Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Review Article
The new normal era where all pharmacists are trained in basic life support (BLS)
Yoko UrashimaTaku IwamiAtsushi KinoshitaKeiji AkatsukaTokio Obata
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2022 Volume 6 Article ID: 2022-013

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抄録

薬学教育モデル・コアカリキュラムでは,「一次救命処置(心肺蘇生,外傷対応等(BLS: Basic Life Support)を説明し,シミュレータを用いて実施できる」ことが求められている.BLS講習として,近年では簡便かつ短時間で,実践的なトレーニングが可能であるPUSHコースが知られており,薬学教育での導入に適していると考えられる.本総説では,「すべての薬剤師がBLSを身に付けたニューノーマル時代に」と題してシンポジウムを行い,心臓突然死やBLSに関する基本的な知識および技能について共有した上で,大学における薬学生へのPUSHコースの実践例と受講者の意識変化,地域の薬局が関与したBLSの症例,および薬剤師に今後求められる役割について議論した.本総説では,その内容について紹介する.

Abstract

“Model Core Curriculum for Pharmacy Education—2015 version—” requires student pharmacists to describe basic life support procedures (cardiopulmonary resuscitation, trauma life support, etc. (BLS)) and to be able to perform it using a simulator. The PUSH course has attracted attention in recent years as a hands-on BLS training with little difficulty in a short time, and is therefore considered appropriate for use with introductory pharmacy education. In this review, we will introduce the practical examples of PUSH course for pharmacy students and change in their attitudes before and after the course as well as some cases of BLS involving community pharmacy, with understanding of the essential basic knowledge and skills in sudden cardiac death and BLS, and also discuss what is the role pharmacists would play in the future.

本シンポジウム開催の経緯(小畑友紀雄・木下 淳)

現在,わが国の心臓突然死は年間7万人といわれている1).一般に,心停止者の救命率は電気ショックが1分遅れる毎に10%低下するが,わが国における救急車の現場到着は通報から平均8.9分である2).したがって,救命率の向上のためには,救急車が到着する前に一次救命処置(BLS: Basic Life Support)を開始することが重要であり,そのためには「そばにいる人(バイスタンダー)」による速やかなBLSの実施が必要不可欠である.また,薬剤師は,地域の薬局やドラッグストア,病院など,様々な場所で救命の現場に関わる可能性がある医療者であり,BLSを身に付けていることが求められる.このようなBLSの重要性を考慮し,薬学生が大学で学ぶ「薬学教育モデル・コアカリキュラム」には,「一次救命処置(心肺蘇生,外傷対応等)を説明し,シミュレータを用いて実施できる」とあり3),薬学生に対してBLSの実施を目指した講習の受講を求めている.

BLSを学ぶ方法として,これまでは消防署等の講習会が一般的であり,各地で開催されることによって受講者も増加している.しかしながら,この講習会は3時間~半日を要するのに加えて,数人に1台の蘇生訓練人形を使用するために1人当たりの実技時間が短く,一度に開催できる人数が限られる.また,講習会で用いる機材には高額なものが多い.その一方で,近年普及してきているBLS講習のひとつとして,NPO法人大阪ライフサポート協会が考案したPUSHコースがある.従来の消防署で行う講習よりも短時間で実施できる上に,1人1台の簡易型心肺蘇生トレーニングツール「あっぱくんライト®」(アレクソン社)等を用いることで実践的かつ効率的なトレーニングが可能であり,大学の講義時間内で実施する上で時間的にも導入しやすく,高い効果を見込むことができる.

そこで我々は,薬剤師の基本的技能としてBLSを身に付けることが求められる社会的背景およびPUSHコースの実践例について討議を行うため,2021年8月21日,第6回日本薬学教育学会大会にてシンポジウムを開催した.まず初めに,心臓突然死の特徴,PUSHコースを普及させるためのPUSHプロジェクト,および医師の視点から薬学教育に期待することについて,京都大学環境安全保健機構の石見拓先生より,大学薬学部におけるPUSHコースの実践例として,大阪大谷大学および兵庫医療大学での事例について紹介した.また,薬剤師は急変に対応できることが市民から求められているという現状について,NPO法人大阪ライフサポート協会/枚方寝屋川消防組合の救急救命士である赤塚敬司先生より講演後,実際に参加者にオンラインでPUSHコースの一部を体験していただいた.本総説ではその内容について報告する.

救命処置の体系的な普及―救いうる命を救える社会へ 薬剤師の皆様への期待―(石見 拓)

1. 心臓突然死の特徴

平成30年度の消防庁救急蘇生統計によると,年間78,302人が心原性病院外心停止により死亡していると報告されている 4).これは,阪神淡路大震災の死者数(関連死を含む)である6,434人や,東日本大震災の死者数(2019/3/8現在)の15,897人を大きく上回る数値である.このことから,心臓突然死は日常的な災害であり,いつでも,どこでも,誰にでも起こりうることが示されている.また,医療機関,薬局および学校などにおいては,薬剤師が突然の心停止や,それに準ずる状況に遭遇する可能性は一般の方々よりも高いことが示唆され,これら医療機関にて実務を行う薬剤師となるためには,薬学教育において心臓突然死を防ぐためのBLSを修得していることが必須である.

心臓突然死の原因の多くは,心室細動と呼ばれる重篤な不整脈であり,心臓の小刻みな痙攣によって全身に血液を送り出すことが不可能になる.これによって数秒で意識を失い,数分で脳をはじめとした全身の細胞機能が停止する.このため,胸骨圧迫(心臓マッサージ)により胸骨と脊椎の間に挟まれた心臓を圧迫し,血液を循環させる必要がある.また,自動体外式除細動器(AED)は,心室細動を止めるための有効な手段であり,本邦では市民が使用可能なAEDが,多くの薬局をはじめ,駅,スポーツ施設,学校,公共機関などを中心に約600,000台設置されている.しかしながら,AEDがあるのみでは不十分であり,このAEDをすみやかに用いて電気ショックを実行することが重要である.AEDが有効である心室細動は,多くの場合5,6分で消失するとされているため 5),バイスタンダーによる5分以内のAEDの使用が救命率の向上に大きく影響する.心肺蘇生とAEDによる電気ショックを併用した場合,救命率は約4倍向上すると報告されていることから6),バイスタンダーの迅速な対応が必要不可欠であることが示される.

胸骨圧迫を行うか否かの判断基準として,倒れた人が普段通りの呼吸をしているかどうかがある.しかしながら,普段通りの呼吸であるか否かを判断することは緊急の場面においては困難である.また,心停止直後には,あごをしゃくりあげるような途切れ途切れの異常な呼吸である「死戦期呼吸」が頻繁に見られるため,呼吸をしているという誤った判断を引き起こし,救命が行われなかった事例が存在する.この事例を基に,倒れた人が普段通りの呼吸をしているかどうかがわからない場合にも心肺蘇生を実施することを明記したフローチャートが作成され7),JRC蘇生ガイドライン2015以降のガイドラインにおいても明記されている(図18)

図1

JRC蘇生ガイドライン2020に基づいた心肺蘇生の流れ(JRC蘇生ガイドライン2020より抜粋)

2. PUSHプロジェクト:救命処置の普及と実践

救命処置を普及させるためには,講習会の内容が実践的であり,かつ実施しやすい方法であることが望ましい.そこでNPO法人大阪ライフサポート協会では,心肺蘇生の中でもっとも重要な胸骨圧迫とAEDの使い方を短時間で多くの方に学んでもらうことを目的とした「PUSHプロジェクト」を展開しており,PUSHコースが考案された.これは,従来の消防署や日本赤十字社のBLS講習会が3時間~半日を要するのに対し,50分と短時間で実施できるBLS講習会である.また,指導用DVDに沿って講習を進めるものであることから,講習の質を担保することができ,多人数の指導も可能である.さらに,1人1台の簡易型心肺蘇生トレーニングツール「あっぱくんライト®」(アレクソン社)等を用いることから,1人当たりの実際にツールを使用して胸骨圧迫を行っている時間が長く,従来のコースと比べて1年後に蘇生スキルが持続している割合が高いことが報告されている9).また,PUSHコースでは,胸骨圧迫が心肺蘇生の要であることも強調している.心臓が原因の目撃された病院外心停止からの社会復帰率は,心肺蘇生が行われなかった場合と比較して,胸骨圧迫のみの心肺蘇生が行われると1.7倍高く,人工呼吸付きの心肺蘇生が行われた場合と同等の効果があったとのエビデンスに基づいて作成されている10).胸骨圧迫のみに焦点を当てた内容とすることで手技が簡単で覚えやすく,普及しやすい内容となっている.さらに,人工呼吸を同時に行った心肺蘇生では,人工呼吸時に心肺蘇生が中断することから血圧低下を引き起こすのに対し,胸骨圧迫のみ実施した場合には血圧が維持されることが明らかになっており11),胸骨圧迫は絶え間なく行うことが必須であることもPUSHコース内にて強調されている.

3. 薬剤師・薬学教育への期待

薬剤師は,地域の薬局やドラッグストア,病院など,様々な場所で業務を行っていることから,医療機関外での突然の心停止の遭遇から医療機関への搬送後まで,幅広く救命に関わることのできる職種であり,救命率の向上に大きく貢献することが期待される.したがって,薬剤師には医療職としての基本的な救命処置の修得と実践が強く求められる.そのために,薬剤師が業務に従事する施設や薬学教育の場における危機管理体制の確立,ならびに救命処置訓練の実践が必要となる.さらには,薬学教育の中でのBLS教育の実践を推進し,医療者として救命の意識や技術の普及および評価を担っていくことが大いに期待される.

薬学教育におけるPUSHコースの実施報告(浦嶋庸子・木下 淳)

1. 大阪大谷大学薬学部におけるPUSHコースの実施報告

大阪大谷大学では,2021年度より1年次生の「早期臨床体験」の中で一次救命講習(PUSHコース)を実施し,入学後すみやかに医療人となる自覚を身に付けるためのカリキュラムを実施した.また,受講した111名の学生に対して受講の前後に無記名のアンケートを実施し,PUSHコース受講による意識変化について解析した.

「これまでに心肺蘇生法やAEDの使い方の講習会を受けたことがあるかどうか」については,「今回が初めての受講である」が全体の約28%であった.講習会の満足度については,ほとんどの参加者が高く回答した.「心肺蘇生法やAEDの使い方を定期的に学びたいと思うか?」という問いに対する回答については,「そう思う」と回答した割合が受講後に著明に上昇した.また,受講後には「今後,薬剤師という医療人となる上で必要な項目だと思った」など,医療人としての自覚を持った回答がみられ,111名中107名が前向きな意見を記載した.さらに,過去にPUSHコース以外での一次救命講習を受講した複数の学生において,「何度も受講したが,忘れていた.思い出すことができて良かった」という回答が得られ,定期的に受講することの重要性が示された.なお,アンケートの詳細な結果については,別途報告する予定であるため,本稿では割愛する.

大阪大谷大学におけるPUSHコースの実施は,基本的なBLS技能の修得に加えて,医療人となることへの意識づけや,救命に関するモチベーションの向上に繋がったことが示された.今回の成果を受け,今後の1年生へのPUSHコース実施および4年次での再度実施を検討している.

2. 兵庫医療大学薬学部におけるPUSHコースの実施報告

兵庫医療大学における特色あるカリキュラムとして,長期密着型ゼミナールを実施している.2年次生から6年次生を対象とした学年縦断型自由科目であり,各教員が様々なテーマのゼミを開講している.学生たちは経験学習を通じて社会人基礎力を学ぶことができる場として活用されており,その一つとして,一次救急・災害医療に関するゼミを開講し,PUSHコースを実践している.また,4年次前期の新・実務実習事前学習IIでは,全員必修としてPUSHコースを実施している.いずれの科目においても,参加者に対しては,PUSHコースの実施前後でアンケートをとり,薬剤師のBLSへの関わり方,同僚,他職種,地域住民への教育に関する意識変化について調査することで,より効果的なBLSについての教育方法を模索している.

市民が期待する薬剤師とは―急変に対応できる薬剤師になろう―(赤塚敬司)

1. はじめに

枚方寝屋川消防組合は大阪の北部にあり,管内人口は約630,000人で,令和2年中には年間約35,000件の救急出動があった.過去5年間に「薬局・ドラッグストア」に救急車が出動した事例を検証し,「薬局・ドラッグストア」で発症した疾病や外傷に対して薬剤師として日頃から持つべき心構えや,応急処置を含めた対応の方法を考察する.

2. 方法

枚方寝屋川消防組合管内で2016年から2020年の5年間の救急活動記録から「薬局・ドラッグストア」に救急出動した事例を抽出した.事例内容を個別に分析し内因性・外因性の発生状況やそれぞれの症度割合,救急要請内容を調べた.

3. 結果

調査期間中に薬局・ドラッグストアに救急出動した件数は189件あり,医療機関に搬送するに至った事例は173件であった.年齢は0歳から94歳であり,平均年齢は57.4 ± 25.2歳,男女比は男性53%,女性は47%であった.救急要請の理由を主症状に従って内因性と外因性に分けると,図2のように内因性が65%,外因性が35%であった.また内因性では,入院が必要な中等症・重症が併せて22%であり,外因性では中等症・重症併せて8%であった.

図2

2016–2020年における救急要請の件数,理由および要因

内因性の原因をみると図3のように様々であり,特に,意識消失・けいれん・めまい・意識レベルの問題・胸痛・不整脈・呼吸苦などは心停止に移行する可能性があり注意する必要がある.症状が発生した場所を店舗内か店舗外で分けると,店舗内での発生は81件と全体の72%を占めている.その主症状は様々であるが,これは,薬局・ドラッグストアを訪れる人は基礎疾患を有している方が多いことからもうなずける.ここで重要なことは,店舗外で発症したケースのうち約55%が例えば,歩行中や仕事中にめまい・ふらつき・半身まひ・胸痛・動悸・両足のしびれといった急な身体の不調を訴え,薬剤師がいる店舗に自らあるいは第三者が助けを求め駆け付けているケースがあることである.また,かかりつけ薬局であることから薬剤師に電話相談し,救急要請に至ったケースもある.このようなことからも市民が薬剤師を頼りにしていることがわかる.

図3

救急要請の要因別の症状と発生場所

外因性の原因は挫傷,挫創が圧倒的であり,骨折に至ったケースもあった(図3).外傷を負った場所を店舗内と店舗外で分けると,外因性の場合店舗内での発生は1割にも満たず圧倒的に店舗外が多い.ここでも路上で転倒したり,交通事故で負傷し薬局内に駆け付けるケースが多い.

次に,具体的な症例から,薬剤師としてどのような行動を起こす必要があるのかを検討する.

事例1:80歳の男性が病院の循環器科を受診後,処方薬を受け取りに行った際,薬局内で突然胸の苦しさが出現したものである.救急隊到着時,心電図モニターを装着すると不整脈所見がみられた.薬局やドラッグストアを訪れる方は,何らかの基礎疾患を有している方が多いことから,いつ急変するか分からない.この例では薬剤師が直ちに119番通報している.さらに救急車到着まで観察することは必須である.もし,心停止に移行した場合はすぐさま胸骨圧迫をしなければならない.

事例2:84歳の女性が処方箋を持って薬局に提出し,夕方に薬局の方が処方薬を傷病者宅まで届けに行った際,部屋の中で仰向けに倒れ,呼びかけに反応がなく,痙攣をしていたため119番通報に至ったものである.救急隊到着時,痙攣は治まっていたが,意識は全く無い状態であった.この例でもすぐに119番通報されている.痙攣時には舌根沈下による気道閉塞を防ぐために気道確保をすることが必要である.やり方がわからない場合などは119番通報時に電話で対応してくれる消防署の指令課員から応急処置の方法を教えてもらうことができる.

事例3:外傷事例.救急隊到着時,傷病者はドラッグストア駐車場内に仰臥位の状態でおり,意識は無かった.いびき様の呼吸をしており,瞳孔不同で右耳からの出血と左後頭部3 cm程の血腫を認めた.高さ約70 cmのトラックの荷台で作業をしていたところ誤って後方に転落し負傷したものと推測される.このような時の応急手当の方法を知るには,外傷の応急手当を含む救命講習を受講することがよいと思われる.

事例4:薬局の従業員の心停止事例である.営業時間中に,突然胸が締め付けられる痛みがあったため,本人が救急要請した.救急隊現場到着時,意識は清明で立位であった.しかし,救急車内収容後に,突然うめき声をあげて心停止に陥った.その後,救急車内にて計3回の電気ショックを実施した.この例では,救急隊到着後車内にて心停止になったが,到着前に薬局内で心停止になっていた可能性が大いにある.その時はその場に居合わせた薬局の薬剤師や従業員が迅速に胸骨圧迫を実施し,AEDを手配する必要がある.もっと言えば,薬局にAEDがあれば迅速な電気ショックが可能となる.

以上のような店舗内での発症だけではなく,店舗外でも身体に異変を感じた場合,薬局やドラッグストアに助けを求める市民が多い.これは,薬剤師が医療従事者であり,普段から白衣を着ており,医学的なアドバイスを親切丁寧に説明し,市民にとって信頼があるからだと考えられる.

4. まとめ

薬局やドラッグストアで急変し,心停止になれば119番通報しAEDを要請し,なにより胸骨圧迫だけでもいいので実施してほしい.BLSのやり方を習得したい場合,心肺蘇生の中で一番重要である「胸骨圧迫」と「AEDの使い方」に特化した「PUSHコース」の受講を推奨する.講習時間は45分から50分と短く,楽しく参加することができ,さらに簡単な手技のため比較的記憶に残りやすいといわれている.できれば,薬剤師になる前の学生の段階でPUSHコースを受講してもらい,BLSが実践できる薬剤師になって欲しい.さらに,一歩進んでPUSHコースを開催できる指導者となり,ひとりでも多くBLSができる人を増やしていただきたい.

5. PUSHコースの一部体験

本シンポジウムの参加者約30名に対して,Zoomを用いてPUSHコースの一部を実施した.PUSHコースは通常,図4に示す通りに約50分間で実施するが,本シンポジウムでは時間の都合上「練習/体験」に当たる部分のうち,「119番とAEDの要請」,「心停止の認識」,「胸骨圧迫」,「AED」の約20分を実施した.簡易型心肺蘇生トレーニングツール「あっぱくんライト®」は,参加者が各自クッション等を用意することで代用した.参加者のマイクを常時オンの状態で実施し,講習会中にもインストラクターと参加者が共に掛け声を出すなど,参加型の講習会を実施することができた.

図4

PUSHコースの実施例(NPO法人大阪ライフサポート協会ホームページより引用)

総括

薬剤師は地域の身近な医療者であり,地域住民の健康維持増進に対して貢献することが求められる.したがって,目の前で人が倒れるような場面に遭遇した際には,医療者として率先して行動できることが期待されており,全ての薬剤師がBLSを身に付けることは社会的意義が大きいと考えられる.

本シンポジウムでは,心臓突然死の発生機序や胸骨圧迫の重要性など,BLSに関する基本的な知識や重要な点について参加者と共有することができ,大学薬学部においてPUSHコースによるBLSの教育効果が高いことが示された.また,薬局・ドラッグストアに市民が救助を求めてくる事例が多くあることから,薬剤師がBLSを身に付けていることで,このような場面で医療者としてすみやかに対応できる可能性があることが明らかになった.さらには,参加者に実際にPUSHコースの一部を体験してもらうことで,楽しく学べる講習会であると実感していただくことができた.

本シンポジウムで紹介したPUSHコースの普及を目指すPUSHプロジェクトでは,「3つのPUSH」を理念として掲げており,「胸骨圧迫におけるPUSH」「AEDのボタンを押すPUSH」「BLS実践に向けて自分自身の背中を押すPUSH」から成り立っている12).これらのBLSの実践に向けて,本シンポジウムの参加者が一歩踏み出せたことを期待すると共に,全ての薬剤師がBLSを身につけた時代の到来に向けて,今後薬学教育における益々のBLS教育の推進に努めたい.

倫理的配慮:本稿において実施したアンケート調査は,各機関における倫理審査委員会の承認を得て実施した.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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