日本小児血液学会雑誌
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小児造血器疾患におけるチロシンキナーゼの臨床的意義とその阻害剤による治療
林 泰秀
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2007 年 21 巻 3 号 p. 93-110

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抄録
チロシンキナーゼ (TK) は癌化に重要な役割を有するとされている.この中でクラスIII受容体型チロシンキナーゼファミリーに属するFMs-like tyrosine kinase 3 (FLT3), 幹細胞因子受容体 (KIT), 血小板由来成長因子受容体 (platelet-derived growth factor receptor : PDGFR) は, 未熟造血幹細胞に発現し, その増殖, 生存, 分化, 遊走に重要な働きをしている.近年, 成人の急性骨髄性白血病 (AML) の約20%, 骨髄異形成症候群 (MDS) の約5%にFLT3遺伝子のintemal tandem duplication (ITD) がみられることが報告され, 重要な予後因子であることが明らかにされた.さらに, FLT3のTK2ドメインの変異がチロシンキナーゼの恒常的活性化を起こしていることが判明している.小児AMLのFLT3-ITDは頻度は約15%であり, 白血球増多がほとんどの報告でみられ, 年齢が10歳を超えると高頻度になるとの報告が多い.予後に関しては無病生存率は著明に悪く, 寛解率も成人よりも有意に低い.興味深いことに, MLL遺伝子再構成を認める乳児ALLと小児ALLの高2倍体例にFLT3のD835/1836変異が約20%認められ, これらの症例は変異のない症例に比べて予後が悪い傾向がみられた.KIT遺伝子の変異は小児のAML99のt (8;21) -AML46例中8例でみられ, 変異例は成人と同様小児でも予後不良であった.PDGFRA遺伝子の変異は, われわれはAML114例中2例にはじめて変異を同定した.これらのことより, FLT3, KITPDGFRA遺伝子の変異は小児白血病の発症進展におけるセカンドヒットの1っで, 特定の染色体異常と密接な関係があると思われた.本稿では小児造血器疾患におけるFLT3, KITPDGFRA遺伝子の発現と異常の臨床的意義を中心に, これらと関係のあるnucleophosminJAK遺伝子にっいても言及し, チロシンキナーゼ阻害剤, および最近の分子標的療法にっいて概説する.
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