抄録
ほとんどの成人T細胞白血病 (ATL) は垂直感染群から発症すると考えられ, 水平感染群から発症したとの報告はない.私たちは, HTLV-1キャリアと非キャリアのリンパ球400個中のフラワー様細胞 (形態的にATLに特徴的なフラワー細胞+異常リンパ球) の頻度を調べたが, この頻度はキャリアがATLになる危険因子になるのではないかと仮定した.キャリア妊婦を垂直感染群と性交感染群にわけ頻度の違いを調べ, キャリア妊婦群とその母親 (これもキャリア) の世代間での頻度の違いもみた.結果は, キャリアのフラワー様細胞の頻度は有意に非キャリアより高かった.キャリアのフラワー様細胞の頻度は1~2%であり, 世代間や感染経路には影響されなかった.フラワー様細胞の頻度はATLの危険因子にはならなかった.性交感染群では垂直感染群と同じ頻度のフラワー様細胞がみられるのに, なぜ性交感染群からはATLが発症しないかは不明である.