Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Short communication
Evaluation of a joint pharmacy-hospital prescription analysis education program in practical training
Daijiro AtoTakeshi KotakeKoji KomoriHiroyuki MoriyamaTomomi InoueShinobu MitamuraMari HidakaNaoko MizunoTakashi HiroseAkihiko YoshidaAkane OnimotoTetsuya YatsushiroTakashi OharaTadashi ShimizuHidekichi Tokai
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2020 Volume 4 Article ID: 2020-033

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抄録

本研究は,処方解析報告書を連携ツールとした薬局病院合同教育プログラムが,実習生の処方解析能力にどのような影響を与えたかについて検証することを目的とした.処方解析報告書は,採択理由などを含む4つの大項目で構成された書式を作成した.実習生は本報告書を週1例以上提出し,実習開始1,6,11週目に報告書の内容と自身の考察を発表した.提出された報告書と発表内容に対して評価チームの薬剤師および大学教員がルーブリックを用いて評価した.実習生の報告書と発表に対する評価結果および実習後アンケートの結果から,実習11週目には,1,6週目と比べてルーブリックの全項目が有意に向上し,特に疾患を意識した症例選択能力が向上したと考えられた.また,アンケート調査から,実習生が本プログラムにより自身の成長を実感していることが明らかになったが,発表会後のフィードバック方法に今後の課題が見出された.

Abstract

This study examined how a joint pharmacy-hospital education program using an original Prescriptions Analysis Report influenced trainees’ prescription analysis ability during practical training. The prescription analysis report comprises of four main criteria, including the reason for selecting the case, the information gathered from prescriptions and medication history, the prescription analysis results, and personal impressions of the prescription analysis. The trainees submitted at least one report per week and presented the information with a discussion in the first, sixth, and eleventh weeks of the training. Pharmacists and faculty members on the evaluation team used a rubric to assess the submitted reports and presentations. The results showed that the ability to analyze prescriptions significantly improved in the eleventh week compared to that in the first and sixth weeks for all prescription analysis criteria, especially the ability to select cases based on disease awareness. The trainee responses on a questionnaire indicated that the program helped them develop more skills but raised issues with the feedback method after the presentations.

はじめに

近年,薬物療法に関する医療機関と地域の薬局との連携は,服薬情報提供書(トレーシングレポート)の活用が活発になるなど病院と薬局が共同で患者をケアしていくために極めて重要とされる.さらに,後進の育成という観点においても,病院と薬局が一体となった連携教育が必要である.現に2015年に改訂された薬学教育モデル・コアカリキュラム(以下,改訂コアカリ)における薬局・病院長期実務実習では,「大学-病院実習-薬局実習の学習の連携を図り,一貫性を確保することで学習効果の高い実習を行う」ことが求められている1,2).さらに,改訂コアカリの中項目「F:薬学臨床」の「(3)薬物療法の実践」では,適切な患者情報の収集・評価から状態を正しく判断し,信頼性の高い医薬品情報源を用いて,目の前の患者個々に適した薬物療法を提案・実施・評価できる能力の修得が求められている.その基盤には処方された医薬品や当該患者の薬歴情報などから患者の病態を予測した後に,収集・評価した医薬品情報も踏まえ,当該患者に対する医師の処方意図を理解し,必要に応じて疑義照会の要否を検討できる処方解析の能力が求められる.

大阪鉄道病院(以下,当院)では,2013年度より始まった病院実習において,実習生が関わった患者に関する処方解析を薬剤師の指導の下で行い,自由フォーマットの報告書をまとめさせていた.しかし,自由フォーマットで記載された報告書では,処方解析に必要となる情報の不足している点や処方意図・疑義照会の要否に関する実習生の記載内容について,十分な評価とフィードバックが行えていない問題があった.

そこで我々は,実習生が処方解析の重要なポイントを意識しながらまとめられるだけでなく,記載内容に対して指導薬剤師が適切に評価できるように,処方解析の重要な点をポイント毎に記載できるようにした当院独自の処方解析報告書フォーマット(以下,報告書)を作成した.

本報告では,2018年度より開始した報告書を連携ツールとした薬局・病院合同教育プログラム(以下,教育プログラム)が実習生の処方解析能力にどのような影響を与えたかについて,報告書と発表に対する評価の結果と実習生に対するアンケート結果から検証することを目的とした.

方法

1.報告書の概要

報告書の項目としては,採択理由,処方箋と記録から得られる情報,解析内容,解析を通じて感じたことを実習生が記載できるようにした.さらに,指導薬剤師からのフィードバックコメントの記載欄を設けた(図1).

図1

処方解析報告書の記載例(患者情報,疾患名を伏せた実際の事例)

採択理由の項目では,実習生がたくさん遭遇する処方箋の中から何故その処方箋を選んで解析しようとしたのかを記載する項目とし,記載のポイントとして実務実習ガイドラインにおいて推奨されている代表的な疾患の症例を適切に選択できる点とした.

処方箋と記録から得られる情報では,処方箋の内容とカルテの記録や保険薬局での薬歴などから得られる情報を記載する欄とした.実習生が具体的に記載できるように,診療科,年齢,性別,処方内容,併用薬,薬歴,検査値,持参薬を小項目として設定した.

解析内容の項目は,実際に疑義照会や服薬指導を行ったことを評価するのではなく,実践の前段階において,実習生が想定した説明内容を記載するようにした.本項目は,報告書の最も重要な部分であるため,6個の小項目に分け,実習生が収集した情報から処方が適切であったか,疑義照会の必要性はないか,どのように患者に説明をしたら良いかについて記載するようにした.「予想される疾患名」欄は,処方箋にある医薬品だけでなく収集した患者情報から患者の状態をイメージした上で予測した疾患名を記載する部分とした.「添付文書との相違」欄は,公的かつ基本となる医薬品情報資料である添付文書と相違を確認した上で,相違があった場合には疑義照会の必要性があるかを判断して記載する部分とした.「薬剤管理指導を行うにあたり,薬剤師として意識しておくこと」欄は,膨大な医薬品情報のうち,患者へ薬剤管理指導を行う際に必要な情報を取捨選択した上で記載する部分とした.「今回の処方内容から必要とされる患者への聞き取りと観察項目」欄は,処方内容や薬歴だけでは不足しているため患者に確認する必要のある情報をまとめて記載する部分とした.「患者に説明する内容」欄は,具体的にどのように患者に伝えるかを箇条書きで記載する部分とした.

解析を通して感じた事の項目は,本処方解析を行ったことから得られた気づきなどからの振り返りを記載する部分とした.

フィードバックコメントは,指導薬剤師が全ての処方解析報告書にコメントを行った.

2.教育プログラムの概要

実習生は,実習振り返り用の報告書を週1例以上・計11例以上の報告書を担当薬剤師の指導の下で作成する計画とした.さらに,実務実習開始後6,11週目に行われる処方解析報告書発表会(以下,発表会)で発表する発表用報告書は,実習生の成長を確認する意図があったことから,報告書を作成する過程で担当薬剤師が一切関わらないようにした.なお,実習1週目における発表用報告書については,実習生が処方解析症例を見つけることは困難であると考え,既に報告のある仮想症例を一部改変したものを用いた3)

3.発表会と評価の概要

実習生は,発表の週に作成した報告書について発表を行った.発表時間は質疑応答も含めて10分とした.発表用報告書と発表に対する評価は,観点として「症例選択」,「情報収集」,「疾患予測」,「処方鑑査」,「薬剤管理指導の準備」,「疑義照会の必要性」,「服薬指導」,「質疑応答」について,評価チームメンバーですり合わせを行って作成したルーブリックに基づいて評価した(図2).なお,第1週目については課題症例を提示しているため,「症例選択」については評価を行わなかった.

図2

ルーブリック評価表

評価者は,評価チームメンバーから,大学教員2名,薬局薬剤師1名,病院薬剤師1名をランダムに指名した.各施設の指導薬剤師は,発表用報告書を発表日の前日までに研究実施責任者へ送信し,研究実施責任者は予め指名してある評価者へ送信した.発表日には,実習生の発表後に評価チームメンバーが実習生へ質問を行い,全実習生の発表終了時に実習生は退席して,評価チームメンバー間で意見交換を行った.質問の意図など意見交換で出た内容について,後日,各施設の指導薬剤師から実習生にフィードバックを行う計画とした.

4.実習生へのアンケートと解析

実務実習終了後に,報告書作成過程で身についたと考えられる事項に対する自己理解度(問1~7),処方発表会への準備と振り返り(問8~18),教育プログラムに対する総合評価(問19~21)について,21項目の調査を実施した.評定尺度は,「5.とてもそう思う,4.そう思う,3.どちらとも言えない,2.そう思わない,1.全くそう思わない」の5段階とした.自由記述は,記述内容から似たような記述を2名の著者間で分類し統一した.

5.倫理的配慮

本研究は大阪鉄道病院臨床倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:H30-No.11号).本研究への実習生の参加について,実習担当の薬剤師により,実務実習の初日に処方解析を実施していく方法とルーブリック評価の内容と本研究について実習生に説明を行った上で同意を得た.アンケートの回答に対しては,実務実習終了後に直接指導に関わらなかった大学教員が電子媒体で配布し,電子媒体による返送を依頼した.この際,アンケートは自由意思による回答であること,個人情報は匿名化を行うことを文書で説明した.

結果

教育プログラムへの参加に同意を得られた病院と保険薬局の2018年度の実習生で初めて本教育プログラムを受講した22名のうち,全3回の処方解析発表を行った20名(91%)を解析対象とした.20名の内訳は第1期(病院実習生3名,薬局実習生2名),第2期(病院実習生3名,薬局実習生7名),第3期(病院実習生2名,薬局実習生3名)であった.ルーブリック評価の評価値は順序尺度であるため平均値を算出することは適切ではないが,安原らの報告を参考にして,実習生の成長を視覚的に示しやすいことから観点ごとの1,6,11週目の平均値および標準偏差を算出した(表14,5).全ての観点において,週が経つにつれ評価平均値が向上した.実習終盤の11週目には,「症例選択」の観点において,「3」と評価された学生が最も多かった.また,実習生個人の全項目平均値の変化においても,20名中19名の実習生が週を追うごとに平均点が上昇した(図3).

表1 ルーブリック評価の結果(n=実習生20 × 評価者4)
観点 時期 3 2 1 0 Fisher’s exact test
1. 症例選択 1週目
6週目 24 39 15 2 p < 0.001
11週目 57 18 1 4
2. 情報収集 1週目 0 28 36 16 p < 0.001
6週目 11 40 28 1
11週目 25 48 7 0
3. 疾患予測 1週目 0 22 46 13 p < 0.001
6週目 8 51 21 0
11週目 33 40 6 1
4. 処方鑑査 1週目 0 31 46 3 p < 0.001
6週目 11 46 23 0
11週目 28 48 4 0
5. 薬剤管理指導の準備 1週目 2 27 49 2 p < 0.001
6週目 4 43 33 0
11週目 35 36 9 0
6. 疑義照会 1週目 0 15 55 10 p < 0.001
6週目 7 45 27 1
11週目 30 43 7 0
7. 服薬指導 1週目 2 13 39 26 p < 0.001
6週目 8 37 35 0
11週目 24 49 7 0
8. 質疑応答 1週目 1 47 28 4 p < 0.001
6週目 16 53 10 1
11週目 30 38 12 0
図3

実習生ごとのルーブリック平均値

実習終了後の実習生に対して実施したアンケートの結果を表2に示す.対象者22名中12名から回答が得られた(回収率54.5%).処方解析内容に対する自己理解度の項目では全項目で平均値が4以上であったが,医薬品情報を調べるツール(問5),収集すべき患者情報(問6)の2項目で「1」もしくは「2」を付けた実習生がいた.処方解析発表会への準備の項目(問8~12)では,発表内容の十分な調査(問9)および予測質問への準備(問11)では11名(92%)の実習生が「5」または「4」と回答した.これに対し,症例選択の容易さ(問8)については,「1」または「2」と回答した実習生が8名(67%)であった.処方解析発表会の振り返りに関する項目(問13~18)は全項目で3.5以上であったが,11名(92%)の実習生が予測されない質問がされた点に関して「5」または「4」と回答した.本教育プログラムに対する総合評価に関する項目(問19~21)は全項目で平均4以上であった.

表2 処方解析に対するアンケート結果(n = 12)
アンケート項目 5 4 3 2 1
1.  処方解析を通して,疾患について学習することができた 9 2 0 1 0
2.  処方解析を通して,薬の作用(機序・効能)について学習することができた 8 2 2 0 0
3.  処方解析を通して,薬の副作用について学習することができた 8 4 0 0 0
4.  処方解析を通して,薬の相互作用について学習することができた 5 6 1 0 0
5.  処方解析を通して,医薬品情報を調べるツールについて学習することができた 8 2 0 0 2
6.  処方解析を通して,収集すべき患者情報について学習することができた 7 3 1 1 0
7.  処方解析を通して,服薬指導の内容やその方法について学習することができた 7 3 2 0 0
8.  発表に向けて,比較的,容易に症例を選択することができた 2 0 2 6 2
9.  発表に向けて,十分に発表する内容を調査した 8 3 1 0 0
10. 発表に向けて,発表方法や構成について計画を立てた 4 4 2 2 0
11. 発表に向けて,予測される質問に対しての回答を事前に準備した 7 4 1 0 0
12. 発表に向けて,実際に発表の練習(リハーサルなど)を行った 2 3 2 1 4
13. 発表を振り返って,自分の考えを順序立てて説明することができた 1 8 2 1 0
14. 発表を振り返って,導いた結論について十分な考察をすることができた 1 7 3 1 0
15. 発表を振り返って,発表時の態度(声量や目線など)に気を配ることができた 4 6 2 0 0
16. 発表を振り返って,質疑応答に対して自分の意見を明確に伝えることができた 2 6 4 0 0
17. 発表を振り返って,質疑応答で予測しない質問がされた 9 2 1 0 0
18. 発表を振り返って,自分の問題点や良かった点に気付くことができた 4 6 2 0 0
19. 処方解析で自分の能力を総合的に高めることができた 8 2 1 1 0
20. 処方解析は難しいと思う 6 4 2 0 0
21. 処方解析に取り組んで良かったと思う 10 1 0 1 0

さらに,本教育プログラムの有益な点と改善を要する点について,実習生の自由記述内容から分類し,記述数が多かった順に並べた結果を表S1,S2に示す.有益な点は,1)自身の成長の実感,2)発表会の存在によるモチベーションの維持,3)主体的な学習習慣,4)他者からの学びの4項目に分類された(表S1).改善を要する点は,1)発表会後のフィードバック,2)報告書作成における制限と負担,3)教育プログラムに関する事前説明,4)発表会の運営方法の4項目であった(表S2).

考察

処方解析プログラムのルーブリック測定の結果から,実習生は11週間での実習で症例解析の要素も含まれた処方解析能力が週を追うごとに成長していることが明らかとなった(表1図3).今回のルーブリック評価では,全ての観点での一様な上昇が観察されたことから「処方解析能力を8個の観点に分ける必要があるか」という議論は残る.しかし,実習生個々の指導を行う上で,実習生の良く成長した部分,成長が不十分な部分を明確にするためにも観点を8個に分けることが必要であったと考えている.特に,「症例選択」の観点の評価平均値が大きく向上した要因として,主要8疾患を中心に臨床現場において患者を継続的にサポートすることが求められる症例の選択が高評価となるように設定しており,本教育プログラムを通じて,実習生が長期的な薬学的管理が必要となる疾患への認識が向上したものと考えている(表1).一方,6週目から11週目にかけて評価値が低下した実習生が1名存在している(図3).その要因として,間違えた疾患を予測したことで,他の観点の評価値も低い傾向にあった.しかし,疾患予測を間違えたとしても,それぞれの観点での成長をしている可能性があることから,疾患予測を間違えた場合に他の観点の評価をどのように行うかについて,改めて評価者間で検討する必要があることが示唆された.

実務実習終了後アンケートの結果より,実習生のほとんどが終了時に患者の薬物治療方針を検討する上で必要となる知識について,十分に身についたと評価した.さらに,実習生が報告書発表内容の十分な調査と予測質問への準備を行って発表会に臨み,発表会が概ね有益なものと感じていた(表2).さらに,有益だった点に関する自由記述で,自身の成長の実感,発表会の存在によるモチベーションの維持に分類された記述が多かった(表S1:1,2).報告書の作成は,指導薬剤師の指導を受けつつも,作成過程の多くは独力での検索や考察が必要とされる.毎週,報告書を作成する過程で実習生は成長しており,実習前期に作成した報告書と比べて,中期,後期に作成した報告書の質が向上していることを自身で実感したと推測される.これは,蓄積された報告書がポートフォリオの役割を果たしていると考えられる.実務実習での疑問に対するQ&Aポートフォリオ作成と定期的な発表会が実習生に与える影響として,両方とも行わない群,ポートフォリオのみ作成群と比較し,関連する基礎知識の定着度が高まる傾向にあることが示されている6).その要因として,実習生が独力でまとめた成果を発表という場で実習生同士が共有し,指導薬剤師からのフィードバックが刺激となり,実習意欲の向上に貢献している点を挙げている6).本研究においても,報告書の作成と発表会の存在が実習生の成長と意欲の増進に関与したものと考えている.

一方,アンケートの結果から,ルーブリックの評価で成長した「症例選択」の観点に対して,実習生は評価に反して難解さを感じていた(表2,問9).その要因として,自由記述から代表的8疾患への制限,実習環境による症例の制限が症例選択を困難にしたと実習生が感じていることが示唆された(表S2:2).さらに,発表会後の即時フィードバック不足に関する記述が最も多かった(表S2:1).発表会内容のフィードバックは各施設で行うように依頼していたが,アンケートでも予期されない質問があったと感じた実習生に対して,質問者による即時フィードバックが適切であったと考えられ,発表会における重要な改善項目であることが示唆された7)

本研究における限界点として以下の3点が挙げられる.1点目としては,発表用報告書以外の報告書の作成過程において,各施設で実習生に対するフィードバックがどの程度行われていたのかを評価できていない点である.2点目として,実習生の報告書の内容や発表時の質疑応答が前回よりも良くなっていると評価者が考えてしまう点が挙げられる.3点目として,本教育プログラムを実施しなかった実習生の処方解析能力の評価を行っていない点である.薬局・病院実習において,実習生の「薬物療法の実践」のパフォーマンスが経時的に上昇することが報告されており,その成長グラフと本研究の成長が類似している.処方解析に求められる能力は「薬物療法の実践」の一部であることから,本教育プログラムを実施しなくても実習生の処方解析能力が成長した可能性が否定できない点である4,8).しかし,これら限界点を考慮しても,報告書を用いた本教育プログラムにより,実習生の成長が確認できたことは妥当な結果であると考えられる.

以上,独自に作成した処方解析報告書を用いた合同教育プログラムが,実習生の処方解析能力の向上に寄与することを明らかとした.現状,本報告書フォーマットは,病院実習を想定した構成となっており,事前学習から薬局・病院実務実習まで一貫したポートフォリオツールとしては,在宅医療も含めた広範な来局者・患者を対象とする薬局薬剤師が処方解析をする上で必要となる患者の生活歴,家族構成,患者に関わるキーパーソンなどの記載部分が不足していると考えられる.近畿地区では2019年度から薬局,病院の地域単位でのグループ化による実務実習が始まっており,本院もグループ薬局および大学と連携し,本報告書を用いた一貫教育を継続している.今後,プログラム参加者間で薬局視点の項目の追加について検討を行い,実習生が成長する助力になるような実習教育を進めていきたいと考えている9)

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

この論文のJ-STAGEオンラインジャーナル版に電子付録(Supplementary materials)を含んでいます.

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