日本小児血液学会雑誌
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自家末梢血幹細胞移植術施行後早期の小児癌患者に発生した心肺合併症の検討
安友 康二高上 洋一岡本 康裕斎藤 慎一田口 義行阿部 孝典平尾 敦佐藤 純子渡辺 力河野 嘉文広瀬 政雄二宮 恒夫横林 文子
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1992 年 6 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

各種小児癌患者に, 全身放射線療法を用いない超大量化学療法を移植前処置療法として用いて自家末梢血幹細胞移植術 (PBSCT) を施行し, 移植術後2週以内に発生した心肺合併症について検討した.移植患者32名中9名になんらかの心肺合併症が発生し, その内1名は薬剤治療を要する心不全をきたした.合併症発生頻度を, 心毒性があるanthracycline系薬剤の総投与量240mg/m2以上群と未満群, あるいは移植前処理療法に用いた薬剤の種類について比較したが, 有意差を認めなかった.心肺合併症の症状は輸液制限により4名で改善し, 残り5名ではカテコールアミン療法を要したが, いずれも早期に治癒し, 後遣症も残さなかった.化学療法の既往を有する小児では多量の輸液投与により容易に心肺機能の過負荷が生じると思われ, 適切な輸液管理とともに, 合併症発生例に対しては早期にカテコールアミン療法を選択すべきと思われた.

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