抄録
細胞自爆遺伝子を用いて移植片対宿主 (GVH) 病の制御を行うという試みは, 1990年代にイタリアで始まった.造血細胞移植後に白血病が再発した症例に対して, ドナーリンパ球輸注を行う際に, 細胞自爆遺伝子を導入・発現したものを使用する.輸注後に制御不能のGVH病が発症した際には細胞自爆遺伝子を作動させると, リンパ球は自動的に細胞死に陥り, GVH病は沈静化するというプログラムである.ここでは細胞自爆遺伝子としてヘルペスウイルス・チミジンキナーゼを用いる.本来ヒトの細胞はこれをもっていないが, 遺伝子導入によって細胞内にこの酵素蛋白をもつようになる.するとガンシクロヴィルを活性化させる能力を発現して, 本来ヒトには無毒であるガンシクロヴィルが, 細胞毒性を発揮するようになる.この遺伝子治療をわが国に導入・応用するべく準備をすすめ, 2004年11月に至って第1例目を実施した.本プロジェクトの概要を報告する.