Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Short communication
Understanding the current status and issues of ICT education in the faculty of pharmacy
Nobuyuki DoiAkiko OmiMizuki NakajimaTakashi Tomizawa
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2022 Volume 6 Article ID: 2021-035

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抄録

今後,薬剤師による医療ICT(薬局に特化したものをPharma Techと呼ぶ)の活用は医療アウトカムの増大,医療サービスの向上,患者の利便性の向上などを目指す上で不可欠となる.しかし,Pharma Techの活用には薬剤師・薬学生のICTリテラシーが重要と考える.そこで本調査では,2021年3月時点で公開されている薬学部を有する大学(77大学,79学部)のシラバスを調査した.調査項目は,科目名,担当教員の所属・専門分野,開講学年,授業形式,GIO・SBOs,学習評価などとした.薬学部のICT系科目の設置率は1年次が最も高く,その内容は入学時オリエンテーションに近い内容であった.一方,ICTの医療アウトカム・サービスの向上などの臨床応用を目的とした授業の設置率は5.9%であった.このことは4年次以降の高学年でのICT系科目の設置率が低く,授業に臨床経験のある実務家教員の関わっている割合が11.8%と低いことが一因と考えられた.

Abstract

The use of healthcare ICT by pharmacists (called “Pharma Tech” for pharmacies) will be essential in the future for improving health outcomes, enhancing healthcare services, and increasing convenience for patients. However, the ICT literacy of pharmacists and pharmacy students must improve for the utilization of Pharma Tech. Therefore, the syllabi of pharmacy departments (77 universities, 79 faculties) that were open to the public from March 2021 were examined for this study. The survey items included the course title, affiliation and specialization of the instructor, course year, class format, general instructive objectives/specific behavioral objectives, and learning evaluation. The percentage of ICT courses offered by the faculty of pharmacies was highest in the first year with basic content, close to the time of the entrance orientation. On the other hand, only 5.9% of classes offered had clinical application, such as improving healthcare outcomes and services with ICT. This result may be attributed partly to the low number of ICT courses provided to the higher grades and the low percentage of teachers (11.8%) with clinical experience required for those courses.

目的

超高齢化社会にある本邦において,生産年齢人口の急激な減少と年々増大している社会保障費への根本的かつ効果的な改善の施策が求められている.この課題への対応策のひとつとして,2014年に発表された成長戦略のうち健康・医療戦略の分野において「世界最先端の医療の実現のための医療・介護・健康に関するデジタル化・情報通信技術(ICT)化」が提唱されている1).このような背景からデジタルヘルス(digital health)が推進され,現在も続いている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックも後押しする形となり,医療現場における導入が進みその存在感も高まっている2)

デジタルヘルスは,モバイル端末を含むICTを活用したあらゆる医療・介護・健康支援を指す.すなわち,医療ビッグデータ,ゲノム情報,人工知能(AI),仮想現実(VR)など様々な医療・介護・健康分野におけるデジタル技術の利活用を包括する概念である3).WHOのガイドライン3) の中で医療関連のデジタル技術を示す場合にはデジタル医療と呼び,薬局に関連するデジタル技術をPharmacyとTechnologyから「Pharma Tech」と筆者らは命名した4).そして,デジタル医療が目指す目的として,患者を治療する,健康増進に寄与する(一次予防を含む),臨床研究を行う,医療従事者への教育,疾病の臨床経過を観察・評価する,一般・特定集団を対象とした公衆衛生的モニタリングなどが挙げられる5).これらの目的を達成する手段として,オンライン診療・服薬指導,モバイルヘルス(ウェアラブルデバイス/生体センシングデバイス,デジタル療法),仮想現実(VR),拡張現実(AR),複合現実(MR),電子健康情報(HER),個人健康情報(PHR)などの医療ICTがある2).Pharma Techもデジタル医療と同様にこれらの医療ICTを活用し,医療アウトカムの増大,医療サービスの向上による患者満足度の向上,患者・薬剤師の利便性の向上,業務効率化,薬局経営の改善などを目的としている.

昨今こうした課題解決を目的とした,薬局向けのシステムやアプリケーションが続々とリリースされている.現状では医療ICTの実装により,在宅医療業務における医師との連携の充実,患者宅での服薬状況のオンライン確認,医師やその他の医療・介護従事者との円滑な情報共有など様々なメリットが予測6) されているが,それぞれの製品に対する費用対効果を含めたエビデンスは乏しく,薬剤師は選択のパラドックスに陥っているものと予想される7).しかし,日々開発される多様なPharma Techの恩恵を最大化して,先に示した目的を達成できるかどうかは,それを使う側の薬剤師にもある程度の準備や素地となる教育が必要と考えられる.国もICTリテラシーの重要性を認識しており,内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省が連携して,デジタル社会の基礎知識である「数理・データサイエンス・AI」に関する知識・技能,新たな社会の在り方や製品・サービスをデザインするために必要な基礎力を教育することを目的に大学・高等専門学校における「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」8) を創設している.このようにあらゆる分野でICT教育は推進されているが,薬剤師のICTリテラシーやICT教育の現状に関する調査はされていない.

そこで本研究では,近い将来,薬局においてPharma Techを活用するであろう,薬学生のICT教育の現状と課題を抽出することを目的に日本国内の薬学部を有する大学のシラバスについて調査を行った.

方法

1.調査対象

全国の6年制薬学部(77大学,79学部)を有する大学のシラバス(2021年3月時点で公開されているもの)を対象とした.

尚,調査時点で各大学のホームページからシラバスにアクセス可能な大学は68大学であり,アクセスすることが出来なかった9大学については調査対象から除外した.

2.調査方法

調査対象の68大学のICT教育に関連するシラバスの抽出は,各大学のホームページから行った.尚,シラバスの検索エンジンに次の検索ワードを入力し,ICT教育のシラバスを抽出した.

[検索ワード]:IT,コンピューター,情報

3.シラバスから抽出したデータの項目

シラバスから抽出したデータの項目について示す.

〈調査項目〉

・ICT教育の科目名

・ICT教育科目の担当教員の所属

・ICT教育科目の担当教員の専門分野のバックグラウンド

・ICT教育科目の開講学年

・授業形式

・GIO・SBOs

・学習評価

結果

1.ICT教育科目の学年別の実施割合と学年ごとの平均授業数

シラバスに記載されているICT教育科目について調査した.ICT教育科目の実施については,調査可能であった68大学全てにおいて実施されていた.実施率が最も高い学年は1年次(95.6%)であった.次いで2年次(11.8%),4年次(10.3%)であった.一方で,最も低い割合であったのは5年次(1.5%)であった.

1科目目のICT教育科目の設置は,1年次(95.6%)と最も高く,1年次において最大4科目を設置している大学があった.ICT教育の2科目目の設置は,4年次が最も高く5.9%であった.

ICT教育科目の授業数については,調査可能であった68大学の平均で1.941と約2科目設置されていた.学年別での授業数については,実施率が高い学年ほど授業数も多く,最も実施率が高い1年次での授業数が最も多く1.632,次いで2年次の0.118,4年次の0.103であった.表1には示していないが,ICT教育科目に関わっている教員の1科目あたりの人数は4.3人であった.

表1 ICT教育科目の学年別の実施割合と学年ごとの平均授業数(n = 68)
授業の開講学年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 全学年
平均ICT系講義数 1.632 0.118 0.044 0.103 0.015 0.029 1.941
ICT教育科目の実施割合(%) 95.6 11.8 4.4 10.3 1.5 2.9 100.0
1科目目の実施割合(%) 95.6 2.9 1.5 0.0 0.0 0.0
2科目目の実施割合(%) 48.5 4.4 1.5 5.9 0.0 0.0
3科目目の実施割合(%) 14.7 2.9 1.5 4.4 1.5 0.0
4科目目の実施割合(%) 4.4 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5
5科目目の実施割合(%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.5

2.Pharma Techの活用(薬局におけるデジタル技術の活用)に関連した授業をシラバスに記載している割合

Pharma Techの活用に関連した授業をシラバスに記載している割合は,68大学中の5.9%(4大学)912) であった.94.1%の大学のシラバスにおいてPharma Techに関連したICT教育科目の記載は見られなかった(図1).また,Pharma Techに関連した記載のあったシラバスについて詳細な解析を行ったところ,1大学では1年次の1科目目に設置しており,その他の3大学では,4年次に2,3科目目として設置されていた(図1).

図1

Pharma Techの活用に関連した授業をシラバスに記載している割合

3.ICT教育科目の担当教員のバックグラウンドの解析

ICT教育科目に関わっている教員のバックグラウンドについて,教員の所属と研究分野から解析を行った結果について示す.ICTの研究や教育を専門としている教員(以下,ICT専門教員)がICT教育科目に関わっている大学の割合は27.9%であった.基礎薬学の研究や教育を主としている教員(以下,薬学基礎系教員)が関わっている割合が23.5%であった.実務を主に担当している教員(以下,薬学実務系教員)が関わっている割合は最も低く11.8%であった.その他として事務職員(以下,薬学事務職員)がICT教育科目に関わっている大学の割合が最も高く38.2%であった.

4.ICT教育科目の外部講師の関与に関する解析

薬学部以外の所属の教員がICT教育科目に関わっている大学の割合は55.9%で,薬学部に所属のある教員がICT教育科目に関わっている大学の割合は70.6%であった.大学に所属していない外部講師が薬学部のICT教育科目に関与している割合は14.7%であった.

5.シラバスへのSBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(情報操作系のSBOs)

情報操作系のSBOsを記載している大学の割合は,最も高いもので「マナーを守り,電子メールの送信,受信,転送などができる(技能・態度)」で,20.6%であった.次に高い割合であったのは,「インターネットに接続し,Webサイトを閲覧できる(技能)」の16.2%であった.一方で,最も記載割合が低かったのは,「電子データの特徴を知り,適切に取り扱うことができる(技能)」の7.4%であった.この情報操作系のSBOsについては,薬学基礎系教員,薬学事務職員がICT専門教員,薬学実務系教員と比較して高い割合で関与していた(図2).

図2

SBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(情報操作系のSBOs)

6.SBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(ソフトウェア系のSBOs)

ソフトウェア系のSBOsを記載している大学の割合は,最も高いもので「ワープロソフト,表計算ソフト,プレゼンテーションソフトを用いることができる(技能)」で,67.6%であった.その他のSBOsについては,約10~15%の記載率であった.ソフトウェア系のSBOsについては,全てにおいて薬学基礎系教員が関与している割合が高かった.また,ICT専門教員の関与が全くないSBOsがあった(図3).

図3

SBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(ソフトウェア系のSBOs)

7.SBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(セキュリティー・情報倫理系のSBOs)

セキュリティー・情報倫理系のSBOsを記載している大学の割合は,最も高いもので「情報倫理,セキュリティーに関する情報を収集することができる(技能)」の50.0%であった.次に「ネットワークセキュリティーについて概説できる」の22.1%であった.このセキュリティー・情報倫理系のSBOsにおいても薬学基礎系教員の関与の割合が高かったが,ICT専門教員も高い割合で関わっていた(図4).

図4

SBOsの記載割合とバックグラウンド別に分類したSBOsの担当教員の割合(セキュリティー・情報倫理系のSBOs)

考察

薬剤師は予防から治療,さらには在宅医療へと活躍のフィールドが広がっており13),時間・物理的制約の壁,多職種とのネットワーク構築などの様々な課題解決にICTの活用が求められている13).そこで本調査では薬学生のICT教育の現状と課題を抽出することを目的として,シラバスからのICT教育科目について解析を行った.

シラバスの調査結果より,ICT教育科目の設置率は100%であり,全ての大学に設置されていた.しかし,ICT教育科目が設置されている学年の95.6%が1年次であり,入学のオリエンテーションで行われる大学内のシステムの使い方などに関連した科目の設置14,15) が多いと考えられる.これは,38.2%の大学で薬学事務職員がICT系教育科目に関わっていることからも推察される.

薬学部のシラバスからSBOsを抽出して解析した結果,情報操作系のSBOsの記載率で高い割合であったのは「マナーを守り,電子メールの送信,受信,転送などができる(技能・態度)」,「インターネットに接続し,Webサイトを閲覧できる(技能)」,「インターネットの仕組みを概説できる」であった.このSBOsは,情報収集を行う科目や実務実習,卒後の薬剤師のDI業務を行う上での基盤となるが,その記載率としては10~20%であった.また,基礎薬学系教員が関与している割合が高く,低学年での科目設置であるため,ICTの専門性を高める目的やICTの臨床応用といった観点からの科目設定ではなく,入学後の大学での学習を円滑に行うためのオリエンテーションの延長上にあるICT教育科目であることが推察された.

ソフトウェア系のSBOsの記載率については,「ワープロソフト,表計算ソフト,プレゼンテーションソフトを用いることができる(技能)」で,67.6%と約7割と全てのICT系SBOsの中で最も高い割合であった.このSBOsでも,薬学基礎系教員,薬学事務職員の関与が高い結果であった.この結果からも,薬学部のICT教育科目はICTの専門性を高める目的やICTの臨床応用に重点を置くための科目設定ではなく,入学後の大学での学習において,レポートの作成を円滑に行う,プレゼンテーションの際の資料作成を円滑に行うなどの視点に重点が置かれた科目設定であることが推察される.

セキュリティー・情報倫理系のSBOsについては,「情報倫理,セキュリティーに関する情報を収集することができる(技能)」のシラバスへの記載率が50.0%と半数の大学で記載されていた.また,このSBOsでは,薬学基礎系教員とともにICT専門教員も高い割合で関わっていた.セキュリティーといった日々進化し,専門性の高い内容については,ICT専門教員が関わっている割合が高いことが示された.しかし,その他のセキュリティー・情報倫理系のSBOsのシラバスへの記載割合は低い結果であった.これらのSBOsの記載率が低いことは,今後,SNSをベースとしたPharma Techを活用したオンライン服薬指導・支援を推進する上で,教育上の課題16) のあることが示された.既にオンライン服薬指導は実施されており,離島・へき地においても活用されているが,電子機器の使用に不慣れな高齢者への介入の難しさや薬の輸送方法などに課題のあることが報告されている7).したがって,特に「ネットワークにおける個人情報の取り扱いに配慮する.(態度)」,「ソーシャルネットワークサービス(SNS)の種類と特徴,留意すべき点について説明できる」のSBOsのシラバスへの記載率が低いことは問題であり,実務実習や就職先におけるICT活用を見越した教育を実施する必要があると考える.

シラバス上ではICT教育科目は全ての大学で実施されており,先人たちの先見の明が示されていた.しかし,現状ではその実施学年は1年次が殆どであった.また,その内容としては,大学で学習を行う上で必要なインターネットのアクセスの方法やワープロソフト,表計算ソフトの使い方にとどまっており,これらはICT教育の課題のひとつであると考える.また,ICT教育科目に関わっている教員は薬学基礎系教員や薬学事務職員の割合が高く,ICTの専門性や臨床応用に重点を置いた科目ではないと考えられた.

現在,COVID-19のパンデミックもあり,電子お薬手帳,処方せん送信,オンライン服薬指導,服用期間中のフォローアップなどが活用されるようになってきた6,7).そのため,薬剤師のコミュニケーションのチャネルは増え,その特徴や注意点についても理解する必要がある.特に薬剤師側だけではなく,患者にとっての使いやすさなどを考慮した,アプリケーションやデバイスの選択についても意識する必要が出てきていると考える.また,PHR(Personal Health Record)を活用した医療ICTの活用については目前に迫っている.さらに,2020年12月1日には,「CureApp SCニコチン依存症治療アプリ及びCO(一酸化炭素)チェッカー」が保険収載され,治療用アプリが日本で初めて保険適用となった17).こうした流れに対応していくには,Pharma Techの活用に重点を置いた授業が必要であり,そのシラバスへの記載率5.9%は低いと言わざるを得ない.そのため4年次,6年次でのICT教育科目の充実が求められる.尚,シラバスへ記載されていたPharma Techに関連する記載は,テレビ電話を用いた遠隔服薬指導のシミュレーションや薬局で使われている電子薬歴等の患者情報システムの地域医療への応用に関するものであった912)

「AI戦略2019」18) では,数理・データサイエンス・AIに関する想定される人材レベルを上からエキスパートレベル,応用基礎レベル,リテラシーレベルの3段階に設定している.リテラシーレベルは,薬学部の1年次に設定されている入学オリエンテーション,インターネット・ソフトウェア・セキュリティー系のレベルと考えられる.そして,人材レベルの応用基礎に該当するのが,Pharma Techの活用に代表される実際の医療におけるICTの活用であると考えられる.シラバスからも1科目目のICT教育科目の95.6%は1年次に設置されていた(表1).また,Pharma Techの活用に関連する記載は概ね4年次に実施される2,3科目目であることが明らかとなった(図1).このことから,「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」8) の中に示されている「あるべき姿」を意識した科目の設定ができている大学もあった.また,ICT教育科目に関わっている教員数も1大学平均で4.3人であり,平均約2科目に対しての人数であるため人的資源が割かれていると考えられる.しかし,実務実習の始まる前の学年である4年次でのICT教育科目の設置率は10.3%,5年次は実務実習を行っているので科目の設置率が低いのは当然であるが,実務実習終了後のアドバンス教育が行われる6年次でのICT教育の設置率は2.9%と低い割合であった.この結果は,Pharma Techの活用に関連した授業をシラバスに記載している大学の割合が5.9%と低かったことにも繋がっていると考えられる.また,薬学実務系教員のICT教育科目への関与率は他のICT専門教員,薬学基礎系教員,薬学事務職員の関与が約30~40%であったのに比較すると11.8%と低い割合であった.すなわち,臨床において実際にPharma Techを使用していた薬学実務系教員のICT教育への関与が低いこともPharma Techの活用に関連した授業内容のシラバスへの記載割合が低い要因のひとつとして考えられる.

Pharma TechのようなICTを活用した製品は日々進化し,その種類も増えており,最新のPharma Techを実際に利活用している薬剤師やPharma Techを提供しているICTベンダーの技術者と連携した教育の実施が重要と考えられる.そのことは,大学に所属していない外部講師が薬学部のICT教育科目に関与している割合は14.7%であったことからも言える.

薬学教育における学術研究の側面からPharma Techの利活用による医療アウトカムの増大,医療サービスの向上による患者満足度の向上,患者・薬剤師の利便性の向上,業務効率化,薬局経営の改善におけるエビデンスを構築していくことも重要であると考える.例えば,次のような研究課題が考えられる.

①処方箋送信システムによる調剤の待ち時間の減少や患者満足度の向上

②SNSを使った服用期間中のフォローアップによるプレアボイドの減少や治療のドロップアウトの減少19)

③タッチパネルデバイスを用いた電子薬歴による業務効率化や服薬指導の充実20)

④レセプトデータや薬歴データを活用したDX(Digital Transformation)による患者受診行動やアドヒアランスまたは治療効果の傾向分析

このような研究を通じてPharma Techの有効性や活用方法,さらにはシステムやアプリケーションの改良における知見が得られ,現場でのICT化・デジタル化の後押しになると思われる.大学教育の中で,Pharma Techの利活用によるエビデンスを薬学生が意識することによって,治療効果やQOLの向上に寄与できる効果的な Pharma Techの選択が可能になると考える.現在,「薬学教育モデル・コアカリキュラム」の改訂時期が迫っている.本調査にて示されたICT教育科目の課題に対して活発な議論がなされ,Pharma Techを活用できる薬剤師を育成できるカリキュラムへと改訂されることを期待する.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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