抄録
自家末梢血幹細胞移植術 (PBSCT) を施行した40名の小児癌患者において, 移植後4週以内に発生した早期感染症について検討した.前処置には全身放射線照射を用いず, 超大量化学療法のみ行った.空気層流装置を設置した通常個室で24時間母児同室とし, 無菌食の摂取は行わなかった.全例にacyclovir, 抗サイトメガロウイルス高力価globulin製剤を投与し, 一部にはamphotericin B, Huconazoleを投与した.38名 (95.0%) で38.5℃以上の発熱が, 43回みられた.内訳は粘膜腸炎26名 (65.0%), 肺炎5名 (12.5%), 敗血症4名 (10.0%), 肛門周囲膿瘍4名 (10.0%), 真菌血症1名 (2.5%), 帯状庖疹2名 (5.0%) 等で, 10名 (25.0%) の発熱は原因不明であったが, 全例治療により回復した.簡易無菌管理によるPBSCT後には, 感染症合併頻度は高いが, 重症例や死亡例はなく, 小児癌患者におけるPBSCTでは, 厳重な無菌管理は必須ではないと考えられた.