児血液学会雑誌
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18 巻, 2 号
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  • 中村 晃, 高井 俊行
    2004 年18 巻2 号 p. 59-68
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    免疫グロブリン様受容体 (IgLR) は細胞外にIg様ドメインをもつ1型膜貫通蛋白質で, 細胞に活性化のシグナルを伝達する活性化型と, 抑制性のシグナル伝達を行う抑制型が存在している.このうちもっとも代表的なIgLRは抗体のFc部分と結合するFcレセプター (FcR) であり, 遺伝子欠損マウスを用いた解析により, 抗原提示から始まる一連の免疫反応の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになってきている.また最近になり新たなIgLRが次々と単離され, さまざまな病態に関与することが報告されている.本総説ではさまざまな免疫応答におけるIgLRの機能にっいて, とくに自己免疫におけるFcRの役割について概説する.
  • 基礎と臨床の進歩
    水上 智之, 布井 博幸
    2004 年18 巻2 号 p. 69-78
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    慢性肉芽腫症は食細胞の活性酸素産生異常が原因で重症細菌・真菌感染症を反復する, 遺伝性の免疫不全疾患である.活性酸素産生酵素であるNADPHoxidase (NOX) は食細胞のgp91-, p22-, p47-, p67-, p40- phox (phagocyte oxidase) とRac p21から構成されている.最近gp91-phoxは相同性蛋白 (NOX1~5, Duox1/2) が次々に同定され, NOXファミリーとしてまとめられており, 生体内での局在と機能の解明が進みっっある.臨床現場では新たな抗真菌剤やIFN-γが用いられており, 今後患者予後の改善が期待される.また, これまでに骨髄移植を受けた国内患者は18例になり, 最近は骨髄非破壊的移植の生着例が報告されるようになってきた.このような医学的進歩の一方で, 患者の日常生活での一般的注意に関する記載は十分とはいえない.われわれは現在, 重症感染症予防と患者のQOLを改善するための日常生活マニュアルを作成中である.
  • 小野 真理子, 高橋 幸博, 川口 千晴, 塙坂 八重, 川口 龍二, 吉田 昭三, 山下 健, 朴 永東, 金廣 裕道, 吉岡 章
    2004 年18 巻2 号 p. 79-83
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は妊娠35週3日, 経膣吸引分娩で出生した日齢0の男児.出生体重2,750g, 出生時から全身の著明な浮腫を認め, 呼吸困難とチアノーゼをきたし, 当院NICUに搬送され, 入院した.入院時, 貧血および血小板減少, 肝機能異常を呈していた.抗生剤とγ-グロブリン製剤, アシクロビルを投与し, 心不全と播種性血管内凝固 (DIC) に対する治療も開始した.しかし, 症状の改善なく, 日齢11の血清フェリチン, sIL-2R, IL-6および尿中β2-MGが高値を示し, 骨髄塗抹標本で血球貧食像を確認したことから, 血球貧食症候群 (hemophagocytic syndrome : HPS) の合併と診断した.プレドニゾロンの投与とγ-グロブリン大量療法を開始したが, 肝不全および心不全, 呼吸障害が進行し, 日齢22に死亡した.本症例より, 胎児水腫の発症にはHPSの高サイトカイン血症に伴うさまざまな病態が複雑に関与していることが疑われた.
  • 辻 陽一郎, 磯田 健志, 梶原 道子, 長澤 正之, 野々山 恵章, 水谷 修紀
    2004 年18 巻2 号 p. 84-89
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    10年以上の経過観察後, 14歳時に先天性血栓性血小板減少性紫斑病 (upshaw-schulman syndrome) と診断された1例を経験した.患児は生下時より発作性に溶血, 血小板減少を繰り返したが, 発作は思春期より, 頻度が増し, 冬季に多くみられた.また慢性的な頭痛, 腹痛などの愁訴も思春期以降に目立った.患者血漿中のVon Willebrand factor-cleaving protease (VWF-CP) 活性は感度以下であったが, VWF-CPに対するinhibitorは検出されず, 遺伝子診断の結果はcompound heterozygoteであった.以上より, 本例を先天性血栓性血小板減少性紫斑病と診断した.診断後, FFPの輸注を開始したところ, 発作およびさまざまな愁訴は消失した.本例のような慢性再発性の例はこれまで報告が少なく, 長期予後は不明であるが, 近年の診断技術の進歩により, 今後こうした症例は増えると予想される.われわれの経験した症例を呈示し, 本疾患に関する最近の知見を概説した.
  • 石本 浩市, 恒松 由記子
    2004 年18 巻2 号 p. 90
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • グループスタディの立場から
    石田 也寸志
    2004 年18 巻2 号 p. 91-96
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1. QOL小委員会の活動 : 患者手帳として, 病気の説明をする『ご家族のためのハンドブック』と治療経過を記録する『日々の記録』を作成したこと, 治療中の患児本人と家族のQOLアンケート調査を行っていること, 参加施設のQOLに関係するアンケート調査をしたこと, ホームページを開設し情報公開をしていることなどがおもな活動である. 2.長期フォローアップ体制の確立に向けて : 主治医が代わったときにも治療内容がすぐにわかるように「長期フォローアップのために」と題するサマリーを作成する. 3.晩期障害調査 : 調査の同意を得たあとに, スクリーニング調査を診断後5~20年後までに5回, 事務局から調査用紙を送り, 登録症例で調査し, 問題とされた場合は詳細な検討を行う.
  • 小児病院の立場から
    気賀沢 寿人, 田渕 健
    2004 年18 巻2 号 p. 97-100
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 奈良 妙美, 高嶋 能文, 堀越 泰雄, 三間屋 純一
    2004 年18 巻2 号 p. 101-104
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ここ数十年の小児がんの治療成績の向上により, 60-90%の長期生存が可能になった.長期生存者の増加に伴い, 晩期障害が新たな問題となっているが, 治療終了後の定期的フォロー体制が構築されていないため, 終了後に起こってくるさまざまな身体的, 心理的問題の実態を把握するのは難しい状況である.今回のアンケート結果から晩期障害に対する患者・家族の不安がうかがえ, 早急な長期フォロー体制確立の必要性を感じた.
  • 掛江 直子, 恒松 由記子
    2004 年18 巻2 号 p. 105-107
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    わが国の小児がんの生存率は, この20年間で飛躍的に改善され, 70%を上回る多数の小児がんの長期生存者が成人の仲間入りをするようになった.しかしながら, この生存率の向上に伴い, 治療による晩期障害のリスクが問題となってきた.また, 小児がん患者では遺伝性がん素因を有している場合も多く, その場合は次世代がリスクを引き継ぐ可能性もある.こういった中, 晩期障害のリスクをもった長期生存者たちが成人しQOLの高い生活を続けること, そして結婚, 挙児, 次世代の健やかな成長を支援するための長期的かっ包括的なフォローアップシステムの構築が求められている.しかし, 研究が長期にわたること, プライベートな問題にふれることなどから, その研究実施には倫理的配慮が不可欠である.とくに, 本人への告知の問題, 研究参加についての代諾と同意のあり方, プライバシー保護の問題, 情報提供と教育, 相談窓口の開設などが, 長期フォローアップ研究では重要であると考える.
  • 石本 浩市, 吉田 雅子
    2004 年18 巻2 号 p. 108-111
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児がんの長期生存者の晩期障害や心理社会的問題に対応するための長期フォローアップ外来を1998年に開設した.診療は小児科から総合診療科の外来に移し, 小児科医とソーシャルワーカーが中心になって行った.小児がん患者の半数に晩期障害を認め, 必要に応じて成人医療の専門医の協力を求めた.長期フォローアップ外来は成人医療への移行期間であり, そのことを患者, 家族および小児科医は意識しながら成人医療へと移行する準備進めてゆくことが重要である.患者の経過を熟知している小児科医は, 晩期障害や心理社会的問題に悩む患者に共感し, 精神的に支援するとともに, 成人医療に移行したあとも助言者として果たす役割は大きいと思われた.
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