日本小児血液学会雑誌
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簡易無菌管理による自家末梢血幹細胞移植術に合併した早期感染症の検討
岡本 康裕高上 洋一斎藤 慎一平尾 敦清水 隆史阿部 孝典佐藤 純子渡辺 力河野 嘉文二宮 恒夫黒田 泰弘
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1992 年 6 巻 5 号 p. 423-427

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抄録
自家末梢血幹細胞移植術 (PBSCT) を施行した40名の小児癌患者において, 移植後4週以内に発生した早期感染症について検討した.前処置には全身放射線照射を用いず, 超大量化学療法のみ行った.空気層流装置を設置した通常個室で24時間母児同室とし, 無菌食の摂取は行わなかった.全例にacyclovir, 抗サイトメガロウイルス高力価globulin製剤を投与し, 一部にはamphotericin B, Huconazoleを投与した.38名 (95.0%) で38.5℃以上の発熱が, 43回みられた.内訳は粘膜腸炎26名 (65.0%), 肺炎5名 (12.5%), 敗血症4名 (10.0%), 肛門周囲膿瘍4名 (10.0%), 真菌血症1名 (2.5%), 帯状庖疹2名 (5.0%) 等で, 10名 (25.0%) の発熱は原因不明であったが, 全例治療により回復した.簡易無菌管理によるPBSCT後には, 感染症合併頻度は高いが, 重症例や死亡例はなく, 小児癌患者におけるPBSCTでは, 厳重な無菌管理は必須ではないと考えられた.
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