Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Special Topics | Challenges and prospects for clinical education required for the revised model core curriculum
Thinking about clinical education of “cancer/palliative care” with universities, hospitals, pharmacies, and drug students:
Through practical training that is conscious of active learning, Foster awareness as a medical person
Toshiyasu Tsujii
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2022 Volume 6 Article ID: 2022-012

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抄録

学習者が自ら答えを求める学習を “アクティブラーニング” という.アクティブラーニングを意識した臨床実習を行うには,学生のモチベーションを高めるような導きが必要である.「どんな薬剤師になりたい?」「一人の医療人として生涯勉強する覚悟は?」「地域を支えるとは?」「今自分に出来る事は?」といった実習生の主体性に働きかけることが重要である.公立豊岡病院組合立病院における薬学実務実習では,多くのがん患者さんと話をする機会を設定し,アクティブラーニングを取り入れた臨床実習を行っている.がんと診断されて間もない方や抗がん剤治療中の方,在宅療養に移行した方,看取りが近い方から実際にお話を聞く場面をなるべく多く設定し,患者さんの生の声を聞きます.薬の効果や副作用,不安に感じていること,薬剤師への期待などについて伝えていただく.実習期間中には,今医療の現場で起きていることと,自分が薬学部で学んでいることとの “連続性” を常に感じるように実習生に問いかけている.大学で学んだ内容を基軸におき,臨床で遭遇する新しい知識や技術を能動的に吸収し,次々に現れる問題を解決する能力とその習慣を早くから身につけることは,医療人としての自覚を養うことにも繋がる.大学・病院・薬局・薬学生が,目指す教育指標を共有し協働して進めていくことで,高い資質をもった次世代薬剤師を育成することができると私は考えている.

Abstract

“Active learning” is a process in which learners seek their own answers. To perform clinical training based on active learning, we need guidance to motivate the trainees. It is important to work on trainees’ independence by putting forth questions such as: “What kind of pharmacist do you want to be?” “What are you prepared to study for a lifetime as a medical professional?” “How do you plan to support the community?” “What can you do now?” In the pharmacy practice at the Toyooka Public Hospital Association, we have created opportunities to talk with many cancer patients. We have also conducted clinical training that incorporated active learning. We will hear from people who have just been diagnosed with cancer, are on anti-cancer drug treatment, have switched to homecare, and are close to the caregiver. During the training period, I will explain what is happening in the field and how I felt while studying at the university. Based on what I learned at the university, it is important to acquire the abilities and habits to solve problems from an early stage by actively incorporating new knowledge and skills. This will lead to the development of awareness as a medical professional. It is important for universities, hospitals, pharmacies, and pharmacy students to share educational indicators and work on them. I believe that by incorporating active learning process, we can give high quality training to next-generation pharmacists.

はじめに

教師が言うことをただ暗記するだけの教育を「パッシブラーニング(受動学習)」と呼ぶ.一方,学習者が自ら答えを求める学習を「アクティブラーニング(能動学習・探求学習)」と呼ぶ.答えを丸暗記するよりも,自身で正解を探すプロセスを踏んで検討した方が学習効果は高くなることが報告されている1)

これは,医療の世界において大変重要な考え方である.指導者が「正解」を与えるだけの組織では,未曾有の変化がもたらされるWith/Afterのコロナ時代を生き残ることは困難です.医療専門職としての倫理観の涵養と自律の確立,プライマリケアへの関与,病棟薬剤師配置,薬学6年制学部教育,専門薬剤師制度,薬剤師の地域偏在など,我々薬剤師を取り巻く環境は目まぐるしく変化している.激動の時代に,これらの変化をチャンスに変えられる「アクティブラーナー」の存在が必要である.アクティブラーナーとは,「学び続けることを幹に持つ,未知な問題や状況にも果敢に挑戦するスピリットと行動力を備えた人」のことを指す.アクティブラーニングでは,そうした人材を育成し,組織全体を能動的に学びあえる環境にする,さらにはこれまでにない新たな業務を開発し,世の中に新しいムーブメントを引き起こしていくことを目指す学習体系である2).アクティブラーニングを意識した臨床実習を行うには,学生のモチベーションを高めることが重要である.私は「どんな薬剤師になりたい?」「一人の医療人として生涯勉強する覚悟は?」「地域を支えるとは?」「今自分に出来る事は?」といった問いかけを,実習生の主体性を信じて常に投げかけるように心がけている.

本誌シンポジウムでは,高い資質をもった次世代薬剤師を養成するにはどのような薬学教育が必要となってくるのか?皆様と議論したい.

なお,本誌に使用した訪問薬剤指導・カンファレンスの写真については学術雑誌への使用について同意を得たものを使用している.

成果基盤型教育とEarly Exposure(早期体験実習)

薬剤師に求められる薬学的知識は増え続けており,薬学部での卒前教育で必要な知識を網羅することはもはや現実的ではない.これまで講義中心の受動的な学習を見直す動きが徐々に進んでいる3)

今までの薬学教育は,『何を教えるか』を設定し,定期試験等によって『何を覚えているか』を評価する教育であった.成果基盤型教育では,『どういう薬剤師を育てるか』というアウトカム(将来の薬剤師像)を設定し,その目標を達成できるような教育を設計し,学生による主体的な学習を支援する.学生のモチベーションを高めるためには,『こんな薬剤師になりたい』というアウトカムを設定することが重要である.学習に対する主体性は,言われてできるようなものではなく,学習者の動機に適切に働きかけることによって,徐々に高まっていくものである.新しい知識や技術を能動的に吸収し,次々に現れる問題を解決する能力とその習慣を早くから身につけることは,医療人としての自覚を養うことにも繋がる.しかし,これまでの大学入試では「与えられた問題で高得点を取る」ことが目的とされており,それを突破するために受験勉強に邁進してきた学生が,薬学部に入った途端に「目指す薬剤師像」を意識し,主体的に学ぶように言われても,なかなか難しいのではないか?学習に対する主体性は,言われてできるようなものではなく,学習者の動機に適切に働きかけることによって,徐々に高まっていくものである.

私は,アウトカムを意識するための手段の一つとして,「Early Exposure(早期体験実習)」が一つの解決策になると考えている.

地域医療における病院薬剤師の役割(図1)

公立豊岡病院組合は,北兵庫の豊岡地区に位置している.兵庫県北部の面積は県全域の4分の1(東京都と同じ面積)を占めているが,その人口は,県全体の約4%(8万人)にとどまり,人口密度は県下で最も低い地域である.居住地域は,山林に囲まれた地域に,広く分布しており,医療サービスを展開するには非効率な地域である.高齢化率(65歳以上・2022年)は34.5%と全国平均を超えており,40%を超える地域もある.少子化・高齢化・医療資源不足が顕著ないわゆる “過疎地” である.地域に医療施設が少ないため,公的病院がその治療の中心的な役割を担っている.近隣に医療施設が少ないために,周産期医療,小児医療,手術,がん化学療法,救命医療,慢性期医療,看取り,在宅医療など多くの疾患を診る必要がある.地域完結型の切れ目のない医療を展開する必要があることが特色である.特に,がん治療を取り巻く当地域の問題点としては,先導的な専門医が居ない,血液内科医が常勤でない,緩和ケア専門医が居ない,高齢者が多い,独居の方が多い,医療機関が少ない,セカンドオピニオン受診施設が遠方であるなどが挙げられる.

過疎化が進んだ当地方においても,高度な医療を必要としている患者さんやそのご家族は多く在住されている.私たちは,公立病院のスタッフとして,“地域を病院にする” という合言葉の元,日々地域の患者さんと向き合ってきた.病院医師・在宅医師をはじめ,訪問看護師や介護ヘルパー,保険薬局薬剤師とも連携し,患者さんの在宅療養を支援する.患者さんはもちろんのこと,地域医療に携わる各職種が安心して信頼しあえる関係を構築する,つまり「自宅は病院のベッド,道路は病院の廊下,電話はナースコール」のようなイメージを持つことが肝要である.

私は,地域医療は人づくりから始まると考えている.当院での薬学実務実習では,主に里帰り実習を励行している.里帰り実習では,生まれ育った故郷を守る一人の医療人としての責任ややりがいを実習生に丁寧に伝え,自身もその一員として活躍できる可能性について説明している.

図1

地域医療のイメージ

がん・緩和ケアの早期体験実習(図2)

がん・緩和ケアの早期体験実習では,薬学教育モデル・コアカリキュラム「F. 薬学臨床」の「安全で有効な薬物療法の提案とそれを実施・評価できる能力の修得」「チーム医療・地域医療への参画能力の修得」4) について深く学ぶことを意識した実習を行うことが可能である.通常の薬学実務実習より少し踏み込んだ内容について実習生に体験するよう設定する.そこでは,病院中心の入院を主軸とした医療から,在宅も含めて地域全体で患者を支える医療への転換を意識した実習を行う.がんと診断されて間もない方・抗がん剤治療中の方・在宅療養に移行した方・看取りが近い方を中心に関与する.「治癒を目的にした治療に反応しなくなった患者への関与」への体験を通して,全人的なケアの重要性を理解することをアウトカム(学習効果)に設定する.コンピテンシー(優れた行動を起こす能力)は,がん患者・スタッフから生のお話を聞き,医療人としての自覚をもつことを設定する.SBOsは,痛みや他の症状コントロール,精神的ケア,社会的,霊的な問題のケアについて,グループワークや多職種とのカンファレンス,在宅訪問,看取り後の振り返りを行う.

退院し自宅で療養する際には,「退院前合同カンファレンス」が開催される.実習生が担当していた患者さんのカンファレンスが開催された際には,実習生自身がカンファレンスでプレゼンするよう設定する.実習生によるプレゼンでは医師・看護師への情報提供書を事前に作成しておくことで,カンファレンスでは自身が考えたことをスムーズに伝えることができるように配慮している.とても緊張しており,言葉につまることもあるが,一生懸命に自身が調べたことを答えようとする姿をみることができる.

図2

実習生によるカンファレンス風景

がん化学療法における薬剤師業務を体験(図3)

実習期間中には,一人の薬剤師として抗がん剤治療に参画するような心構えで望んでいただく.実薬を使った抗がん剤調製を薬学生も行う.まずは蛍光物質を使用したミキシング練習を行い,飛散状況や秤量などを可視化して調製手技を習得してから,抗がん剤(実薬)を調製する.免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬などの数十万円する抗がん剤も実際に実習生も調製する.実薬を調製する際には,手が震える学生もいるが,真剣に向き合っている姿をみることができる.また,自身が調製した抗がん剤が点滴投与されている場面も見学し,投与中の患者さんのお話を聞き場面も設定する.

抗がん剤治療開始前には事前に調べた内容について患者さんに説明する.自身で作成したレジメン説明用紙を使用し,投与スケジュールや副作用,生活上の諸注意について説明する.治療開始前→抗がん剤治療中→抗がん剤治療後,と経時的に関わるように設定する.治療や介入の “連続性” を意識して患者さんと接することにより,自身で調べた薬剤情報の知識を固定化することが狙いである.

図3

ミキシング風景

地域の中の病院薬剤師として(図4)

病院薬剤師による訪問薬剤管理指導に薬学生も同行する.

内服確認はもちろん,バイタルサインの確認や患者さん本人やご家族からお話を聞く.帰院後は,実習生自ら取得したバイタルサインのデータなどを踏まえながら,薬剤の選択と投与方法について具体的に医師や看護師に情報提供する.また,保険薬局に宛てた情報提供書やお薬手帳なども実際に作成し,病院で行われた治療を住み慣れたご自宅においても安全に継続できるように “支援し続ける方法” について体験する.

図4

訪問風景

チーム医療を経験する(図5)

実習期間中に,緩和ケアチーム回診が開催された際には実習生も共に参加するよう設定する.症状緩和に難渋した症例などについて相談し,多職種で検討して対応する.患者さんの訴えや不安など,薬剤師のみでは対応困難な症状への対応についての対応方法についても体験する.どうすれば,痛みを取り除くことが出来るのか?家族関係は良好か?経済的な問題は?本人やご家族の望む自宅での生活を実現できているのか?など,チームで検討している様子を見学し共に考えている.実習生もチームの一員として参加する.

図5

緩和ケアチームカンファレンス風景

全人的苦痛(トータルペイン)を意識する(図6)

実習では,全人的苦痛(トータルペイン)と呼ばれる多面的に患者さんの辛さや苦しみを意識するように実習生に指導している.近代ホスピスの生みの親であるCicely Saunders先生は末期がん患者さんが経験する苦痛のことを「全人的苦痛(トータルペイン)」と呼んだ5).がん患者さんは単にがんによる痛みや食欲の低下,呼吸のつらさといった肉体の苦痛ばかりではなく,その方の人間そのもの,全人格的に苦痛を経験するというものである.Saunders先生は全人的苦痛を理解しやすくするために四つの苦痛に分類した.「痛みやだるさ,息苦しさ」などの身体的苦痛,「不安やうつ,恐れ,いらだち,怒り,孤独感」などの精神的苦痛,「仕事上の問題,人間関係,経済的な問題」などの社会的苦痛,「人生の意味,罪の恐怖」などのスピリチュアルな苦痛をさす.

この四つの苦痛についてそれぞれイメージしてみたい.“深夜,真っ暗な病室で一人ベッドの上で身体を起こしている患者さんにどうして眠れないのかを尋ねるシーン” を想像してみると.患者さんは,「お腹が張って,苦しくて……」とあなたに答えるかもしれない.これが「身体的苦痛」の表現である.また「仕事を休んで収入が途絶えるし,医療費はかかるし,家族に迷惑をかけていると思うと申し訳なくて……」と述べるかもしれない.これが,「社会的苦痛」の表現である.「暗い中,独りだと思うと怖くて,怖くて……」と声を震わせて答えるかもしれない.これは,「精神的苦痛」の表現である.「こんな病気になってしまって……人に頼らないとトイレにも行けず……治らないなら何のために生きているのだろうか……」とため息をついてあなたに答えるかもしれない.これは,「スピリチュアルペイン」の表現として鑑別することができる.

それぞれの苦痛に対するアプローチが異なることについて実習生に説明し,“薬剤師が中心となって対応すべきこと”,“多職種と協働しながら対応すべきこと” ,“薬剤師のみでは解決不可能なこと” を意識することで,広く患者さんを捉える目線を育むように導く.

がん患者さんの痛みや苦悩は多彩で,薬剤の追加だけでは対処困難である.様々な角度で患者さんを捉え,患者さんに沿ったオンデマンドな対処を行うことが重要であることを実習生に何度も説明している.

図6

トータルペインとは

デスカンファレンスへの参加(図7)

終末期の患者さんは,実習期間中に亡くなられることもしばしばである.その際には,デスカンファレンスが開催される.デスカンファレンスは,亡くなられた患者さんに対して行われるもので,今後より良いケアを患者さんに提供していくために,意見を交換することで問題点や改善点をあきらかにして,次に活かすためのものである6)

「もっと良い薬を提案できればよかった.」「あの時の苦しそうな患者さんの顔が印象的だった」「もっと勉強して,苦しい症状を緩和してあげたい」など,亡くなられた患者さんを偲ぶことで,次の症例への意欲や覚悟を育む.

また,患者さんの死と向き合うことで,実習生が精神的に落ち込んでしまうこともある.感情の整理をする場としてデスカンファレンスを設けることで,実習生や医療従事者自身の心のケアにも繋がるため,できるだけ参加するように設定している.

図7

デスカンファレンス風景

乳がん闘病中の当院スタッフによる体験談を聴く(図8)

実習中には,乳がん闘病中のスタッフによる講義の時間を設定する.6年前に乳がんと診断され,乳房切除と術後の抗がん剤としてドセタキセル・エンドキサン療法を4コース施行した経験をもつ看護師さんから,そのときの体験を実習生にお話していただく.「このとき吐き気が強かったけど,担当の薬剤師さんが薬を提案してくれて治まったの.うれしかった.薬ってすごい力をもっているの.」など当時の様子を記載した日誌などを実際に見せていただきながら,薬の効果や副作用,そのときの不安な様子,対応した薬剤師への感謝などを伝えていただく.

“患者として” “医療従事者として”,薬剤師の役割や責任について実習生に話していただく場面を設定している.

図8

体験談風景

学生による症例報告(実習最終日に開催)

実習最終日には,学生による症例報告をするように設定する.同じ患者さんの様子を経時的にまとめ,介入内容とプロセス,成功談・失敗談について実習生自身の言葉で語る.同じ患者さんを経時的に観察することで,「同じ内容の継続処方でも,毎回同じではない」ことに気付くように導いている.つまり,毎回丁寧に確認することで相手の変化に気付くことを体験し,次に「何を準備して患者さんのところに伺うのか?」について考える.医薬品という “物質” を,実際の個々の患者のために調製し,投与する姿を見学し,その薬物治療に責任を持つことを体験する重要性について深く考えるように導くことが重要である.

患者さんの生命や生活に直接関わる緊張感と責任感は,臨床現場でしか体験できない.

“薬剤師として求められる10の基本的な資質”を体験する(図9)

改定モデルコアカリキュラムでは,「薬剤師として求められる10の基本的な資質」が設定され,将来の薬剤師像について記載されている4,7).「がん・緩和ケア」に関する薬学実務実習では,「薬剤・療養先の検討から,患者さん本人の希望を意識した選択」を意識することで,“患者・生活者本位の視点,薬物療法における実践的能力,基礎的な科学力” を学ぶことができる.「輸液方法や鎮静の適応から,生活と薬を結ぶ思考」を意識することで,“薬物療法における実践的能力,基礎的な科学力” を学ぶことができる.「多職種連携で支える在宅医療」を意識することで,“チーム医療への参画,地域の保健・医療における実践能力” を学ぶことができる.「人は必ず亡くなるということ」を意識することで,“薬剤師としての心構え,自己研鑽,コミュニケーション能力” を学ぶことができる.

「薬剤師として求められる10の基本的な資質」の多くを,“実際の症例” を通して深く学ぶことが可能である.

図9

10の基本的な資質

薬学実習生も力になることができる(図10)

「Not doing, but being(何かをするということではなく,ただそばにいるということ)」は,近代ホスピスの生みの親 Cicely Saunders先生のお言葉である8).実習期間中にはこのお言葉を実習生に紹介するようにしている.医療というと,困っている人に何かをやらなければいけないと思いがちだが,困っている人のそばに居続けるだけでも,その人は安心するといった内容である.知識や経験の乏しい薬学実習生も,悩み苦しみながら病と闘っている患者さんの力になることができることを説明している.一人の医療人として,人として,困っている人を支える気持ちが重要と私は考える.

図10

Not doing, but being

実習生の反応

実習終了後に寄せられた感想では,学生自身が医療を支える一員として自覚し,今後の学びの動機と目標が明確になったことを確認することができた.

・医療従事者としていかにあるべきかを考えた実習だった.

・医療従事者として一人の人間として死生観を持つことが重要と感じました.

・他の医療・介護従事者との深い連携を行うことが必要と感じた.

・患者さんのご家族から「痛みを感じずに亡くなることができてよかった」と言われたときは嬉しかった.

・痛みを感じることなく人生を全うする…….薬剤師もそのお手伝いができることにやりがいを感じた.

・一人一人を見て寄り添うことの重要性が良く分かった.

・専門性を高めつつ,常に人に優しくできる人間になろうと思った.

・薬剤師の「専門性」と「やりがい」に気付くことができた.

質の高い薬剤師業務を展開していくためにどのような薬学教育が必要なのか??

「薬剤師のやりがいは?」「責任とは??」「地域の中の薬剤師とは??」「安心して自分の家族を託せる病院・薬局とは??」このような問を実習期間中に何度も実習生に問いかけている.

より質の高い薬剤師業務を展開していくためにどのような薬学教育が必要となってくるのか??

それは,新しい知識や技術を能動的に吸収し,次々に現れる新しい問題を解決する能力と,その習慣を早くから身につけることが重要であると私は考えている.

つまり,学生のモチベーションを高め,『医療者の一員としての自覚』に自ら気づき,学生自身が主体的に学習することを目指すことが重要である.学生のうちから,様々な形で医療の現場に出て,実際に働いている薬剤師の姿を見たり,自分たちが将来薬剤師としてかかわる患者さんたちが日ごろどのように暮らしているのかについて知ることが重要である.また,今医療の現場で起きていることと,自分が薬学部で学んでいることとの “連続性” を感じることが,学習者のモチベーションに繋がる.この学習の主体性を意識するためには,薬学実務実習の役割は大変大きいと私は考えている.

臨床教育では,次世代を担う薬剤師を育成する責務が,“大学” と “現場” の薬剤師の双方にあることをお互いが理解することも重要である.

薬学実務実習では,単に作業を教えるのではなく,その業務の “意義” を理解することがポイントである.集合研修や講義で教えられることは大学で学び,薬学実務実習では,医療現場でしか学べない内容を実習で “体験” しながら身につけることを常に意識することが重要ではないか?

国家試験合格は単なる “通過点” の一つである.その向こう側に続く実習生自身の “道” を自分の足で創りあげて欲しい.一歩踏み出す若い薬剤師の「勇気」と「やる気」を応援している.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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