日本公衆衛生看護学会誌
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研究
未成年大学生の飲酒と友人関係・性格特性との関連
山本 航平佐伯 和子平野 美千代
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2016 年 5 巻 1 号 p. 29-36

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Abstract

目的:未成年大学生の飲酒の実態及び飲酒と友人関係ならびに性格特性との関連を明らかにすることを目的とする.

方法:A県の3大学の大学1年生から4年生1,122名を対象に,無記名自記式質問紙による集合調査を行った.飲酒の実態は記述統計,関連はχ2検定を用いた.

結果:有効回答998名(有効回答率89.0%)のうち未成年大学生395名のみを分析対象とした.飲酒する人は234名(59.2%)であり,中高生で純アルコール20g換算以上飲酒したことがある人は87名(22.0%)であった.飲酒は人間関係を深めると回答した人は312名(79.3%),飲酒は20歳になってからと回答した人は209名(54.2%)であった.飲酒の有無は,個人属性では学部,部活・サークル,飲酒に関する体質の自覚,性格特性では外向性と有意な関連があり,友人関係とは有意な関連はなかった.

結論:未成年大学生の飲酒と友人関係に有意な関連はなく,性格特性では外向性のみ有意な関連があった.未成年大学生の外向性に重点を置き,飲酒対策を行う必要がある.

I. はじめに

2004年の世界の全死亡者の3.8%がアルコールの使用によるものである(World Health Organization, 2009).また,日本においても大学生の飲酒事故が続いていることから(朝日新聞,2012朝日新聞,2013a朝日新聞,2013b),アルコールは未成年期から取り組むべき課題である.アルコールの心身に与える影響は,精神的・身体的な発育の途上にある未成年者においては大きく(U.S. National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism, 1997),未成年者飲酒禁止法によって,20歳未満の飲酒は禁止されている.また,未成年者の飲酒はアルコール依存症になりやすい(平山ら,2005).しかし,未成年者の飲酒は日常化しており(安藤,2010尾崎ら,1999),2012年に文部科学省より未成年者の飲酒禁止と強要の防止に係る学生指導の徹底についての通知(文部科学省高等教育局長,2012)が出されたにも関わらず依然として飲酒事故が起きている.

未成年者の飲酒には日本の飲酒文化や青年期の特徴が関係していることが考えられる.清水(2003a)はPittmanの研究(Pittman, 1967)を引用し,日本の飲酒文化は超許容文化であり,飲酒のみならず,酩酊上の行為まで許容することが部分的に認められる文化であると述べている.加えて,飲酒は親睦を深めるものや楽しむものとして捉えられている.この飲酒文化が未成年の飲酒に対する意識に影響を与えていることが考えられる.また,大学生は発達段階の青年期にあたり,友人関係を持つことにより自尊心やウェルビーイングといった個人の適応性を促進させる(氏家ら,2012).未成年者は付き合いで仕方なく飲酒をする(笠巻,2012)こともあり,人間関係を維持する方法の一つとして飲酒をしているとも言える.そのため,未成年大学生の飲酒問題を解決するには,飲酒に対する意識や青年期の特徴とされる友人関係や性格との関連を考えることが必要である.

未成年者の飲酒の実態については,大規模な実態調査(尾崎ら,1999)が行われている他,飲酒の関連要因として,飲酒頻度と性別,飲酒する友達の数,気の合う人との飲酒,活気,自己効力感や付き合いが関係している(安藤,2010笠巻,2012)ことが明らかにされている.しかし,未成年大学生の飲酒について検討するには,青年期の特徴である友人関係を踏まえた飲酒の研究をする必要がある.

そこで本研究は,未成年大学生の飲酒の実態を明らかにし,友人関係や性格特性と飲酒の関連を明らかにすることを目的とする.

II. 研究方法

1. 対象と方法

対象はA県内の大学1年生から4年生とし,無記名自記式質問紙による集合調査を行った.対象の選定は,3大学を便宜的抽出し,研究依頼を大学の学部長,学科長,または専攻主任等の責任者に対して口頭及び書面で行った.その後,協力が得られた3大学から調査協力が可能である合計22クラスの紹介を得た.各クラスの学生全員を対象に研究者が調査の内容を口頭及び書面で説明し,質問紙を配付し,同意が得られた者を対象とした.調査票の回収と配付は2013年7月から10月までに実施した.なお,本稿は「大学生の飲酒に関する実態についての研究」の一部として行い,未成年大学生の飲酒の実態を明らかにすることから,未成年大学生を分析対象とした.

2. 調査項目

調査項目は個人属性,飲酒状況,飲酒に対する意識,友人関係,性格特性で構成した.個人属性は性別,学年,年齢,学部,部活・サークル,家族形態,飲酒に関する体質の自覚とした.飲酒状況は飲酒の有無,飲酒頻度,飲酒量,中高生の時の飲酒経験の有無とした.友人関係は友達との付き合い方を尺度化した友人関係尺度(岡田,1995)を用いた.本尺度は,気遣い(6項目),ふれあい回避(6項目),群れ(5項目)の3つの下位尺度から構成される.性格特性は日本語版 Ten Item Personality Inventory(小塩ら,2012)(以下,日本語版TIPI)を用いた.本尺度は,外向性(2項目),協調性(2項目),勤勉性(2項目),神経症傾向(2項目),開放性(2項目)の5つの下位尺度から構成される.両尺度の使用にあたっては著者の承諾を得た.飲酒に対する意識は「飲酒は人間関係を深めるものだと思う」「お酒を飲んだ方が盛り上がると思う」「お酒を飲めた方が何かと良いと思う」「大学生なら飲み過ぎてもいいと思う」「お酒は20歳になってから飲むべきである」という5項目に対して「全く思わない」から「強く思う」の4件法で尋ねた.

3. 統計解析

未成年飲酒の実態については記述統計を用いた.また,飲酒の有無,飲酒頻度,飲酒量と個人属性,友人関係尺度,日本語版TIPIとの関連は,χ2検定を用いた.解析にはSPSS statics 21.0を使用し,有意水準を5%とした.

飲酒状況との関連を見るため,飲酒の有無は飲酒する群と飲酒しない群の2群に分けた.飲酒頻度は,国税庁のお酒に関するアンケート(国税庁,2006)を参考に,週2回以上を基準とし,少ない群と多い群の2群に分けた.飲酒量は,健康日本21の多量飲酒の定義(厚生労働省,2000)を参考に,3単位以上を基準とし,少ない群と多い群の2群に分けた.また,友人関係尺度と日本語版TIPIについてはそれぞれ下位尺度の平均値により,点数が低い群と高い群の2群に分けた.

4. 用語の定義

本研究では,アルコール1単位を純アルコール20 gに相当する量とする(平山ら,2005).

5. 倫理的配慮

対象者の匿名性の確保及び,自由意思による研究参加を保証するため,質問紙は無記名とした.調査時,教員が同席した際には,教員は一切調査に関与せず強制力が働かないようにした.そして,回答者の調査協力の自由意思を尊重するため,未回答でも提出できるよう質問紙の配付と回収は個別の封筒を用いて行った.また,所属する大学組織を特定できないように複数の大学を便宜的抽出し,質問紙調査を行った.さらに,本研究は未成年大学生を対象とすることから未成年者への適正な飲酒を啓発するため,未成年飲酒防止のパンフレットを配付した.本研究は北海道大学大学院保健科学研究院の倫理委員会の承認(13–15)を受け実施した.

III. 研究結果

1. 回答者の属性

調査票は大学生1,122名に配付し,1,100名回収(回収率98.0%)し,有効回答は998名(有効回答率89.0%)であった.個人属性,飲酒頻度,飲酒量に未回答がある人は無効とし,友人関係尺度,日本語版TIPIに2つ以上欠損がある人は無効として処理した.友人関係尺度,日本語版TIPIにおいて,尺度の1つに欠損が見られた場合,平均値による単一代入法を行った.有効回答は未成年大学生395名,成人大学生603名であった.本稿では未成年大学生のみを分析対象とした.

回答者の属性を表1に示す.対象者は男性217名(54.9%),1年生278名(70.4%)であった.年齢は18歳196名(49.6%)であり,平均年齢は18.5±0.5であった.部活・サークルの所属は複数回答で体育会系192名(48.6%),文化系106名(26.8%),所属無し113名(28.6%)であった.家族形態は家族と同居242名(61.3%),一人暮らし117名(29.6%),寮31名(7.8%)であった.飲酒に関する体質の自覚について,飲める体質192名(49.0%),飲めない体質86名(21.9%),分からない114名(29.1%)であった.

表1  未成年大学生の個人属性(n=395)
n %
性別 男性 217​ 54.9
女性 178​ 45.1
学年 1年生 278​ 70.4
2年生 117​ 29.6
年齢 18歳 196​ 49.6
19歳 199​ 50.4
学部 文系 31​ 7.8
理系 80​ 20.3
医療系 284​ 71.9
部活・サークル 体育会系 167​ 42.3
文化系 81​ 20.5
体育会系・文化系両方 25​ 6.3
所属無し 113​ 28.6
その他 9​ 2.3
家族形態 親と同居 236​ 59.7
親戚と同居 1​ 0.3
兄弟・姉妹のみと同居 5​ 1.3
一人暮らし 117​ 29.6
寮(学生会館も含む) 31​ 7.8
その他 5​ 1.3
飲酒に関する体質の自覚 飲める 192​ 49.0
飲めない 86​ 21.9
分からない 114​ 29.1

※未回答除く392名

2. 未成年大学生の飲酒の実態

未成年大学生の飲酒状況を表2に示す.「飲酒する」と回答した人は234名(59.2%)であった.飲酒すると回答した人のうち,飲酒頻度で最も多いのが「月2~4回」104名(44.4%),次いで「月1回以下」102名(43.6%)であった.飲酒量で最も多いのは「1~2単位」78名(33.3%),次いで「3~4単位」63名(26.9%)であった.飲酒すると回答した人のうち,「中高生の時に1単位以上飲酒したことがある」と回答した人は87名(37.2%)であった.

表2  未成年大学生の飲酒状況(n=395)
n %
飲酒状況 飲酒する 234​ 59.2
飲酒しない 161​ 40.8
飲酒頻度 月1回以下 102​ 43.6
月2~4回 104​ 44.4
週2~3回 23​ 9.8
週4回以上 5​ 2.1
飲酒量 1単位未満 60​ 25.6
1~2単位 78​ 33.3
3~4単位 63​ 26.9
5~6単位 20​ 8.5
7~8単位 9​ 3.8
9~10単位 3​ 1.3
11単位以上 1​ 0.4
中高生の時に1単位以上飲んだ経験 ある 87​ 37.2
なし 147​ 62.8

※飲酒すると回答した234名

未成年大学生の飲酒に対する意識の5項目を表3に示す.「お酒を飲んだ方が盛り上がると思う」は「強く思う」74名(18.9%),「思う」252名(64.3%)であった.「飲酒は人間関係を深めるものだと思う」は「強く思う」56名(14.2%),「思う」256名(65.1%)であった.「お酒は20歳になってから飲むべきである」は「強く思う」49名(12.7%),「思う」160名(41.5%)であった.

表3  未成年大学生の飲酒に対する意識(n=395)
全く思わない 思わない 思う 強く思う 有効数
n
n % n % n % n %
飲酒は人間関係を深めるものだと思う 8​ 2.0 73​ 18.6 256​ 65.1 56​ 14.2 393
お酒を飲んだ方が盛り上がると思う 9​ 2.3 57​ 14.5 252​ 64.3 74​ 18.9 392
お酒を飲めた方が何かと良いと思う 22​ 5.6 86​ 21.9 218​ 55.6 66​ 16.7 392
大学生なら飲み過ぎてもいいと思う 134​ 34.3 213​ 54.5 39​ 10.0 5​ 1.3 391
お酒は20歳になってから飲むべきである 26​ 6.7 151​ 39.1 160​ 41.5 49​ 12.7 386

3. 未成年大学生の友人関係及び性格特性

友人関係尺度において,気遣いは最低6点,最高24点,平均16.83±2.59点であった.ふれあい回避は最低9点,最高22点,平均15.67±2.31点であった.群れは最低7点,最高20点,平均13.88±2.54点であった.

日本語版TIPIにおいて,外向性は最低2点,最高14点,平均8.10±2.76点であった.協調性は最低2点,最高14点,平均9.22±2.25点であった.勤勉性は最低2点,最高14点,平均6.40±2.36点であった.神経症傾向は最低2点,最高14点,平均8.87±2.48点であった.開放性は最低2点,最高14点,平均8.23±2.25点であった.

4. 未成年大学生の飲酒と関連要因

飲酒と個人属性の関連を表4,飲酒と友人関係・性格特性の関連を表5に示す.

表4  未成年大学生の飲酒と個人属性(n=395)
飲酒の有無 P 飲酒頻度※2 P 飲酒量※2 P
飲酒する 飲酒しない 多い群 少ない群 多い群 少ない群
n % n % n % n % n % n %
性別 男性 122​ 56.2 95​ 43.8 0.18 14​ 11.5 108​ 88.5 0.84 55​ 45.1 67​ 54.9 0.23
女性 112​ 62.9 66​ 37.1 14​ 12.5 98​ 87.5 41​ 36.6 71​ 63.4
学年 1年生 159​ 57.2 119​ 42.8 0.22 23​ 14.5 136​ 85.5 0.13 53​ 33.3 106​ 66.7 <0.01
2年生 75​ 64.1 42​ 35.9 5​ 6.7 70​ 93.3 43​ 57.3 32​ 42.7
年齢 18歳 115​ 58.7 81​ 41.3 0.84 20​ 17.4 95​ 82.6 0.02 36​ 31.3 79​ 68.7 <0.01
19歳 119​ 59.8 80​ 40.2 8​ 6.7 111​ 93.3 60​ 50.4 59​ 49.6
学部 文系 21​ 67.7 10​ 32.3 0.04 3​ 14.3 18​ 85.7 0.71 10​ 47.6 11​ 52.4 0.31
理系 56​ 70.0 24​ 30.0 5​ 8.9 51​ 91.1 27​ 48.2 29​ 51.8
医療系 157​ 55.3 127​ 44.7 20​ 12.7 137​ 87.3 59​ 37.6 98​ 62.4
部活 体育会系 133​ 69.3 59​ 30.7 <0.01 19​ 14.3 114​ 85.7 0.45 49​ 36.8 84​ 63.2 0.09
文化系 41​ 50.6 40​ 49.4 4​ 9.8 37​ 90.2 23​ 56.1 18​ 43.9
所属無し 60​ 49.2 62​ 50.8 5​ 8.3 55​ 91.7 24​ 40.0 36​ 60.0
家族形態 親族と同居 137​ 56.6 105​ 43.4 0.21 20​ 14.6 117​ 85.4 0.16 54​ 39.4 83​ 60.6 0.59
一人暮らし 97​ 63.4 56​ 36.6 8​ 8.2 89​ 91.8 42​ 43.3 55​ 56.7
飲酒に関する体質の自覚※1 飲める 153​ 79.7 39​ 20.3 <0.01 19​ 12.4 134​ 87.6 0.96 70​ 45.8 83​ 54.2 0.09
飲めない 46​ 53.5 40​ 46.5 5​ 10.9 41​ 89.1 16​ 34.8 30​ 65.2
わからない 33​ 28.9 81​ 71.1 4​ 12.1 29​ 87.9 9​ 27.3 24​ 72.7

χ2検定

※1 未回答除く392名 ※2 飲酒すると回答した234名

表5  未成年大学生の飲酒と友人関係、性格特性(n=395)
飲酒の有無 P 飲酒頻度※1 P 飲酒量※1 P
飲酒する 飲酒しない 多い群 少ない群 多い群 少ない群
n % n % n % n % n % n %



気遣い 低い群 96​ 56.8 73​ 43.2 0.41 9​ 9.4 87​ 90.6 0.41 44​ 45.8 52​ 54.2 0.23
高い群 138​ 61.1 88​ 38.9 12​ 13.8 119​ 86.2 52​ 37.7 86​ 62.3
ふれあい回避 低い群 111​ 62.0 68​ 38.0 0.36 11​ 9.9 100​ 90.1 0.42 53​ 47.7 58​ 52.3 0.06
高い群 123​ 56.9 93​ 43.1 17​ 13.8 106​ 86.2 43​ 35.0 80​ 65.0
群れ 低い群 99​ 56.3 77​ 43.8 0.30 11​ 11.1 88​ 88.9 0.84 37​ 37.4 62​ 62.6 0.35
高い群 135​ 61.6 84​ 38.4 17​ 12.6 118​ 87.4 59​ 43.7 76​ 56.3



外向性 低い群 131​ 54.6 109​ 45.4 0.02 15​ 11.5 116​ 88.5 0.84 43​ 32.8 88​ 67.2 0.01
高い群 103​ 66.5 52​ 33.5 13​ 12.6 90​ 87.4 53​ 51.5 50​ 48.5
協調性 低い群 119​ 57.5 88​ 42.5 0.47 14​ 11.8 105​ 88.2 1.00 50​ 42.0 69​ 58.0 0.79
高い群 115​ 61.2 73​ 38.8 14​ 12.2 101​ 87.8 46​ 40.0 69​ 60.0
勤勉性 低い群 123​ 61.5 77​ 38.5 0.36 13​ 10.6 110​ 89.4 0.55 49​ 39.8 74​ 60.2 0.79
高い群 111​ 56.9 84​ 43.1 15​ 13.5 96​ 86.5 47​ 42.3 64​ 57.7
神経症傾向 低い群 115​ 63.5 66​ 36.5 0.12 14​ 12.2 101​ 87.8 1.00 52​ 45.2 63​ 54.8 0.23
高い群 119​ 55.6 95​ 44.4 14​ 11.8 105​ 88.2 44​ 37.0 75​ 63.0
開放性 低い群 134​ 58.5 95​ 41.5 0.76 18​ 13.4 116​ 86.6 0.54 55​ 41.0 79​ 59.0 1.00
高い群 100​ 60.2 66​ 39.8 10​ 10.0 90​ 90.0 41​ 41.0 59​ 59.0

χ2検定

※1 飲酒すると回答した234名

飲酒の有無は,個人属性では学部(P<0.05),部活・サークル(P<0.01),飲酒に関する体質の自覚(P<0.01)に有意な関連があった.性格特性では外向性(P<0.05)のみ有意な関連があった.友人関係では有意な関連はなかった.

飲酒頻度は,個人属性では年齢(P<0.05)のみ有意な関連があった.友人関係,性格特性では有意な関連はなかった.

飲酒量は,個人属性では学年(P<0.01),年齢(P<0.01)に有意な関連があった.性格特性では外向性(P<0.05)のみ有意な関連があった.友人関係では有意な関連はなかった.

IV. 考察

1. 未成年大学生の飲酒の実態

本研究の結果から,未成年大学生の約6割が飲酒をしていることが明らかになった.笠巻(2012)の研究では未成年男子60.2%,女子50.7%の飲酒が報告されており,本研究の結果も同じ傾向であり,未成年大学生の飲酒は課題である.また,本研究では,現在飲酒すると回答した人のうち,中高生の時に飲んだ経験がある人は37.5%であり,飲酒者の6割が大学生になってから飲酒を開始していた.この結果は1990年代に調査された萩原(1990)と同様の結果であり,未成年飲酒が社会問題として取りあげられている現在においても飲酒開始時期は変わらない.また,「飲酒は20歳になってから」という回答は5割であり,適切な判断をしている人は少なかった.未成年者飲酒禁止法により未成年者の飲酒は禁止されてはいるが,未成年飲酒に対する問題は社会通念として浸透していないと考えられる.

飲酒頻度について,本研究の結果,飲酒している人のうち週2回以上飲酒している人は10.9%であった.国税庁の調査では,週2回以上飲酒している人は20代以上で74.1%であり,20代のみでは50.0%であった(国税庁,2006).このことから,20代及び20代以上と比較し,未成年大学生の飲酒頻度は少ないと言える.飲酒量について,健康日本21では1日の平均純アルコールが約60gを越えるものを多量飲酒者と定義しており(厚生労働省,2000),この定義を用いた本研究の未成年大学生の40.9%が多量飲酒者にあたる.飲酒量について,短大生への調査では60.8%の人が自分の飲酒量を他の人より少ないと考えていた(水野ら,1998)との報告もあり,飲酒量の多さは重要な課題である.

以上のことから,未成年大学生は飲酒している人が多く,飲酒頻度は少ないが飲酒量の多い人がいることが特徴であり重要な問題でもある.未成年大学生は飲酒することについての認識が甘く,多量飲酒がもたらす自分自身への影響や社会への影響を考えることができていないと推察され,そのことが飲酒による重大な問題の一因となっていると考えられる.

2. 未成年大学生の飲酒に関連する個人属性,友人関係,性格特性

未成年大学生の飲酒について個人属性,友人関係,性格特性の関連から考察する.

飲酒の有無の要因には,個人属性では学部と部活・サークル等の所属が関連し,性格特性では外向性のみが関連していた.また,飲酒の有無と友人関係には関連がなかった.この結果から未成年大学生の飲酒には友達との付き合いではなく,自分自身の性格特性としての外向性と部活・サークル等の所属が関係していることになる.未成年大学生は飲酒に対し,付き合いだから仕方ないと考え,気のあう人と飲酒する傾向が強い(笠巻,2012)ことが報告されている.調査結果より未成年大学生の約8割が飲酒を「人間関係を深めるもの」,「盛り上がる」と社交的なものとして捉えていた.未成年大学生の飲酒には所属が関係していることから,未成年大学生の飲酒は先輩・後輩の付き合いという組織内における社交として行動していることが考えられる.

飲酒頻度の要因には年齢が関連しており,18歳は19歳に比べ飲酒頻度は有意に高かった.青年期は新たな試みや危険なことをしがちな時期であり(清水,2003b),大学入学により独居等の新たな生活環境になるため,飲酒頻度が18歳に多いと考えられる.飲酒量の要因には,個人属性では年齢,学年が関連し,年齢,学年が上がると飲酒量は増える傾向にあった.性格特性では外向性のみが関連していた.

以上のことから,飲酒をしやすい未成年大学生の特徴として,外向性という性格特性及び部活・サークル等の組織的な環境が,飲酒開始のきっかけや多量飲酒に影響していると考えられる.人数が三人以上の「場の空気」というものは,ある種の権力になる(冷泉,2006)と言われており,所属による付き合いを断ることができず飲酒を始めている未成年大学生がいることが示唆される.また,本研究において,飲酒に関する体質についての自覚で有意差がなかったことから,未成年大学生は体質についての自覚にかかわらず多量に飲酒をしていることが示唆される.急性アルコール中毒の原因には,自分が飲める体質であるかどうかを自覚していない(平山ら,2005)ことが報告されている.未成年大学生は体質についての自覚にかかわらず飲酒をしているため,飲酒事故を起こす可能性が高いと考えられる.一方で飲酒に関する体質の自覚が飲酒頻度や一回飲酒量,さらにはイッキ飲みに対する意識や行動と関連がある(谷本ら,1998)との報告もあり,飲酒状況と体質の自覚の関連についてはさらなる検討が必要である.

日本の飲酒の実態として,高校生までの飲酒は認めないものの,高校を卒業して社会人や大学生になると急に一人前扱いして酒を飲むことが当たり前になってしまう(平山ら,2005).本研究の結果,「飲酒は20歳になってから」と適切な判断をしている人は約5割であり,未成年大学生は飲酒に関する正しい知識は低い.また,対象の約8割が飲酒は「人間関係を深めるもの」,「盛り上がる」と回答しており,飲酒をしない学生にとってもアルコールは人間関係の潤滑油として捉えられている.性格特性では外向性のみが飲酒に関連しており,アルコールが人と関わる手段の一つとして用いられていることが推察される.したがって,日本の未成年大学生の飲酒には「青年期の特徴」「飲酒に対する意識」「日本の飲酒文化」の3つが複雑に絡み合い,問題となっていることが考えられる.そのため,未成年大学生の飲酒に対する対策においては,この3つの視点をふまえて総合的に改善していくことが重要である.

多量飲酒をしている学生が多く,まずは「飲酒をしない」「飲酒をさせない」という対策が重要である.適切な判断をしている未成年大学生が少なく,先行研究においても51%の人が飲酒教育を受けていない,受けたか分からないと答えている(水野ら,2003)との報告もあり,飲酒に関する教育方法を見直していくことが求められる.1点目に,高校までの教育において,適正な飲酒について未成年者の価値観や意識を育て,飲酒行動に関する意識を変える必要がある.また,未成年大学生の飲酒防止に対するレディネスを考慮した教育や行動変容を促すための効果的な飲酒教育が不足していることが考えられる.そのため,知識の提供だけではなく感情にも働きかける飲酒防止の教育が必要であり,大学入学後も継続して教育していく必要がある. 2点目に,飲酒に寛容な文化の中でも大学として飲酒に対する管理が求められる.未成年大学生の飲酒は「場の空気」という付き合いの意味が大きく,特に部活・サークルに対する指導が重要である.3点目に,「場の空気」により断れずに飲酒を始める未成年大学生がいることも考えられる.大学生に対する指導と共に,未成年大学生に飲酒させない環境の管理が重要である.環境としては,アルコールを提供する飲食店の年齢制限の徹底や未成年大学生へのアルコール販売の禁止等,行政における取り組みも必要である.4点目は,未成年大学生にとって友人関係が発達段階において重要であることを尊重し,友人関係を構築する場を作ることも必要である.Brian et al.(2007)はアルコールのない喫茶店等を提供する必要があると述べており,大学としてアルコールのないラウンジ等の交流の場や時間を提供していくことも必要である.

3. 本研究の成果と限界

本研究は未成年大学生の意識や青年期の特徴との関連を明らかにした.しかし,本研究の対象者は便宜的抽出した1県内の3大学のみであり,地域差や大学による差がある可能性がある.また,未成年大学生の飲酒に関連する要因は,今回取り上げた要因のみでは十分とは言えない.加えて,今回使用した友人関係,性格特性の尺度は回答時間の都合上,簡易版を使用したため,解釈には限界がある.友人関係については関係の質的検討ができる尺度を検討し,今後調査していく必要がある.

また,大学生の飲酒問題は未成年大学生のみならず成人大学生においても深刻な問題である.今後は成人大学生の過剰飲酒についても実態を分析し,対策を検討していく予定である.

V. 結論

未成年大学生の飲酒と友人関係・性格特性の関連について調査を行うため,395名の未成年大学生を分析対象とした.その結果,友人関係に関しては,飲酒と有意な関連はなかった.性格特性に関しては,飲酒の有無と外向性,飲酒量と外向性のみ関連があった.このことから,未成年大学生の外向性に重点を置き,「青年期の特徴」「飲酒に対する意識」「日本の飲酒文化」の3つの視点から飲酒対策をしていく必要がある.

謝辞

本研究にご協力頂きました皆様に深く感謝いたします.本研究は,平成25年度北海道大学大学院保健科学院修士論文の一部に加筆修正したものであり,結果の一部を第2回公衆衛生看護学会学術集会に発表しました.

文献
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