日本小児血液学会雑誌
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MLL遺伝子再構成を有する小児白血病発症の分子機構
小埜 良一
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2007 年 21 巻 3 号 p. 111-120

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抄録
MLL (Mixed-Lineage Leukemia) 遺伝子は, 乳児や二次性の白血病で頻度の高い11q23転座から同定された.MLL再構成の結果, MLLは転座相手遺伝子の1つと融合し, MLL融合蛋白を発現する.MLLは, クロマチン構造を修飾する転写調節複合体を構成して, ヒストンメチル化を調節するなどして, 成体型造血においてHOX遺伝子群の発現の維持を通じて重要な役割を果たしている.MLL融合蛋白は, MLL断片内のmenin結合モチーフやDNAメチルトランスフェラーゼ様領域が癌化能に必須であり, 転座相手断片内の転写活性化または多量体形成ドメインを介して白血病発症に至る.また, ヒストンメチル化能を欠くが, プロモーターへの結合を介してHOXを異常に活性化する.最近, われわれは, MLL融合蛋白は, 単独で長期の潜伏期を経て骨髄増殖性疾患を発症するのに対し, FLT3変異体のような二次的遺伝子変異と協調して早期に急性白血病を発症する多段階白血病発症モデルを確立した.この分野における進歩はMLL関連白血病発症の分子機構に新たな知見を開拓し, MLL融合を標的とした治療法の開発にも有用である.
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