Japanese Journal of Pharmaceutical Education
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Special Topics | New Normal of Disaster Medicine in Pharmacy — as a second specialty for all medical professions
A questionnaire survey on the learning needs of pharmacy students and educational demand by the pharmacists
Yasuna Kobayashi
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2022 Volume 6 Article ID: 2022-030

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抄録

我が国の自然災害は,台風,地震,津波,土砂崩れ,豪雪,噴火,猛暑,寒冷など,ほとんど全種類を網羅している.特に近年の自然災害は一度発生すると広域になり,かつ避難所生活は長期に亘ることが特徴である.かつて我が国は化学兵器サリンによる人為災害も経験している.このように,多様な災害を経験する国はあまりないであろう.現行の薬学教育モデル・コアカリキュラムに含まれる災害時医療に関するSBOsは少なく,さらに方略は大学に委ねられている.大学に任されているということは,各大学で独自教育ができるが,現実には薬学部での災害医療教育は進んでいないと思われる.その原因は様々な理由が考えられるが,大きな理由の一つに,災害医療に精通した薬学部の教員が現状では少ないことが原因と筆者は考えている.一方,近い将来,必ず来ると予測される大規模災害発災時に活躍し,被災者の健康維持の貢献に資する薬剤師を排出するために,「今から」どのような教育をすべきか.今回,筆者が前職で新潟大学医学部災害医療教育センターとの共同研究として行った「薬学生の災害時医療に対する学修ニーズに関する調査研究」の結果について,薬学生が求める学習ニーズと薬剤師が求める教育ニーズを報告する.

Abstract

While Japan is a small country, however throughout the year it experiences many natural disasters such as typhoons, earthquakes, tsunami, landslides, heavy snowfall, volcanic eruptions, extreme heat, and cold weather. Especially, earthquakes occur almost every day somewhere in Japan. A characteristic of recent natural disasters is that once they occur, they become widespread and make life inconvenient. In addition to natural disasters, Japan has also experienced a man-made disaster, a chemical weapon attack with sarin gas. From the perspective of educating pharmacy students, it seems that educators have a lot more to learn about these disasters. In the current education curriculum model for pharmacy students, there are not enough SBOs on disaster medical care the strategy depends on each university. The authors think that there are various possible reasons why disaster medicine education in the faculty of pharmacy is not progressing to date. It is our belief that one major reason is that there are few faculty members who are familiar with disaster medical care. On the other hand, what can be taught/what can we teach “from now on” in order to discharge pharmacists who can play an active role in the event of a large-scale disaster and also contribute to maintaining the health of victims. Therefore, we planned a questionnaire survey on the learning needs of pharmacy students and demanded by the pharmacists.

背景・目的

我が国の自然災害に関する記録は西暦684年(白鳳時代)まで遡る.以来現在も,水害,台風,地震,津波,土砂崩れ,豪雪,噴火,猛暑,旱魃,寒波,寒冷などのどれかあるいは複数が毎年発生している.加えて,2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大は,2022年7月には国内の感染総数は1日あたりついに15万人を越えた.この間,大学教育は講義を中心にICT導入が一気に進み,オンラインによる講義が行われるようになると同時にマスク着用によってコミュニケーションは取りにくくなり,隠れたカリキュラム(hidden curriculum)での学びは制限された.現在も収束の兆しは全く見えず,これまでになかった新たなことが普通になった.ニューノーマルである.

また新たな自然災害の脅威として記憶に新しいのは,2022年1月に発生したものであろう.海底火山の大噴火が原因となって津波が発生し,数千キロメートル離れた我が国でも津波が押し寄せ,沿岸地域では漁船が沈没するなど被害が出たことである.この災害はこれまで想定されていた,いわゆる大陸プレートの歪みが引き金になって海面が押し上げられることで発生する津波とはメカニズムが異なり,火山の大噴火による周囲の空気の膨張により周辺の海面が押し下げられることによって発生するらしい.このような自然災害は我が国ではあまりこれまでに経験なく,津波到達時間を正確に予測することができなかったため漁船が沈没するなどの被害が出たとのことである.つまり,沿岸部に大都市が集中する我が国にとっては新たな脅威になると認識するきっかけになった.加えて,現在もヨーロッパでは戦争が勃発し,停戦に向けた努力は続けられているとの報道であるが見通しは立っていない(2022年4月).数ヶ月前には想像できなかったことが現実として起きているのである.

上述したように,我が国はあらゆるタイプの自然災害が頻発する.ほとんど全種類の災害を網羅している国は,世界中を見回してもすぐには思い浮かばない.かつての学校の防災訓練では「災害は忘れたころにやってくる.だから日頃の準備が大切」と周囲から教えられてきたが,いまは「災害は,忘れないうちにやってくる」のである.

我が国の災害は自然災害だけではない.過去には航空機墜落事故や列車の脱線転覆事故,原発事故による放射線被害,化学兵器サリンやVXガスによる人為災害(テロ災害)も経験している1)

「災害時の医療」は,医学部・歯学部・薬学部・看護学部の各学部のモデル・コアカリキュラムに含まれており,災害医療に関する基本的な知識や技能,態度を学生に修得させ,社会に輩出することは医療系学部の最も大きな責務の1つである.現行の薬学教育モデル・コアカリキュラムには,「B 社会と薬学(4)地域における薬局と薬剤師」および「F 薬学臨床(5)地域の保健・医療・福祉への参画【④災害時医療と薬剤師】」がある.にも関わらず,薬学部(薬科大学)で災害医療教育があまり進んでいないように思われる.その原因には様々な理由が考えられるが,筆者が考える主な理由は,1)同じ種類の災害であっても規模や被害状況は大きく違うため,一般化できず,教育が難しい,2)薬学部(薬科大学)に災害医療に精通した教員がいないか,在籍しても少ない,3)災害時医療は実践医療の究極であるため,高度な専門知識と深い臨床経験の融合が求められる,4)薬学教育モデル・コアカリキュラム2) のSBOsに沿った学部内での教育が難しい,などであろう.現在,薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂が進んでいるが3),次回の改訂時には,災害時医療に関する学修到達目標がさらに盛り込まれることに期待したい.

災害医学は「領域横断型」である.発災直後のフェーズ(超急性期・急性期医療)では,医師・看護師・業務調整委員からなるDMATが中心となって活動する4).しかし,亜急性期以降~慢性期では,避難所での服薬指導や衛生管理,医薬品管理や薬物療法,OTC薬相談,健康相談が集中するので,このような場面を想定した薬学部での教育は可能ではないかと考えている.これまでも薬学部では実務実習を通して学生は教育を受けているが,「実災害の想定」や「避難所を想定」した視点からの教育が多くの大学で行われてこなかった.近い将来,必ず来ると予測される大規模災害に備えて,発災時に活躍し,被災者に寄り添い,健康維持を実践できる薬剤師を社会に排出するためには,薬学部(薬科大学)でどのような教育をすべきか.

そこで今回,筆者が前職で新潟大学医学部災害医療教育センターとの共同研究として行ったアンケート調査研究の結果について,薬学生が求める学習ニーズと薬剤師が大学に求める教育ニーズを報告する.

方法

アンケート調査の対象は,新潟薬科大学薬学部学生(1年~6年)および県内DMAT隊員(災害医療活動の経験を有する病院薬剤師)とした.アンケート用紙の配布期間は2019年10月から2020年1月とした.回答方法は,紙媒体の場合は郵送し,電子媒体の場合はURLを送付し,オンライン上で回答を得た.学生に対してはアンケートの趣旨を口頭と文書で説明し,同意した学生のみアンケートに回答するように伝え,1~2週間以内に提出してもらった.未成年の学生には保護者の同意を必須とした.なお,アンケートに回答した学生の中には,日本災害医学会が主催する研修会「災害薬事研修」(PHDLS, pharmacy disaster life support)を受講し,PHDLSプロバーダーの学生と未受講の学生が含まれている.

アンケートの内容は,回答者背景に関する設問が9問,災害医療に関する設問のうち,準備・予防に関する設問が20問,災害時対応に関する設問が27問の計47問とした.これら各設問に対し,0~4点の順序尺度でスコア化し,回答を得た.なお,スコア「2」を中間の意見とした.スコアは平均値を用いた.アンケートの除外基準は,未成年者の学生で保護者の同意書が得られなかったものや全ての選択肢の回答が得られなかったものとした.なお,本調査研究は新潟薬科大学倫理委員会および新潟大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(新潟大学倫理審査委員会承認番号2019-0100,新潟薬科大学倫理審査委員会承認2019-05).

結果・考察

本調査研究に用いたアンケートの選択肢を表1および表2に示した.また,表3はアンケートの回答に対する評定尺度と評価規準を示した.さらに表1および表2に示したアンケートの選択肢全47項目について,(A)「薬剤師の役割(薬剤師が必ず実施すべきと考える)」内容と(B)「薬学生への教育(薬学部で是非とも学ぶべき知識)」内容に分け,それぞれスコア化してもらった.スコアは0~4の5段階とし,「0」を「薬剤師として必要性・特異性が低いもの(薬学部での教育は必要性・特異性が低いもの)」とし,「4」を「薬剤師として必要性・特異性が高いもの(薬学部での教育における必要性・特異性が高いもの)」で回答してもらった.

表1 災害に対する準備や予防に関する項目
設問
1 地域の災害や事故の歴史,地域のハザードマップ,災害の起きやすさの検討
2 災害時に協働すべき施設,団体(行政,医薬品の卸,製薬業者を含む)等との連携強化
3 災害時の緊急マニュアルに従った定期的な訓練の実施
4 災害対応や訓練の教訓,最新の薬物療法を踏まえたマニュアル,備蓄薬リストの改定
5 想定される災害種別ごとに緊急で集まれる職員数の把握,集まるべき職員の優先順位の策定
6 近隣施設等との業務重複を避けるための行動計画の策定
7 地域,施設の計画に合わせた災害用備蓄医薬品の整備と分散配置
8 衛生材料の準備(マスク,手袋,ガーゼ,消毒薬)
9 災害時用代替通信手段の整備,保守,使用方法の習熟
10 最新の連絡先リストの整備(職員,取引先等)
11 特別な配慮を必要とする患者リストの整備(在宅治療等の要援護者)
12 停電時用の手書き処方箋の準備,医師等への記載方法の事前指導
13 処方に関する患者データのバックアップ
14 ヘルメット,ゴーグル,マスク,ライトなどの非常用備品の整備
15 法律の特例措置などの情報の理解
16 処方箋なしで処方箋医薬品を販売,授与することを想定した研修や訓練
17 ファーストエイドの研修,訓練
18 災害要援護者の生理学,解剖学,精神的特徴の把握
19 患者への災害時用予備医薬品の準備の指導
20 予防接種(インフルエンザ,肺炎球菌,他)の推進
表2 災害時対応に関する項目
設問
21 職員,患者,医薬品,記録等の安全な場所への避難
22 医薬品の供給ルートに関する情報の伝達
23 医薬品集積所での医薬品の管理と仕分け
24 緊急時に使用できる薬剤の適正使用に関する,患者への指導と医療者への情報提供
25 消毒薬の管理
26 調剤および補給した医薬品等の記録
27 災害現場,救護所での外傷,緊急症例のトリアージ
28 調剤所での医薬品授与,受診勧奨のトリアージ
29 災害現場,救護所等での一次救命処置
30 災害現場,救護所等での診察,診断
31 災害現場,救護所等での外科的処置
32 災害現場,救護所等での処方
33 使用済み医療器具(穿刺針等)の廃棄
34 災害現場,救護所等での心理カウンセリング
35 救護所,調剤所,避難所等でのOTC(一般用市販薬),絆創膏などを用いた軽症外傷等の応急手当
36 被災者,救援者への栄養面での助言(ビタミン剤の供給等)
37 被災者,救援者への心理的な応急手当ならびに専門家への紹介
38 消毒薬の調整および品質管理
39 給水(飲水,手洗い)に関する体制の管理,指導
40 食品衛生に関する管理,指導
41 トイレの衛生に関する管理,指導
42 ゴミ廃棄場所の衛生に関する管理,指導
43 ハエ,蚊,ネズミ,ダニ,ノミ,シラミ等の駆除に関する管理,指導
44 感染予防(手指衛生,土足,吐物処理)に関する管理,指導
45 プライバシーや緊急対応に関する情報の保護,守秘義務の順守
46 被災施設で臨時的に薬剤師として雇用
47 ペット対策
表3 アンケート質問項目に対する評定尺度と評価規準
点数 (A)薬剤師の役割(薬剤師が必ず実施すべきと考える) (B)薬学生への教育(薬学部で是非とも学ぶべき知識)
0 薬剤師は決してすべきではないと考える項目 薬学部で学ぶのはふさわしくないと考える項目
1 他職種が実施することが相応しいが,状況次第で薬剤師が実施することもやむをえない項目 他学部では必要だが,薬学部ではあまり必要ではないと考える項目
2 職種を問わず,実施すべき項目 他学部も含め,薬学部でも同等に学ぶべきと考える項目
3 薬剤師が行うことが望まれるが,薬剤師不在時は他職種も実施せねばならない項目 できれば薬学部で学ぶべきだが,他学部でも触れてもよいと考える項目
4 他職種ではなく,薬剤師が必ず実施すべきと考える項目 薬学部で是非とも学ぶべき知識と考える項目

アンケートは,新潟県内DMAT隊員を対象に291枚を配布し,有効回答数は52枚であった(有効回答率17.9%).有効回答52枚のうち,7枚は薬剤師のDMAT隊員であった.また,新潟薬科大学薬学部生(1年~6年)にアンケート用紙を配布し,813人から回答を得た.このうち,519枚(63.8%)が有効回答であった.

図1(1Aと1B)は,「薬剤師の役割(薬剤師が必ず実施すべきと考える)」項目で,そのうち1Aは「災害時の役割分担(準備・予防)に関する項目」,1Bは「災害時の役割分担(災害時対応)」に関するスコア結果である.また,図1(1Cと1D)は,「薬学生への教育(薬学部で是非とも学ぶべき知識)」に関する項目で,そのうち1Cは「大学での学習テーマ(準備・予防)に関する項目」,1Dは「大学での学習テーマ(災害時対応)に関する項目」に関するスコア結果である.

図1

薬学生の災害時医療に対する学修ニーズに関するアンケート結果.1A(災害時の役割分担【準備・予防】)・B(災害時の役割分担【災害時対応】);「薬剤師が必ず実施すべき」と考える項目の学生と薬剤師のスコア分布.1C(大学での学習テーマ【準備・予防】)・D(大学での学習テーマ【災害時対応】);「薬学部で是非とも学ぶべき知識」と考える項目の学生と薬剤師のスコア分布.■PhDLS受講済み学生,●PhDLS未受講学生,◆DMATに所属する薬剤師

まず,図1A「災害時の役割分担(準備・予防)に関する項目」のうち,DMATに所属する薬剤師の意見と薬学生との意見に比較的顕著な差異が見られた項目として,「特別な配慮を必要とする患者リストの整備(在宅治療等の要援護者)」および「予防接種(インフルエンザ,肺炎球菌,他)の推進」であった.すなわち,薬学生は「薬剤師は特別な配慮を必要とする患者リストの整備(在宅治療等の要援護者)」を薬剤師の災害時の役割として考え,そのための準備が必要と考えているのに対し,DMATに所属する薬剤師の意見はそうではなかった.この結果は,DMATに所属する薬剤師は,被災地では薬剤師の免許をもった人以外でもリストは作成できると考えているのかもしれない.また,「予防接種(インフルエンザ,肺炎球菌,他)の推進」に関しては,薬学生は「薬剤師が予防接種を推進すべき」という意見が多かったが,DMATに所属する薬剤師の意見はそうではなかった.一方,DMATに所属する薬剤師および薬学生の両方の群ともに優先度が高い項目としてあげたものが「処方箋なしで処方箋医薬品を販売,授与することを想定した研修や訓練」であった.この結果は薬学部で実習や演習で,すぐにでも取り入れることが可能な教育内容と考えられる.仮に演習・実習科目として実際に本結果を取り入れるならば,現行の薬学教育モデル・コアカリキュラム(以下,コアカリ)には実務実習中に災害時医療に関して現場で学ぶSBOsがあるので,実務実習終了後に行うことが教育効果・学習成果も高いものと思われる.

次に図1B「災害時の役割分担(災害時対応)」のうち,「災害現場,救護所での外傷,緊急症例のトリアージ」と「被災者,救援者への心理的な応急手当ならびに専門家への紹介」の2項目は,薬学生とDMATに所属する薬剤師との間で回答が異なっていた.薬学生は「災害現場,救護所での外傷,緊急症例のトリアージ」は発災時には薬剤師が対応する内容と考えていたが,DMATに所属する薬剤師はそうは考えていないことが分かった.この結果は,災害現場における外傷がどのような状況になっているのか,あるいは損傷の激しい緊急症例のトリアージを実際に現場で行うことの難しさをDMATに所属する薬剤師は経験しているためと思われる.言い方を変えれば,薬学生には災害現場や被災地の状況をなんらかの形で講義や演習などで臨場感をもって教育することの難しさを意味しているのかもしれない.その解決手段の一つとして,今後はVirtual Reality(VR)を使った演習や実習などの開発も考えられるだろうし,日本災害医学会など学会などが開催する研修会へ参加することを学生に促しても良いかもしれない.あるいは,実際に被災した地域の支援活動などを通じて災害医療を学修する機会を得ることを促してもよいかもしれない.この点に関しては様々な方略が考えられる.

災害時対応において,DMATに所属する薬剤師のニーズとして高かったのは,「被災施設で臨時的に薬剤師として雇用」であった.この結果は,もし被災施設で臨時的に薬剤師として雇用されれば,長期にわたる避難所での生活を強いられる避難者にさらに寄りそった医療が提供できると考えている薬剤師が多いことを示しているかもしれない.

図1Cの「大学での学習テーマ(準備・予防)に関する項目」では,薬剤師は図1Aの結果と同じく,「特別な配慮を必要とする患者リストの整備(在宅治療等の要援護者)」であった.また,DMATに所属する薬剤師は,「災害対応や訓練の教訓,最新の薬物療法を踏まえたマニュアル,備蓄薬リストの改定」を「大学での学習テーマ(準備・予防)」として捉えている回答が多かった.一方,「処方箋なしで処方箋医薬品を販売,授与することを想定した研修や訓練」は,薬学生もDMATに所属する薬剤師もともにスコアが高かった.すなわち,DMATに所属する薬剤師が大学での学習テーマとして,「処方箋なしで処方箋医薬品を販売,授与することを想定した研修や訓練」を大学で教育に取り入れて欲しいと考えていると思われる.つまり,学部教育として学習者のニーズも高く,社会的ニーズも高いことを示唆していると考えられる.それには,今後は災害対策基本法や防災計画などの法令関連の知識や医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律などの講義,OTC薬の使用に関する教育のさらなる充実が必要であろう4)

図1Dの「大学での学習テーマ(災害時対応)に関する項目」では,ほとんどの設問項目で,DMATに所属する薬剤師の回答と薬学生の回答はほぼ同様であった.しかし「ペット対策」に関しては,DMATに所属する薬剤師は肯定的な意見が多かったが,薬学生は否定的な意見が多い傾向にあった.

薬学生に災害時の医療や平時に薬学部の科目として災害を学ぶ意義を実感してもらうことは容易ではない.しかし,本内容が薬学教育内容の新しい領域の開拓につながって欲しいと願っている.

謝辞

本シンポジウムの内容全ては,演者が新潟薬科大学在職中に行ったものであり,新潟薬科大学(故)学長寺田弘先生,(元)内閣官房副長官補西川徹矢先生,新潟薬科大学学長下條文武先生他,新潟薬科大学関係各位に心より感謝致します.また,アンケートに回答して下さった全ての皆様,新潟薬科大学薬学部の学生に感謝致します.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

文献
  • 1)   小林  靖奈, 山元  俊憲, 黒岩  幸雄.サリンおよびその他の有毒ガス サリンおよびVXガス.救急医学.1995; 19: 177–186.
  • 2)  薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)[Internet].文部科学省薬系人材養成のあり方に関する検討会;平成25年12月(参照2022年2月20日)https://www.mext.go.jp/a_menu/01_d/08091815.htm
  • 3)  薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第1回)配布資料[Internet].文部科学省(参照2022年4月6日)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/117/siryo/mext_00014.html
  • 4)  [改訂第2版]DMAT標準テキスト.日本集団災害医学会DMATテキスト改訂版編集委員会,東京:へるす出版;2016. p. 2–8.
 
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