日本小児血液学会雑誌
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無ガンマグロブリン血症で発症し, 慢性活動性EBウイルス感染症に悪性リンパ腫を合併した一女児例
田代 聡坂野 堯小林 正夫西村 真一郎田中 義人上田 一博
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1990 年 4 巻 1 号 p. 109-113

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抄録
無ガンマグロブリン血症を認め, 経過中M蛋白の出現を伴う高ガンマグロブリン血症に移行した3ヵ月の女児例を経験した.患児は, 全身リンパ節腫脹, 肝脾腫を伴う慢性活動性EBウイルス感染症であった.経過中, Epstein-Barrウイルス (EBV) のウイルスキャプシド抗原 (viral capsid antigen : VCA) に対する血清IgG抗体は高値を示したが, 核内抗原 (EBV-determined nuclear antigen : EBNA) に対する抗体は陰性であった.生検リンパ節にてEBNA陽性細胞が検出された.症例は, 最終的に悪性リンパ腫で発症30ヵ月後に死亡した.剖検時の腫大したリンパ節ではサザンブロット法によりEBV-DNAが検出された.EBウイルスの慢性活動性感染が, 悪性リンパ腫の発生に関与していると考えられた.患児の姉は悪性リンパ腫のため生後20ヵ月で, また兄は肺炎のため生後3ヵ月で死亡している.これらの臨床および検査所見より, 新しい遺伝性免疫不全症の存在が示唆される.
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