日本公衆衛生看護学会誌
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5 巻, 1 号
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巻頭言
研究
  • ―地方都市に公務員として就労する父親に焦点を当てて―
    深川 周平, 佐伯 和子
    2016 年 5 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:公務員として働く父親の育児参加の実態とその関連要因を明らかにすることを目的とした.
    方法:本研究は,未就学児を持つ正規職公務員として就労する父親を対象とした.無記名自記式質問紙を用い,父親の基本属性と生活時間,育児参加,職場の環境に対する認識を調査した.関連要因の分析は,t検定,一元配置分散分析,重回帰分析を用いた.
    結果:質問紙は414名に配布し,346名から回収し,有効回答率は83.6%だった.父親の育児参加測定得点の平均値は,20.8±7.6点(40点満点)だった.父親の育児参加は配偶者の労働形態,未就学児の数,父親の労働時間と強く関連していた.父親の育児支援制度の利用意向の高さに反して,育児参加の頻度や配偶者出産休暇以外の制度の利用経験は低かった.
    考察:父親の育児参加の促進のためには,短期間でも育児休業を取得すること,さらには物理的な育児参加の必然性が高い時期のみならず,試行的に父親が育児休業を取得することが重要である.育児支援制度の利用実績を積み重ねることが,父親の育児支援制度の利用に対する職場の理解を高め,父親の育児参加を促進すると考えられる.
  • 佐藤 優, 鹿毛 美香
    2016 年 5 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:特定の地方自治体の事例から,介護保険二次予防事業の長期的な効果について,新規要介護認定の発生を指標としたアウトカム評価を行うことを目的とした.
    方法:北九州市における,2007年度の二次予防事業(訪問型介護予防事業,通所型介護予防事業,地域交流支援通所事業,セルフプラン型介護予防事業)対象者1,936名の二次的データについて分析した.Cox比例ハザードモデルを用い,2007年度の基本チェックリスト実施から2013年3月までに起きた新規要介護認定をエンドポイントとして,二次予防事業への参加・不参加による要介護認定のハザード比を算出した.
    結果:要介護認定を受けた者の割合は,参加群で53.3%,不参加群で38.9%であった.二次予防事業参加群に対する不参加群のハザード比は最大で0.74(95%信頼区間:0.61–0.90)であり,不参加群の方が要介護認定のリスクが有意に低くなっていた.
    結論:分析の結果,二次予防事業の要介護認定の発生に対する長期的な予防効果は見られなかったが,一次予防事業等の活動と連動させた事業終了後の継続支援及び事業の評価方法に関する示唆を得た.
  • 當山 裕子, 桃原 のりか, 小笹 美子, 宇座 美代子
    2016 年 5 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:本研究の目的は,学童期の発達障がい児支援の必要性について保健師の認識を明らかにすることである.
    方法:市町村保健師を対象とした自記式質問紙調査を実施した.「保健師による学童期の発達障がい児の支援は必要だと思いますか」という問いに「はい」と回答し,その理由を記載していた85名の自由記述を,質的帰納的研究法で分析した.
    結果:発達障がい児の学童期支援が必要と思う保健師は,支援が必要となる背景として,『学童期に新たなニードが現れることがある』『学校外の支援者が必要である』『多職種が連携した支援が必要である』と認識していた.そして発達障がい児の『親・家族支援によって児の発達を助ける』ことや,『地域での育ちを保障する』ことを支援の目的と保健師は認識していた.
    結論:発達障がいを持つ児の地域での育ちを保障するという長期的な視点で保健師による発達障がい児への学童期支援の必要性が示唆された.
  • 山本 航平, 佐伯 和子, 平野 美千代
    2016 年 5 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:未成年大学生の飲酒の実態及び飲酒と友人関係ならびに性格特性との関連を明らかにすることを目的とする.
    方法:A県の3大学の大学1年生から4年生1,122名を対象に,無記名自記式質問紙による集合調査を行った.飲酒の実態は記述統計,関連はχ2検定を用いた.
    結果:有効回答998名(有効回答率89.0%)のうち未成年大学生395名のみを分析対象とした.飲酒する人は234名(59.2%)であり,中高生で純アルコール20g換算以上飲酒したことがある人は87名(22.0%)であった.飲酒は人間関係を深めると回答した人は312名(79.3%),飲酒は20歳になってからと回答した人は209名(54.2%)であった.飲酒の有無は,個人属性では学部,部活・サークル,飲酒に関する体質の自覚,性格特性では外向性と有意な関連があり,友人関係とは有意な関連はなかった.
    結論:未成年大学生の飲酒と友人関係に有意な関連はなく,性格特性では外向性のみ有意な関連があった.未成年大学生の外向性に重点を置き,飲酒対策を行う必要がある.
  • 大西 恵理, 後閑 容子, 石原 多佳子
    2016 年 5 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:中壮年期を対象にソーシャルキャピタルの構成要素と地域共生意識との関連を明らかにし,地域における中壮年期からの社会参加を促進するための資料を得ることを目的とする.
    方法:A県Y市に住所を有する日本人40歳代,50歳代のうち1,020名を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った.
    結果:有効回答295名を解析対象者とした.ソーシャルキャピタルは【信頼】と【つき合い・交流】間のみ関連が認められた.地域共生意識に影響を与えているソーシャルキャピタルの項目は『一般的な信頼』『近隣でのつき合い』〈職場の同僚とのつき合いの頻度〉(F(3.260)=51.77 p<0.01)であった.
    結論:中壮年期世代のソーシャルキャピタルの「構成要素」は【信頼】,【つき合い・交流】間にのみ関連があり,【社会参加】との関連は認められなかった.地域共生意識と近隣や職場の同僚とのつき合いに関連が認められたことから,中壮年期世代が従来から活動している身近な場所において社会参加への支援を行うことは,地域における中壮年期からの社会参加活動支援に対し有効である.
  • ~遺体対応に焦点をあてて~
    岡本 玲子, 岩本 里織, 西田 真寿美, 小出 恵子, 生田 由加利, 田中 美帆, 野村 美千江, 城島 哲子, 酒井 陽子, 草野 恵 ...
    2016 年 5 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    【目的】本研究の目的は,東日本大震災で津波災害を受けた自治体の職員が,震災半年後に印象に残ったこととして自発的に語った遺体対応業務とそれに対する思いを質的記述的に解釈することである.
    【方法】対象は一自治体の職員23名であり,個別面接により被災直後からの状況と印象に残ったことについて聴取した.
    【結果】自治体職員として行った有事の業務に関する262のデータセットのうち遺体対応に関するものはわずか21であった.遺体対応業務には,震災後,直後からの遺体搬送,約2か月間の遺体安置所,約3か月間の埋火葬に係る業務があった.それぞれの業務に対する職員の思いは,順に,「思い出せない,どうしようもない」,「精神的にやられた,つらい」,「機能マヒによる困惑」が挙がった.
    【考察】避難所と物資の業務については,創意工夫や今後の展望などが具体的に語られたのに比べ,遺体対応については非常に断片的であり,話すことにためらいが見られた.遺体対応業務は通常業務とは全く異質なものであり,準備性もないまま遂行した過酷なものであった.我々は有事に起こるこのような状況について理解し,今後に備える必要がある.
  • 山田 小織, 越田 美穂子
    2016 年 5 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:新人保健師育成に向けたプリセプターの支援内容を明らかにすることを目的とした.
    方法:A市のプリセプターを対象に半構造化面接を実施し,データを質的記述的に分析した.
    結果:研究に同意が得られたプリセプターは12名であった.新人保健師育成に向けたプリセプターの支援は【信頼しあえる関係性を築く】【仕事に対して安心感を与える】【社会人として成長を促す】【専門職としての成長を促す】【新人保健師教育体制を整える】の5カテゴリーと18サブカテゴリーに分類できた.
    結論: プリセプターは信頼関係に基づいた対話を通して,新人保健師の社会人かつ専門職としての成長を促していることが示唆された.今後はプリセプター制の推進や充実と並行して,新人保健師が専門性を主体的に高めていくことができる現任教育プログラムの検討が必要になると考える.
  • 吉岡 京子, 笠 真由美, 神保 宏子, 鎌倉 由起, 齋藤 夕子, 大熊 陽子, 大屋 成子, 平林 義弘, 黒田 眞理子
    2016 年 5 巻 1 号 p. 66-74
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
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    目的:産後に児童虐待の可能性が高いと保健師が判断した特定妊婦の特徴とその関連要因を明らかにする.
    方法:2013年度にA自治体で特定妊婦に登録された49人について,保健師が産後に児童を虐待する可能性が高いもしくは低いと判断した群別の属性,家族要因,妊娠出産に向けた準備,保健師が予測した問題と必要な支援について,t検定,χ2検定とFisherの直接確率検定により2群比較した.
    結果:産後の児童虐待低リスク群は27人(55.1%),児童虐待高リスク群は22人(44.9%)であった.二群比較の結果,児童虐待高リスク群の方が児童虐待低リスク群に比して妊婦健診が未受診・不定期の者,妊娠出産に関する知識が不足している者,入院先の確保がない者,慢性疾患の悪化の可能性がある者,医療機関への受診支援が必要な者の割合が有意に高かった.
    結論:保健師は産後に児童虐待の可能性が高い特定妊婦に対し,妊婦健診の受診状況や心身状態の変化を定期的に見守る必要性があることが示唆された.
第4回日本公衆衛生看護学会学術集会
学術集会長講演
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