日本公衆衛生看護学会誌
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原著
新型コロナウイルス感染症流行下における都市部在住男性高齢者の社会的孤立とICTおよび人づきあいとの関連
中尾 凪沙瀬尾 采子戸村 友美石附 史帆刀稱 華未平野 美千代
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2023 年 12 巻 2 号 p. 99-108

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Abstract

目的:新型コロナウイルス感染症流行下における都市部在住男性高齢者の社会的孤立とInformation and communication technology(以下,ICT)および人づきあいとの関連を明らかにする.

方法:対象は65~79歳男性900名とし,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,ICT利用実態,人づきあいの状況,社会的孤立等とし,分析は社会的孤立を非孤立群,孤立群の2群に分け,二項ロジスティック回帰分析を行った.

結果:回収数は442 部,有効回答数435部であった.非孤立に有意に関連したのは,電話の利用頻度(odds ratio [OR]=1.23),メールの利用頻度(OR=1.19),直接会って会話をする頻度(OR=1.21),近所づきあいの程度は,「ほとんどない」を基準に「多少のつきあいがいある」(OR=4.16),「親しくつきあっている」(OR=4.80)であった.

考察:COVID-19流行下における男性高齢者の社会的孤立の防止には,身近な人たちとの対面交流によるつながりの実感や,電話・メール等による双方向のコミュニケーションが有効であることが示された.

Translated Abstract

Objective: The aim of this study was to clarify the relationship between social isolation, information and communication technology (ICT), and socializing among older men living in an urban area during the COVID-19 pandemic.

Methods: An anonymous survey was conducted with 900 man participants aged 65–79 years. The survey items included ICT usage, socializing status, and social isolation. Binomial logistic regression analysis was conducted on two groups, which were established based on social isolation: non-social isolation and social isolation.

Results: A total of 442 responses were collected, of which 435 were valid. The factors significantly related to non-social isolation were frequency of telephone use (odds ratio [OR]=1.23), e-mail use (OR=1.19), and face-to-face conversations (OR=1.21). There was also “some association” (OR=4.16) and a “close association” (OR=4.80) with an “almost none” degree of neighborliness.

Discussion: The results indicated that face-to-face interactions with familiar people to feel connected and interactive communication via telephone and e-mail were effective in preventing social isolation among older men during the COVID-19 pandemic.

I. 緒言

高齢者の社会的孤立は,抑うつ症状の増加(Choi et al., 2015)や,要介護状態への移行リスク(斉藤ら,2013),認知症発生リスクを高める(Fratiglioni et al., 2000).また,社会的孤立は生きがいや尊厳にも関係している(内閣府,2010).高齢者の社会的孤立の解消は,超高齢社会にある我が国において取り組むべき重要な課題といえる.

社会的孤立のリスク要因には,居住地(Havens et al., 2004),性別(Jang et al., 2016),年齢,婚姻状況,経済状況(斎藤ら,2009),就労状況(小林ら,2015),教育歴(小林ら,2015斎藤ら,2010)がある.新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の長期化により,就労状況の変化や人づきあい,他者との交流の低下が,社会的孤立の問題を一層顕在化すると考えられる.

男性高齢者において,親しい近所づきあい(小林ら,2015)や,社会活動の頻度を高めること(江尻ら,2018)が孤立を予防するために重要であると示唆されている.また,孤立のリスク要因に都市部に居住していること(Havens et al., 2004)があり,都市部在住の男性高齢者に対する孤立への対策がより重要である.一方,COVID-19の流行に伴い社会活動の制限など,人との直接的な交流が難しい状況となった.COVID-19流行下における都市部在住男性高齢者の人づきあいと社会的孤立の関連を明らかにすることは,今後のポストコロナ時代における高齢者の社会的孤立の対策を検討する上での基礎的データになると考える.

COVID-19拡大に伴い,非対面で用件をなすことができるインターネットの利用が一気に普及した.ここで高齢者のインターネット利用に着目すると,2020年のインターネット利用は,65~69歳が約8割,70~79歳が約6割(総務省,2021)である.2010年の利用状況は65~69歳が約6割,70~79歳が約4割である(総務省,2010)ことから,現在,増加傾向にある.インターネット利用は,情報の発信や共有が容易になるほか,社会活動も促進される(桂ら,2019).これらを踏まえ,Information and communication technology(以下,ICT)利用は,COVID-19流行下によって外出が制限されている中でも,人とのつながりを維持し社会的孤立の予防に関連している可能性がある.

そこで本研究は,COVID-19流行下における都市部在住男性高齢者の社会的孤立とICTおよび人づきあいとの関連を明らかにすることを目的とする.

II. 研究方法

1. 研究デザイン

研究デザインは,量的記述的研究とした.

2. 用語の定義

本研究は,ICT機器を「パソコン,スマートフォン,携帯電話(スマートフォンを除く),タブレット端末」とする.人づきあいの状況は,内閣府の調査(2003, 2016)を参考に,「直接人と会って会話することや,近所づきあい,社会活動への参加」とする.社会的孤立は栗本ら(2011)の研究を参考に,「ソーシャルサポート・ネットワークが欠如した状態」とする.

3. 対象

対象は,札幌市A区B地区に在住する65~79歳男性900名とした.総務省(2021)の調査によると,インターネット利用率は60代82.7%,70代59.6%,80代以上25.6%である.本研究は社会的孤立とICTの関連をみることから,対象の年齢を65~79歳とし,インターネット利用率が低い80代以上は対象としなかった.

対象の選定は,札幌市A区に住民基本台帳の閲覧と転記許可を依頼し,A区が管理する住民基本台帳を活用した.住民基本台帳の閲覧に際しては,札幌市の条例で定める正式な手続きを行った.対象選定はB地区を5区域に分け,各区域より180名ずつ抽出した.抽出は65~72歳,73歳~79歳に分け,1番目の対象は無作為に抽出し,2番目以降は抽出間隔を10とし,一定の間隔で抽出した.

4. 調査方法

調査は2021年5月~6月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,調査票の回収は同封した返信用封筒にて行った.調査期間中,札幌市はCOVID-19の緊急事態宣言が発令され,外出の自粛要請がなされていた.質問項目は,基本属性,ICT利用実態,人づきあいの状況,社会的孤立から構成した.

1) 基本属性

基本属性は,年齢,要支援・要介護認定の有無,最終学歴,婚姻状況,経済状況,居住期間,就労状況とした.

2) ICT利用実態

ICT機器の利用状況および頻度は,ICTに関する総務省の調査(総務省,2008a2008b),桂ら(2020)の研究を参考に,1日の合計利用時間,利用年数,利用用途に対する頻度を尋ねた.

1日の合計利用時間は「使っていない」「1秒~15分未満」「15分~30分未満」「30分~1時間未満」「1時間~2時間未満」「2時間~4時間未満」「4時間~6時間未満」「6時間以上」8件法で尋ねた.利用年数は,「使っていない」「半年以上1年未満」「1年以上3年未満」「3年以上5年未満」「5年以上10年未満」「10年以上」の6件法で尋ねた.利用用途に対する頻度は,電話,メール,情報検索(ホームページ,地図,天気,ニュースなど)のそれぞれについて,「しない」「年に数回」「月に1~2回」「週に1回」「2~3日に1回」「ほとんど毎日」の6件法で尋ねた.

3) 人づきあいの状況

人づきあいの状況は,直接会って会話をする頻度,近所づきあいの程度,社会活動の参加頻度で構成した.直接会って会話をする頻度(同居の家族を含む)は,「しない」「年に数回」「月に1~2回」「週に1回」「2~3日に1回」「ほとんど毎日」の6件法で尋ねた.近所づきあいの程度は,「つきあいはほとんどない」「あいさつをする程度」「あいさつ以外にも多少のつきあいがある(相手の名前や家族構成を知っていたり,物の貸し借りや趣味を共有しているなど)(以下,多少のつきあいがある)」「親しくつきあっている」の4件法で尋ねた.社会活動の合計参加頻度は,「していない」「年に数回」「月に1~2回」「週に1回」の4件法で尋ねた.

4) 社会的孤立

社会的孤立は,Lubben Social Network Scale短縮版:LSNS-6の日本語版(栗本ら,2011)を使用した.この尺度は,家族・親戚または友人・近隣の人々からなる手段的・情緒的サポートネットワークのサイズの量(人数)を尋ねる6項目で構成されている.各項目の点数を均等に加算し点数を求め,総得点の範囲は0点から30点である.得点が高いほどソーシャルネットワークが大きいことを意味する.カットオフ値は12点であり,本研究は,社会的孤立ではない12点以上と社会的孤立である12点未満に分けた.

5. 分析方法

基本属性,ICT利用実態,人づきあいの状況,社会的孤立の各項目について記述統計を行った.次に,社会的孤立の得点をカットオフ値で2群に分け,単変量解析にて,基本属性,ICT利用,人づきあいとの関連をみた.なお,年齢は65~69歳,70~74歳,75~79歳の計3群に分けて分析した.

最後に,単変量解析の結果,関連があった人づきあい,ICT利用を独立変数,社会的孤立を従属変数,基本属性を共変量として,強制投入法による二項ロジスティック回帰分析を行った.名義尺度の近所づきあいの程度,要支援・要介護認定の有無,婚姻状況,最終学歴はダミー変数を作成し投入した.従属変数の社会的孤立は非孤立群(12点以上)=1,孤立群(12点未満)=0の2群に分けた.分析にはIBM SPSS Statistics Version 26を使用し,有意水準は5%とした.

6. 倫理的配慮

対象者には,研究目的と内容,個人情報の保護について文書にて説明し,調査票への回答と返信をもって同意を得られたものとした.文書には,本研究への協力は個人の自由意志によるものであり,調査への不参加により,対象者が不利益を被ることはないことを記載した.本研究は,北海道大学大学院保健科学研究院倫理審査委員会の承認を受け実施した(承認日:2021年4月27日,承認番号21-5).

III. 結果

配付数900部のうち442部の回答が得られた(回収率49.1%).80歳以上の2名,ICT機器の利用状況および頻度が未回答の5名,社会的孤立の質問項目に未回答があった4名を除いた,431部を有効回答とした(有効回答47.9%).

1. 基本属性(表1

対象者の平均年齢は72.2±0.2歳であり,要介護・要支援は「受けていない」413名(95.8%)であった.婚姻状況は「既婚」365名(84.7%),経済状況は「あまり余裕がない」173名(40.1%),「まあ余裕がある」173名(40.1%)であった.居住期間は「30年以上」220名(51.0%)が最も多く,就労状況は「働いていない」275名(63.9%),最終学歴は「高等学校」212名(49.2%)が最も多かった.

表1  基本属性(N=431)
n %
年齢 65~69歳 136 31.6
70~74歳 143 33.2
75~79歳 149 34.6
未記入 3 0.7
要支援・要介護 受けていない 413 95.8
要支援1~2 9 2.1
要介護1~5 6 1.4
未記入 3 0.7
婚姻状況 未婚 15 3.5
既婚 365 84.7
その他(離別・死別) 51 11.8
経済状況 余裕がない 54 12.5
あまり余裕がない 173 40.1
まあ余裕がある 173 40.1
余裕がある 26 6.0
未記入 5 1.2
居住期間 5年未満 11 2.6
5年以上10年未満 22 5.1
10年以上20年未満 57 13.2
20年以上30年未満 121 28.1
30年以上 220 51.0
就労状況 働いていない 275 63.9
働いている 154 35.7
未記入 2 0.5
最終学歴 中学校 38 8.8
高等学校 212 49.2
大学(短期大学・専門学校含む) 166 38.5
その他 9 2.1
未記入 6 1.4

2. ICT利用実態(表2

ICT利用について,1日の合計利用時間は「30分~1時間未満」64名(14.8%),「1時間から2時間未満」82名(19.0%),2時間~4時間未満」62名(14.4%)であった.利用年数は10年以上が281名(65.2%)であった.電話の頻度は「ほとんど毎日」90名(20.9%),メールの頻度は「しない」136名(31.6%),情報検索の頻度は「ほとんど毎日」216名(50.1%)がそれぞれ最も多かった.

表2  ICT利用実態(N=431)
n %
1日の合計利用時間 使っていない 71 16.5
1秒~15分未満 43 10.0
15分~30分未満 58 13.5
30分~1時間未満 64 14.8
1時間~2時間未満 82 19.0
2時間~4時間未満 62 14.4
4時間~6時間未満 27 6.3
6時間以上 18 4.2
未記入 6 1.4
利用年数 使っていない 69 16.0
半年以上1年未満 13 3.0
1年以上3年未満 12 2.8
3年以上5年未満 15 3.5
5年以上10年未満 33 7.7
10年以上 281 65.2
未記入 8 1.9
電話頻度 しない 87 20.2
年に数回 36 8.4
月に1~2回 85 19.7
週に1回 54 12.5
2~3日に1回 74 17.2
ほとんど毎日 90 20.9
未記入 5 1.2
メールの頻度 しない 136 31.6
年に数回 60 13.9
月に1~2回 76 17.6
週に1回 55 12.8
2~3日に1回 54 12.5
ほとんど毎日 50 11.6
情報検索の頻度 しない 111 25.8
年に数回 16 3.7
月に1~2回 17 3.9
週に1回 20 4.6
2~3日に1回 51 11.8
ほとんど毎日 216 50.1

3. 人づきあいの実態(表3

直接会って会話をする頻度は「ほとんど毎日」316名(73.3%),近所づきあいの程度は「あいさつをする程度」224名(52.0%),社会活動の頻度は「していない」270名(62.6%)がそれぞれ最も多かった.

表3  人づきあいの実態(N=431)
n %
直接会って会話する頻度 しない 24 5.6
年に数回 19 4.4
月に1~2回 34 7.9
週に1回 13 3.0
2~3日に1回 25 5.8
ほとんど毎日 316 73.3
近所づきあいの程度 つきあいはほとんどない 32 7.4
あいさつをする程度 224 52.0
あいさつ以外にも多少のつきあいがある 142 32.9
親しくつきあっている 33 7.7
社会活動の参加頻度 していない 270 62.6
年に数回 71 16.5
月に1~2回 44 10.2
週に1回 42 9.7
未記入 4 0.9

4. 社会的孤立

社会的孤立について,LSNS-6の平均得点は12.3±6.0,中央値は12点であった.合計得点は0点~11点196名(45.5%),12点以上235名(54.5%)であった.最頻値は9点,最小値は0点,最大値は30点であった.

5. 男性高齢者の社会的孤立の関連要因(表4-14-3,表5

単変量解析にて,社会的孤立と基本属性,ICT利用,人づきあいとの関連を確認した.結果,基本属性では経済状況と居住期間,ICT利用内容に対する頻度は,電話の利用頻度,メールの利用頻度,人づきあいは全ての項目で有意な関連がみられた.

表4-1  社会的孤立と基本属性との関連(N=431)
変数 カテゴリ 孤立群 非孤立群 P
n=196) n=235)
年齢a 72.0±4.2 72.3±4.5 0.509
要支援・要介護 受けていない 188(96.4) 225(95.7) 0.696
要支援1~2 5(2.6) 4(1.7)
要介護1~5 2(1.0) 4(1.7)
最終学歴a 中学校 20(10.4) 18(7.8) 0.377
高等学校 97(50.3) 115(49.6)
大学(短期大学・専門学校含む) 72(37.3) 94(40.5)
その他 4(2.1) 5(2.2)
経済状況a 余裕がない 33(17.1) 21(9.0) <0.001
あまり余裕がない 87(45.1) 86(36.9)
まあ余裕がある 65(33.7) 108(46.4)
余裕がある 8(4.1) 18(7.7)
居住期間a 5年未満 7(3.6) 4(1.7) 0.003
5年以上10年未満 12(6.1) 10(4.3)
10年以上20年未満 32(16.3) 25(10.6)
20年以上30年未満 59(30.1) 62(26.4)
30年以上 86(43.9) 134(57.0)
就労状況 働いていない 132(67.7) 143(61.1) 0.189
働いている 63(32.5) 91(38.9)

注1)値はn(%)もしくはmean±SD

注2)検定はχ2検定を用いた.a=Mann-WhitneyのU検定を用いた.

表4-2  社会的孤立とICT利用との関連(N=431)
変数 カテゴリ 孤立群 非孤立群 P
n=196) n=235)
ICT利用状況
1日の合計利用時間a 使っていない 32(16.5) 39(16.9) 0.807
1秒~15分未満 23(11.9) 20(8.7)
15分~30分未満 22(11.3) 36(15.6)
30分~1時間未満 27(13.9) 37(16.0)
1時間~2時間未満 42(21.6) 40(17.3)
2時間~4時間未満 25(12.9) 37(16.0)
4時間~6時間未満 14(7.2) 13(5.6)
6時間以上 9(4.6) 9(3.9)
利用年数a 使っていない 29(15.3) 40(17.3) 0.678
半年以上1年未満 7(3.7) 6(2.6)
1年以上3年未満 5(2.6) 7(3.0)
3年以上5年未満 6(3.2) 9(3.9)
5年以上10年未満 15(7.9) 18(7.7)
10年以上 128(65.3) 153(65.7)
ICT利用内容に対する頻度
電話の利用頻度a 利用しない 40(20.5) 47(20.3) 0.001
年に数回 23(11.8) 13(5.6)
月に1~2回 49(25.1) 36(15.6)
週に1回 26(13.3) 28(12.1)
2~3日に1回 32(16.4) 42(18.2)
ほとんど毎日 25(12.8) 65(28.1)
メールの利用頻度a 利用しない 72(36.7) 64(27.2) 0.003
年に数回 30(15.3) 30(12.8)
月に1~2回 38(19.4) 38(16.2)
週に1回 21(10.7) 34(14.5)
2~3日に1回 15(7.7) 39(16.6)
ほとんど毎日 20(10.2) 30(12.8)
情報検索の利用頻度a 利用しない 48(24.5) 63(26.8) 0.987
年に数回 10(5.1) 6(2.6)
月に1~2回 7(3.6) 10(4.3)
週に1回 9(4.6) 11(4.7)
2~3日に1回 25(12.8) 26(11.1)
ほとんど毎日 97(49.5) 119(50.6)

注1)値はn(%)

注2)検定はχ2検定を用いた.a=Mann-WhitneyのU検定を用いた.

表4-3  社会的孤立と人づきあいとの関連(N=431)
変数 カテゴリ 孤立群 非孤立群 P
n=196) n=235)
直接会って会話をする頻度 a しない 22(11.2) 2(0.9) 0.002
年に数回 14(7.1) 5(2.1)
月に1~2回 11(5.6) 23(9.8)
週に1回 5(2.6) 8(3.4)
2~3日に1回 12(6.1) 13(5.5)
ほとんど毎日 132(67.3) 184(78.3)
近所づきあいの程度 a つきあいはほとんどない 24(12.2) 8(3.4) <0.001
あいさつをする程度 128(65.3) 96(40.9)
あいさつ以外にも多少のつきあいがある 37(18.9) 105(44.7)
親しく付き合っている 7(3.6) 26(11.1)
社会的活動の頻度 a していない 144(73.8) 126(54.3) <0.001
年に数回 24(12.3) 47(20.3)
月に1~2回 17(8.7) 27(11.6)
週に1回 10(5.1) 32(13.8)

注1)値はn(%)

注2)検定はχ2検定を用いた.a=Mann-WhitneyのU検定を用いた.

表5  社会的孤立と各変数との関連(N=394)
変数 カテゴリ 偏回帰係数 OR(95% confidence interval) P
属性 年齢 –0.175 0.839(0.602–1.170) 0.302
要支援・要介護 0.418
(認定なし=0,要支援1~2=1) –0.461 0.631(0.126–3.171) 0.576
(認定なし=0,要介護1~5=1) 1.538 4.654(0.368–58.822) 0.235
婚姻状況 0.060
(未婚=0,既婚=1) 1.260 3.527(0.811–15.336) 0.093
(未婚=0,その他=1) 0.588 1.800(0.357–9.066) 0.476
経済状況 0.294 1.342(0.989–1.820) 0.059
居住期間 0.155 1.168(0.920–1.482) 0.202
就労状況 0.141 1.151(0.682–1.944) 0.598
最終学歴 0.945
(中学校=0,高等学校=1) 0.270 1.311(0.521–3.297) 0.566
(中学校=0,大学(短期大学・専門学校含む)=1) 0.286 1.331(0.511–3.465) 0.558
(中学校=0,その他=1) 0.366 1.442(0.208–9.979) 0.711
ICT利用状況 1日の合計利用時間 –0.115 0.891(0.741–1.072) 0.222
利用年数 –0.268 0.765(0.635–0.922) 0.005
ICT利用内容に対する頻度 電話 0.210 1.234(1.045–1.456) 0.013
メール 0.172 1.187(1.005–1.403) 0.044
情報検索 –0.040 0.961(0.811–1.137) 0.641
人づきあい 直接会って会話をする頻度 0.190 1.209(1.012–1.444) 0.037
近所づきあいの程度 <0.001
(ほとんどない=0,あいさつをする程度=1) 0.308 1.360(0.497–3.719) 0.549
(ほとんどない=0,多少のつきあいがある=1) 1.425 4.159(1.412–12.252) 0.010
(ほとんどない=0,親しくつきあっている=1) 1.568 4.797(1.165–19.751) 0.030
社会活動の参加頻度 0.218 1.244(0.968–1.598) 0.088

HosmerとLemeshowの検定0.996,判別的中率70.6%

注1)検定は二項ロジスティック回帰分析を用いた.

注2)回答項目に不備のある欠損値(37)を除いた値を示している.

注3)従属変数の社会的孤立は非孤立群=1,孤立群=0とする.

独立変数間の相関を確認した結果,相関係数が0.7を超えるものはなかった.二項ロジスティック回帰分析の結果,社会的孤立の非孤立に有意な正の関連がみられたのは,経済状況(odds ratio [OR]=1.342),電話の利用頻度(OR=1.234),メールの利用頻度(OR=1.187),直接会って会話をする頻度(OR=1.209)であった.近所づきあいの程度は,「ほとんどない」を基準に「多少のつきあいがいある」(OR=4.159),「親しくつきあっている」(OR=4.797)であった.有意な負の関連がみられたのは,ICTの利用年数(OR=0.765)であった.

IV. 考察

1. 対象者の特徴

本研究の対象者は,要支援・要介護認定を受けている者は3.5%であった.2018年の全国の65歳以上において,要支援・要介護認定者は17.9%(内閣府,2018)であることから,ADL,IADLが自立している者が多い集団であった.最終学歴は高等学校と大学が約9割を占めており,経済状況は「余裕がある」と「まあ余裕がある」46.1%であった.高齢者の経済・生活環境に関する調査(内閣府,2016)では,65歳以上79歳未満の高齢者の約7割が暮らし向きに心配ないと感じていることが報告され,国民生活基礎調査(厚生労働省,2021)では,COVID-19前後における高齢者の経済状況に変化はみられていないことが報告されている.これらの調査結果と本研究結果を一概に比較はできないが,本研究の対象者は全国に比べ経済的に余裕のある者が少ないことが推察される.

本研究の社会的孤立(LSNS-6)の平均は12.3±6.0点であった.60歳以上の男女を対象にLSNS-6を用いた研究(Buckley et al., 2022)では,平均14.0±5.9点であり,平均年齢75.3±7.7の男性高齢者を対象にした研究(Morishita et al., 2021)では,平均16.7±5.8点である.12点未満が社会的孤立を示すことから,本研究の対象者は,孤立している者が比較的多いことが窺える.しかし,これら先行研究の調査時期はCOVID-19流行期間中ではなかったため,結果の解釈には留意が必要である.

2. 男性高齢者の社会的孤立の関連要因

インターネット(Orsolya, 2013)や電話やメール,SNSなどのICT全般(Karimi et al., 2012)が孤立を防ぐことが報告されている.また,成田ら(2018)は,孤立への移行に関連するリスク要因として,社会的役割の少なさやソーシャルサポートの少なさ,家族などとの電話などの非対面交流の少なさを挙げている.成田らの研究は独居後期高齢者が対象であり,本研究の対象者と属性に違いはあるものの,本研究でも電話・メールと社会的孤立に有意な関連が見られた.電話・メールは,COVID-19流行下のように直接的な対人交流が難しい場合でも,他者と双方向のコミュニケーションが可能である.電話・メールによるコミュニケーションは,男性高齢者において人とのつながりを実感できるものであったといえ,ある程度の頻度が保たれたICTでのやりとりは,男性高齢者の社会的孤立の防止につながる可能性がある.

一方,本研究の対象者はICTの利用において,情報検索を最も利用していたが,情報検索は社会的孤立と有意な関連はなかった.高齢者は情報検索としてホームページの閲覧や地図情報提供サービスを主に利用している(総務省,2015)ことが報告されている.男性高齢者にとって情報検索は人とのつながりそのものではなく,自身に必要な情報を得るためのツールとして使用していると考えられる.そのため,男性高齢者のICTにおける情報検索は,社会的孤立に関連しなかったと推察する.

人づきあいのうち,直接会って会話をする頻度と近所づきあいの程度が社会的孤立に有意に関連していた.Hanesaka et al.(2022)は,COVID-19流行下において親密な近所づきあいが孤独感の軽減に関連していたことを報告している.本研究では社会的孤立を扱っているが,孤独感と社会的孤立との関連が報告されていることから(永井ら,2016),これら2つは類似した事象ともいえる.COVID-19流行下において,高齢者の社会的孤立や孤独感といった主観的,客観的な孤立状態の緩和には,近所づきあいが有効である可能性がある.また,本研究は緊急事態宣言による外出自粛要請中に調査を行った.COVID-19流行下では,高齢者の文化活動,地域活動を目的とした外出頻度が減少し(大内ら,2021),60歳以上を対象にした調査においても,COVID-19拡大により友人・知人や近所づきあいが減少した割合は55.3%であり,アメリカ,ドイツ,スウェーデンに比べ低かった(内閣府,2021).本研究の調査実施時期は他者との交流や外出が自粛されている時期であったが,近所づきあいの程度は社会的孤立に有意に関連し,他2項目に比べオッズ比は高かった.この結果は親密な近所づきあいによる近隣住民との関係維持は,COVID-19流行下での社会的孤立の防止に関連することを示唆している.近所づきあいは地域で行われる身近で日常的な対人交流であり,男性高齢者が人とのつながりや,地域の一員であることを意識的,無意識的に実感できる機会ともなり得る.この自然な形で身近に繰り出される人とのつきあいが,男性高齢者の社会的孤立の防止に寄与すると推察する.

なお,社会活動の頻度と社会的孤立には有意な関連はみられなかった.高齢者の高い孤独感に関連する可変的要因に「社会活動がない」ことが報告されている(山下ら,2021).先述のとおり,孤独感と社会的孤立には関連がある(永井ら,2016)ことから,社会的孤立においても社会活動の頻度が関連すると予測されるが,本結果では示されなかった.男性高齢者の社会的孤立の予防に,社会活動の頻度を高める重要性が示唆されている(江尻ら,2018).男性高齢者にとって,他者と直接的交流ができる社会活動および近所づきあいを継続し,他者との関係を構築,維持することが重要である.そして,COVID-19流行下のような社会活動が制限されている時には,対面交流を要さないICTを活用した対人交流を補完的に用いることが有効であると考えられる.

3. 実践への示唆

COVID-19流行下のような各種活動が制限される状況において,社会的孤立の防止には,双方向のコミュニケーションや,身近な地域における近隣住民とのつきあいが重要となることが本研究で明らかとなった.これらは既に関係構築されている人との交流が基盤となることから,男性高齢者は平常時から地域における各種活動への参加や他者とのコミュニケーションを通じたつながりが重要となる.他者とのコミュニケーションツールとしては,電話やメールも有効であり,男性高齢者が対面,非対面で交流を図れる関係構築やツールの使用についても,各活動でサポートすることも重要であろう.

男性高齢者は主に仕事を通じて友人関係を形成し,女性ほど人間関係を形成する場の多様性がない(前田,2004)ともいわれている.そのため,男性高齢者が夫婦や家族ともに参加できる地域イベントや,ボランティアや社会活動など人とつながる機会を身近な地域で展開することは,男性高齢者の人とのつながりの創出となり,社会的孤立の防止につながることが予測される.あわせて,地域の魅力ある活動に関する情報を男性高齢者が入手できるツールとして,情報検索やヘルスリテラシーに関する支援も必要になってくると考えられる.

4. 研究の限界

本研究は高齢者を対象にした研究ではあるが,対象者は65~79歳であることから,結果の解釈には留意する必要がある.また,ICTの利用状況の調査項目は利用頻度のみであり,利用内容や相手の詳細までは明らかにしていない.加えて利用年数の回答選択肢に「半年未満」がなく,本項目に8名が未記入であったことから,利用年数が半年未満の者が存在していた可能性がある.さらに,ICTの利用年数と社会的孤立に負の関連がみられたことから,今後さらなる調査が必要である.なお,高齢者の中にはICTを利用することそのものが困難である者がいることから,全ての男性高齢者にとってICT利用が有効な手段とは限らない.

謝辞

本研究にご協力いただきました対象者の皆様に心より感謝申し上げます.

本研究は,JSPS科研費H1803103により助成を受けた研究の一部である.

本研究に開示すべきCOI状態はない.

文献
 
© 2023 日本公衆衛生看護学会
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