Japanese Journal of Pharmaceutical Education
Online ISSN : 2433-4774
Print ISSN : 2432-4124
ISSN-L : 2433-4774
Practical Article
A survey on awareness of marijuana and CBD (cannabidiol) products among pharmacy students: Understanding actual conditions and text mining analysis of students’ awareness
Yukie KondoMari NunomeKikuko AmagaseRumiko Hosoki
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2022 Volume 6 Article ID: 2022-026

Details
抄録

好奇心から大麻を使用する若者が増えている.大麻や乱用薬物に関する大学生の意識調査はこれまでに実施されているが,大麻の形態が多様化する一方で,CBD(カンナビジオール)製品に関する意識調査は十分ではない.本稿では,薬学生を対象に,大麻・CBD製品に対する意識調査を実施した.その結果,大麻の違法性の認識は高かったが,CBD製品は認知が低く,漠然と大麻の類似物だと捉えられていることがわかった.また,薬学生の取るべき行動の意識を分析した結果,「正しい知識の取得と伝達」「違法薬物の乱用と勧めの拒絶」「薬学分野における積極的な学び」「薬学専門家としての薬の扱い」「大麻の危険性と医療利用の理解の深化」が抽出された.これにより,薬学部では,社会的・法的規範の観点に加え,薬物乱用防止の指導を専門性の高い授業に関連付け,学生が抱く現在から将来へのビジョンの中に指導を取り入れることが肝要であると考えられる.

Abstract

An increasing number of young people are using marijuana out of curiosity. Surveys have been conducted on university student attitudes towards marijuana and drug use. Still, there is a lack of research on awareness of cannabidiol (CBD) products as types of cannabis are increasingly more diverse. This study surveyed pharmacy students’ awareness of marijuana and CBD products. The results showed that while the understanding of marijuana’s illegality was high, recognition of CBD products was low, and the participants vaguely perceived these products as similar to marijuana. The participants identified the following actions they should take regarding marijuana and CBD products: acquiring and sharing correct information, rejecting abuse and recommendation of illegal drugs, actively learning about the pharmacy profession, handling drugs as a pharmacy professional, and understanding more about the medical uses and risks of cannabis. The results suggested that pharmacy schools must provide general guidance on drug abuse prevention through specialized content in addition to social and legal norms and incorporate it into the students’ visions of their future pharmacy profession.

緒言

日本における大麻取締法,麻薬及び向精神薬取締法,あへん法の各違反の検挙人員数は過去5年で顕著な増加傾向にあり,特に20歳未満,20歳代の若年層での増加が進んでいる1).警察庁による2020年度の大麻乱用者の実態調査を次にまとめると,20歳未満,20歳代の若者が大麻を使用するきっかけは「誘われて」による割合が高く,使用の動機は「好奇心・興味本意」の割合が高い.また,大麻を始める年齢が若くなるほど「その場の雰囲気」で使用する割合が高くなる2).危険(有害)性の認識に対して「全くない」「あまりない」との回答はすべての年齢層において70%を超えるが,特に20歳未満においてはその割合が2017年の48%から2020年では78.5%と大幅に高くなっている2).この結果から,若者は必ずしも大麻の効果を求めて使用を開始するわけではなく,周囲の誘いやその場の雰囲気に流され,有害性を認識しないまま大麻の使用を開始する事例が増えているといえる.近年では,大麻の形態は多様化し3),厚生労働省では大麻から成分を抽出した大麻リキッドや大麻ワックスなどの加工品,海外からのお土産のチョコレートやクッキーなどの中にも大麻が含まれている可能性について注意を喚起している3,4).厚生労働省では,大麻の有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含まないとされるCBD(カンナビジオール)製品については,輸入をする際には事前に麻薬取締部において大麻に該当しないかを確認するように呼びかけている5).CBDはTHCが持つ精神作用を示すことなく,抗てんかん作用,抗炎症作用,鎮痛作用,抗がん作用等の薬理作用を有するため,海外の一部では医療への応用が進んでいるが6),好奇心や誘いから軽い気持ちで嗜好品としてそれらを使用する者が,何が有害/無害,違法/合法であるかを適切に判断しているとは言い難い.とりわけ若年層における大麻の乱用の原因の1つとしては,大麻の有害性を否定する情報がインターネットに溢れていることが指摘されている7).厚生労働省による第五次薬物乱用防止五か年戦略の目標「青少年を中心とした広報・啓発を通じた国民全体の規範意識の向上による薬物乱用未然防止」内には,大学生への講習会の実施,啓発資料の作成・配布等が記されているものの7),関西四大学(関西大学,関西学院大学,同志社大学,立命館大学)の2019年の調査によると,大学が配布しているリーフレット,啓発ビデオ,大学での講演会で乱用薬物に関する情報を得たとの回答の割合は,リーフレット2.1%,啓発ビデオ0.7%,講演会1.0%と極めて低かった8).この状況において,大学生に届く形で適切な啓発を行うことは肝要であり,薬学部で学ぶ学生(薬学生)は若者の身近な存在として,薬学部での専門的な学びを活かし,自ら情報を発信することで乱用薬物防止の啓発活動の一翼を担う存在となり得るだろう.また,近年医療だけでなく,健康食品としても流通が急速に広がっているCBD製品9) に関しては,厚生労働省の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」で議論されてきたが10,11),日本の大学生に対して大麻や乱用薬物の調査は行われているものの,CBD製品に関する認知度や意識の調査はまだ不十分である.そこで本研究では,薬学生の現状での大麻およびCBD製品に関する認識と,今後薬学生として取るべきだと考える行動に関する意識の調査と分析を行い,大麻などの乱用薬物防止の啓発に繋がる薬学教育を検討する.

方法

1. 対象

2021年春学期に,立命館大学薬学部の1年生および3年生を対象とした無記名式の大麻・CBDに関するアンケート調査を実施した.アンケート実施に際しては本学における人を対象とする研究倫理審査に関するチェック項目に従いインフォームド・コンセントを実施した.対象学生にはアンケートの目的,参加が任意であること,参加に同意しないことにより不利益な対応を受けることがないこと,分析の際には個人が特定されることはないこと等を説明した.インフォームド・コンセントを得た有効回答者数は1年生100名(110名中),3年生102名(104名中)であった.

2. アンケート調査と分析方法

アンケートでは,大麻に関する質問の後,CBDに関する質問を行い,その後に大麻とCBDの相違点,その他の危険薬物に関する知識,薬学生として今後どのような行動を取りたいかを尋ねた.質問には違法性の認識,情報源,イメージ,作用,使用歴,入手の可否,医療効果に関するものが含まれたが,本調査では違法性の認識,情報源に関する選択式の質問と,薬学生として今後どのような行動を取りたいかを問う自由記述式への回答を分析の対象とした.選択式の質問は複数の回答および無回答を可能とした.回答はクロス集計を行った後,各質問に対して回答数のパーセンテージを算出した.自由記述式の回答については,得られた記述テキストの形態素解析を行い,語の頻度や共起の強い語から回答のパターンを探索するテキストマイニングを行った.形態素解析およびテキストマイニングにはKH Coder12) を利用した.

結果

1. 大麻の違法性の認識

「あなた自身が日本で大麻(マリファナ)を使ったり,持っていたりした場合,どうなると思いますか(複数選択可)」に対する回答の割合を表1に示す.大麻の使用,所持,栽培,譲り渡し・譲り受けをするとすべて罰せられると考える学生は両学年において60%以上で,全く罰せられないと考える学生は0%であった.医薬品や医療目的なら罰せられないと考える学生は1年生29.0%,3年生21.7%,海外では使用できると考える学生は1年生16.0%,3年生16.5%,譲り渡し・譲り受けをするだけなら罰せられることはないと考える学生は1年生15.0%,3年生9.6%であった.使うだけなら罰せられることはない,持っているだけなら罰せられることはないと考える学生の割合は極めて低かった.1年生と3年生で大きな傾向の違いは見られなかったが,栽培,譲り渡し・譲り受けだけなら罰せられることはないと回答する学生は1年生の割合が高かった.

表1 「あなた自身が日本で大麻(マリファナ)を使ったり,持っていたりした場合,どうなると思いますか(複数選択可)」の回答
1年生(100名) 3年生(102名)
使ったり,持っていたり,育てたり,譲り渡し・譲り受けをしたらすべて罰せられる 63.0% 66.1%
医薬品あるいは医療目的なら使ったり,持っていたりしても罰せられることはない 29.0% 21.7%
日本では使用したら罰せられるが,海外で使用しても罰せられることはない 16.0% 16.5%
譲り渡し・譲り受けをするだけなら罰せられることはない 15.0% 9.6%
育てるだけなら罰せられることはない 5.0% 0.9%
使うだけなら罰せられることはない 3.0% 4.3%
持っているだけなら罰せられることはない 0.0% 0.9%
使ったり,持っていたり,育てたり,譲り渡し・譲り受けをしても罰せられることはない 0.0% 0.0%

2. 大麻の違法性に関する情報源

「あなたは大麻に関する違法性についてどのようにして知りましたか(複数回答可)」に対する回答の割合を図1に示す.両学年において学校・大学の授業,研究室で大麻に関する情報を得たという回答の割合が最も高く,1年生67.0%,3年生56.5%であった.次いで割合が高かったのは,テレビ,ラジオが1年生43.0%,3年生45.2%,インターネットが1年生38.0%,3年生36.5%であった.ポスター,パンフレット,本,雑誌,新聞,友人,知人,家族と回答した学生はいずれも1年生16.0%,3年生14.8%であり,論文,研究発表で情報を得たと回答した学生は0%であった.

図1

「あなたは大麻に関する違法性についてどのようにして知りましたか(複数回答可)」の回答

3. CBD(カンナビジオール)・CBD製品に対する認知

大麻に対する大学生の認知度は93.7%と高いことがすでに報告されているが8),CBDの認知度は不明であった.CBDに関する情報を発信するメディアであるSTOKE社が2021年に日本全国の20~70歳に行ったアンケートによると,CBDを「知っている」と回答したのは100名中34名と認知度は低く13),大学生のCBDの認知度も低いことが予想された.そこで,本調査ではCBD製品の違法性を問う前に,CBDおよびCBD製品を認知しているかを尋ねた.「あなたは,これまでにCBD(カンナビジオール)について聞いたことがありますか」の質問に「はい」と回答したのは1年生10.0%,3年生16.5%であり,「あなたは,これまでにCBD製品について聞いたことがありますか」に「はい」と回答したのは1年生8.0%,3年生10.4%であった.

4. CBD製品に関する違法性の認識

「あなた自身が日本でCBD製品を使ったり,持っていたりした場合,どうなると思いますか(複数選択可)」に対する回答の割合を表2に示す.CBD製品の使用,所持,譲り渡し・譲り受けをするとすべて罰せられると考える学生は1年生44.0%,3年生 30.4%であり,大麻への回答と比較すると,CBD製品について「すべて罰せられる」と考える学生の割合は低かった.医薬品や医療目的なら罰せられないと考える学生は1年生10.0%,3年生14.8%,海外では使用できると考える学生は1年生11.0%,3年生5.2%であった.栽培,譲り渡し・譲り受けだけなら罰せられないと考える学生は0%,全く罰せられないと考える学生は1年生2.0%,3年生8.7%であった.大麻と比較すると,1年生より3年生の方が,すべて罰せられると考える学生は少なく,すべて罰せられないと考える学生は多かった.

表2 「あなた自身が日本でCBD製品を使ったり,持っていたりした場合,どうなると思いますか(複数選択可)」の回答
1年生(100名) 3年生(102名)
使ったり,持っていたりしたらすべて罰せられる 44.0% 30.4%
医薬品あるいは医療目的なら使ったり,持っていたりしても罰せられることはない 10.0% 14.8%
日本では使用したら罰せられるが,海外で使用しても罰せられることはない 11.0% 5.2%
使うだけなら罰せられることはない 2.0% 1.7%
持っているだけなら罰せられることはない 1.0% 1.7%
使ったり,持っていたりしても罰せられることはない 2.0% 8.7%

5. CBD製品に関する情報源

「あなたはCBD製品に関する違法性についてどのようにして知りましたか(複数回答可)」に対する回答の割合を図2に示す.そもそもCBDの認知度が低かったため,情報源に対する回答数は全体的に少なかったが,比較的割合の高い回答は学校・大学の授業,研究室が1年生19.0%,3年生7.8%,インターネットが1年生12.0%,3年生17.4%であった.学校・大学で情報を得た割合は1年生の方が高く,反対にインターネットは3年生の方が高かった.また,大麻と比較すると,テレビ,ラジオ,ポスター,パンフレットから情報を得たと回答する割合は特に低かった.これらの情報源についての回答は,前述のCBD製品に対する認知について「いいえ」と回答した学生の回答も含まれていた.

図2

「あなたはCBD製品に関する違法性についてどのようにして知りましたか(複数回答可)」の回答

6. 薬学生としての今後の行動

「今後薬学部の学生として(大麻やCBD製品に関わり)どのような行動を取りたいですか」に対する自由記述のテキストに同時に出現する程度が高い語句をつなぐ「共起ネットワーク」を求めた結果を図3に示す.主な共起グループを見ると,サブグラフ1では「正しい」「知識」「持つ」「伝える」等が共起し,「正しい知識の取得と伝達」を表している.「(正しい)知識」には「薬物」も共起し,用例を精査したところ,薬物に関する「情報」「使い方」「効果」「法律」等が身につけるべき知識として記述されていた.サブグラフ2では「薬」「患者」「扱う」「機会」「将来」等が共起し,現在自分が薬学に携わっていることや,将来患者と関わったり,薬を扱ったりする機会には,薬剤師,薬学専門家として正しい行動をとるべきであること等が記述されていた.これを「薬学専門家としての薬の扱い」とまとめる.サブグラフで3は「麻薬」「学ぶ」「薬学」「自分」「知る」「調べる」等が共起し,麻薬や薬学について学び,自分で調べて知るという「薬学分野における積極的な学び」を表している.サブグラフ4では「薬物」「違法」「乱用」「絶対」「手」「出す(出さない)」「勧める(勧めない)」等が共起し,「違法薬物乱用とその勧めの拒絶」を表している.サブグラフで6は「大麻」「使用」「医療」「理解」「危険」等が共起し,「大麻の危険性と医療利用の理解の深化」を表している.「理解」はサブグラフ1の「説明」と,「深める」はサブグラフ2の「扱う」とも共起し,理解を深めたことを他者に説明したり,将来薬を扱うために理解を深めたりすることを表している.サブグラフ5は「薬学部」「学生」「適切」「行動」が共起し「薬学生としての適切な行動」を表し,サブグラフ1,4,6とも繋がりがあった.これらをまとめると,学生は違法薬物の乱用や誘いを拒絶し,将来薬を扱い患者と関わる薬学専門家になるという視点を持った上で,薬の使い方,効果,法律等の正しい知識を身につけ,深め,それを伝えていきたいと考えているといえる.

図3

「今後薬学部の学生として(大麻やCBD製品に関わり)どのような行動を取りたいですか」の回答の共起ネットワーク

考察

大学生は乱用薬物に対して高い規範意識を持っていることがこれまでにも報告されている8,14).本稿では乱用薬物として大麻や危険ドラッグ等を一括にするのではなく,医療や健康食品・嗜好品としての利用が進みつつある大麻とCBDに焦点を絞った.また違法性について細分化した質問をした上で薬学生として取るべきだと考える行動に関する意識を分析した.大麻に関する違法性の認識については,すべての学生が何らかの違法性を認識していたが,医薬品あるいは医療目的なら罰せられない,海外で使用しても罰せられない,譲り渡し・譲り受けだけなら罰せられないと考える学生も10%以上存在していたことは注意すべき点である.医療系専攻の学生が教育系選考の学生より乱用薬物の医療利用についての認識度が高いことはすでに報告されているが15),今回の調査でも医療目的なら罰せられないと考える学生は20%以上存在し,これは学生が医療としての大麻の作用や医薬品への利用について見聞があることを示唆している.薬学生にとっては,日本内外の法の知識と医療への利用の知識を関連付ける教育を行うことが有益であると考えられる.

大麻の違法性に関する情報源としては,学校・大学の授業,研究室の割合が最も高いことから,学生は日本では大麻の使用,所持,譲り渡し・受け,栽培等がすべて違法であると学校・大学で学んでいるケースがあるといえる.一方で,薬学生として大麻の医薬品としての作用や他国での認可についての知見はあるものの,それらの他国での医療利用の実績と日本の法律が十分に結びつけられていない可能性があることも示唆された.日本の大麻取締法では,免許を受けた大麻栽培者・大麻研究者の目的外使用,大麻から製造された医薬品の施用と受施用をすべて禁止している点を,薬物乱用防止をテーマとした機会にだけでなく,大麻の作用や医療利用に関する授業の中で指導することで,学生は薬物に対して定められた法とその理由を関連づけて考えられることが期待できる.また,医療目的以外での大麻の使用について国家として合法としている国にカナダ,ウルグアイ,マルタ共和国があるが,医療目的か嗜好目的かで各国の規制が異なる点や,嗜好目的での使用を合法化している国が大麻の使用の健康への悪影響を示している点11) などは,薬学部の専門科目や留学プログラムと関連付けて指導できるだろう.

CBD製品に関しては,近年流通が広がり始めたにも関わらず,学生の認知度は低かった.違法性の認識は大麻に対する認識と似た傾向があり,すべて罰せられると考える学生の割合が最も高く,次に医薬品あるいは医療目的なら罰せられないという回答が続いた.学生はCBD製品についてよく知らないものの,漠然と大麻と似たようなものだと捉えていた.

CBD製品の違法性に関する情報源としては,学校・大学を挙げる学生の割合が1年生の方が3年生に比べ10%以上高かったことは,近年薬物乱用防止を学校・大学で啓発する際に,CBD製品にも触れることが増えていることを示唆している.一方で,インターネットから情報を得ていると答えた割合が比較的高く,3年生においては学校・大学,テレビ,ラジオを上回っていることも注目すべき点である.すなわち,CBD製品について知る学生は,教育の一環として知識を身につけているというよりは,むしろ自主的にインターネットを検索することにより情報を得ていると考えられる.Googleで「大麻」を検索すると厚生労働省や警察庁の大麻乱用防止に関する情報が上位に挙がるが,「CBD」を検索した場合,CBD製品の安全性に着目した情報が上位に挙がり,その多くは製品の購入のための情報にリンクされている.化学的に合成されたCBDや「大麻」に該当しないCBD成分であれば使用,所持,譲り渡し・受けが罰せられることはないが,学生の大部分がCBD製品について大麻と似たようなものであるとの曖昧な認識のまま,学校・大学で適切な学びを経ず,最初に得る情報がショッピングサイトの情報である状態は情報発信者となりうる薬学生にとって好ましいとは言えない.また,今回CBD製品について認知していないと回答した学生がCBD製品の違法性の情報源について回答しているケースがあったことも,CBD製品に対する認識の曖昧さを示している.

自由記述の分析により明らかになった点として,違法薬物を勧められても拒絶したいという考えは一般的な大学生として当然持つべき意識と言えるが,特に薬学生としては,正しい知識を取得・伝達したいと考え,薬学分野において積極に学び,薬学専門知識を身につけ,特に大麻については危険性と医療利用への理解を深めたいと考えていることがわかった.図4に学生が今後薬学生としてとりたいと考える行動を,現在の薬学生としての行動を起点,薬剤師としての行動を将来像としてまとめる.図4に示した行動は現在から将来へと深化し,学生は薬学専門家となるビジョンを持った上で,薬学生としての適切な行動を現在から将来に向けて考え,その行動を支える学びを深めたいと考えているといえる.

図4

薬学生として将来とりたいと考える行動のまとめ

学生は薬学生としての責任を考慮し,将来のビジョンを描いた上で,自分のすべき行動が正しい知識の取得,薬物乱用の拒絶,薬学分野における積極的な学びであると考えていることが示唆された.中学および高校では学校保健計画に位置付けられた薬物乱用防止教室8) 等で,乱用薬物について危険かつ違法だから使ってはいけないという社会的・法的規範の視点で学んできたはずであるが,薬学部では乱用薬物と位置づけられる物質の薬理作用,国内外での医療利用の現状と法といったより専門的な内容と関連させて,学生が抱く現在から将来へのビジョンの中に指導を取り入れることで,在学時には若年層の中での身近な存在として,将来は薬学専門家として乱用薬物防止の啓発活動に貢献できる人材の育成につながると考えられる.社会で注目されているCBD製品は多くの学生にとっては未知のものであるが,厚生労働省においても現在議論が進められており10),今後学生が情報に触れる機会は急速に広がることが予想される.こういった新規性のある話題を早い段階で取り入れることも,薬学生の積極的な学びへの意欲を刺激するだろう.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

文献
 
© 2022 Japan Society for Pharmaceutical Education
feedback
Top